プロジェクト概要
- 事業名
- ミウラサマースクール2025
- 実施期間
- 2025年8月4日~8月7日
- 実施地域
- 神奈川県三浦市、横須賀市、葉山町
- 参加者
- 高校生2名、大学生5名
- 実施形態
- 3泊4日・対面宿泊型
- 主催
- ミウラサマースクール実行委員会
- 協賛
- ミライクエスト、一般社団法人One Earth Guardiansオフィス、 一般社団法人社会科学研究機構
- 後援
- 三浦市
- 主なテーマ
- プラネタリーヘルス、自然資本、水産資源、 海洋環境、地域エネルギー、資源循環、 カーボンクレジット、三浦の新しい循環拠点
ミウラサマースクールは、 三浦市を中心とした事業者、研究機関、行政の現場を訪ねながら、 地域の循環経済を学ぶ高校生・大学生向けの宿泊型プログラムです。
今回は、東京大学に所属する学生3名が運営チームとなり、 異なる学校・地域から集まった高校生と大学生7名が参加しました。
プログラムの特徴は、 講義で知識を得るだけでも、 施設を見学するだけでもないことです。
専門家から考え方を学び、 地域の現場を五感で体験し、 その日のうちに参加者同士で振り返る。
さらに、得た学びを組み合わせ、 自分自身の言葉と形で三浦の未来を提案するところまで取り組みました。
異なる背景を持つ仲間と、4日間の探究を始める
初日は、南下浦コミュニティセンターで オリエンテーションとアイスブレイクを行いました。
参加者は、チェキを使った自己紹介ワークを通して、 自分の関心やバックグラウンドを共有しました。
高校生、大学生、運営スタッフでは、 学んでいる分野も、地域課題への関心も異なります。
その違いを最初に知ることで、 一つの正解を探すのではなく、 多様な視点から三浦の未来を考える土台をつくりました。


プラネタリーヘルスと自然資本から、循環を考える
最初の講義では、 東京大学名誉教授の高橋伸一郎先生から、 プラネタリーヘルスと自然資本主義について学びました。
人の健康や豊かな暮らしは、 地球環境や生態系と切り離すことができません。
人間の生活を豊かにしてきた農業や産業が、 人口増加や資源消費を通して、 地球へ大きな負荷を与える側面もあります。
続いて、東京大学大学院農学生命科学研究科の潮秀樹先生から、 漁業の環境負荷と未利用資源の活用について講義を受けました。
使われずに捨てられている水産資源も、 成分や微生物の働きを調べることで、 食品、素材、エネルギーなどへ活用できる可能性があります。


循環は、廃棄物を再利用することだけではない
自然から得た資源を使い、 価値を生み出し、 その過程で出るものを再び地域や自然へ戻す。 人の暮らし、産業、生態系が無理なく続く関係を 全体として考えることが、循環の出発点です。
三浦の海で起きていることを、養殖の現場から知る
神奈川県水産技術センターでは、 三浦の海洋環境と水産資源について学びました。
海藻が減少する磯焼けへの対策、 大量に増えたムラサキウニの養殖、 地域の水産物を生かしたブランド開発など、 海の課題と資源活用が同時に進められています。
参加者は養殖施設を見学し、 実際の水槽や生物に触れました。
講義で学んだ自然資本や未利用資源の考え方が、 地域の現場でどのように実践されているのかを、 五感を通して理解しました。


課題となる生物を、地域資源へ変える
海藻を食べ尽くしてしまうウニは、 藻場の減少を進める原因の一つになることがあります。
一方で、餌や育て方を工夫すれば、 食用として価値を持つ地域資源にもなります。
問題を取り除くだけではなく、 新しい商品や産業へ変える。
環境保全と地域経済を両立させる発想に触れました。
城ヶ島と三崎港を歩き、海辺の価値を見る
施設見学後には、 東京大学の伊藤直樹先生の案内で、 城ヶ島と三崎港を散策しました。
漁港には全国から船が集まり、 漁業、流通、観光が交わっています。
城ヶ島では、 海岸景観や自然環境を見ながら、 観光資源としての可能性も考えました。
美しい景観を守ることと、 地域の仕事や観光へ活用することを、 どのように両立させるか。
地域の循環を考えるうえで、 自然環境そのものが重要な資本であることを実感しました。


冷凍マグロ市場で、三浦の食を支える技術を見る
2日目の朝には、 みさき魚市場を訪れました。
三浦市海業水産課の案内で、 冷凍マグロの競りと、 冷凍マグロ専用に整備された市場施設を見学しました。
数十キログラムあるマグロが並び、 品質を見極めながら取引される光景は、 普段の食卓からは見えない水産流通の現場です。
三崎のマグロ産業は、 漁業だけでなく、 冷凍、保管、品質評価、競り、加工、販売によって支えられています。

マイナス60度の世界で、コールドチェーンを体感する
マグロを扱う株式会社西松では、 マイナス60度の冷凍倉庫へ入りました。
短い時間でも、 息や服に変化を感じるほどの寒さです。
マグロの色、鮮度、食感を守り、 必要な時期に高い品質で供給するためには、 超低温での保管が欠かせません。
知識として温度を聞くだけではなく、 実際にその環境へ入ることで、 地域産業を支える設備と仕事の重みを体感しました。

地域資源の価値は、見えない技術に支えられている
三浦のマグロというブランドは、 魚そのものだけでつくられているわけではありません。 市場、冷凍設備、流通、品質管理など、 多くの専門技術と人の仕事によって守られています。
海上から港を見る、にじいろさかな号
うらりから出航する観光船 「にじいろさかな号」にも乗船しました。
当日は波が高く、 海中を見ることはできませんでしたが、 海上から三崎港と周辺の景観を観察しました。
港を陸から見る場合と、 海から見る場合では、 地域の見え方が変わります。
参加者はカモメへの餌やりや海風も楽しみながら、 海そのものを観光体験へ変えるマリンレジャーの価値を感じました。
地域の廃棄物から、エネルギーをつくる
三浦バイオマスセンターでは、 地域から出る資源を活用した バイオマス発電の仕組みを学びました。
施設の仕組みだけでなく、 約15年間の運営経験や、 原料確保、制度、採算性などの課題についても話を伺いました。
廃棄物をエネルギーへ変える仕組みは、 理論上は循環的に見えます。
しかし、事業として継続するためには、 十分な資源を集め、 設備を維持し、 制度や価格の変化にも対応する必要があります。

循環の理想と、事業を続ける現実
循環型の仕組みは、 環境に良いという理由だけでは続きません。
原料、設備、人材、法制度、 販売先、収益性などを成立させる必要があります。
現場の事業者から、 理想を実装する難しさを聞くことで、 参加者の問いはさらに深まりました。
地域から、日本と世界のエネルギーを考える
夜には、エネルギーとカーボンクレジットについて、 専門家から講義を受けました。
エコッツェリア協会の三上己紀さんからは、 国際的なエネルギー情勢について、 日本GX総合研究所の鳥井要佑さんからは、 カーボンクレジットの仕組みと企業の取り組みについて学びました。
地域で行う環境活動も、 国の政策、企業活動、世界のエネルギー市場とつながっています。
三浦という一つの地域から、 日本や地球規模の課題を考える時間となりました。
使い終えたプラスチックを、再び資源へ
3日目には、 TBM横須賀サーキュラー工場を訪問しました。
TBMは、石灰石を主原料とする新素材LIMEXの開発や、 プラスチック資源の循環に取り組む企業です。
工場では、 家庭から回収されたプラスチックを選別・加工し、 再生ペレットへ変える工程を見学しました。
リサイクルには、 回収、分別、洗浄、品質管理、 再生品の利用先までをつなぐ仕組みが必要です。

ごみは、仕組みがあれば資源に変わる
一度使われたものを、 もう一度使える状態へ戻すには、 技術だけでなく、 回収する人、運ぶ人、加工する企業、 再生品を使う企業や消費者の連携が必要です。
見学と講義の後に、必ず振り返る
サマースクールでは、 その日の訪問が終わるたびに、 参加者同士で振り返りを行いました。
訪問先で聞いたこと、 驚いたこと、 疑問に感じたこと、 足りないと思った仕組みを、 模造紙や付箋へ書き出しました。
同じ場所を訪れても、 環境、技術、経済、教育など、 参加者によって注目する点が異なります。
自分の気づきを言葉にし、 他者の視点と比べることで、 一つの体験を複数の角度から捉え直しました。


LEGOで「三浦の新しい循環拠点」をつくる
3日目の午後には、 リフレクションカードと LEGO SERIOUS PLAYを活用したワークショップを行いました。
参加者は、 3日間で学んだことや感じたことをもとに、 LEGOブロックで一人ずつ作品をつくりました。
大切なのは、 見栄えの良い模型をつくることではありません。
一つひとつのブロックや形に意味を持たせ、 自分の考えを立体的に表現することです。
さらに、それぞれの作品を組み合わせながら、 異なる考え方を共存させた 「三浦の新しい循環拠点」を創造しました。

言葉にならない考えを、形にして対話する
LEGOを使うことで、 まだ言葉として整理できていない感覚や発想も、 形として表すことができます。 作品を説明し合うことで、 他者との違いが対立ではなく、 新しい発想を生む材料になります。
参加者が描いた、三浦の循環する未来
ワークショップでは、 海、エネルギー、地域経済、環境教育をつなぐ 多様な未来像が生まれました。
最新エネルギー技術の象徴「ゾウ」
バイオマス、太陽光、風力などの発電設備を備え、 ごみをリサイクル品へ変え、 排出物を農業へ活用する巨大な循環施設です。
ゾウは、三浦の循環型社会を象徴し、 市民の環境意識を高める存在として表現されました。
三浦の海の豊かさを伝える水族館
地元の漁師から未利用魚や増え過ぎたウニを提供してもらい、 三浦の海に暮らす生物を展示する水族館です。
観光施設であると同時に、 海の現状を知り、 環境を守る意識を育てる教育拠点として構想されました。
海中のエネルギー拠点と体験施設
海中に施設を設置し、 海流から発電・蓄電する構想です。
漁師や観光客が利用でき、 海の中から環境変化を直接体験することで、 陸上からは見えにくい海洋課題への理解を深めます。
「魚を獲る」から「二酸化炭素を獲る」へ
海から二酸化炭素を回収し、 カーボンクレジットなどの新しい産業へ変える船の提案です。
漁業の技術と海洋環境対策を結びつけ、 三浦から地球規模の課題解決を目指します。
カーボンクレジットが循環する街
環境に良い行動をすると、 地域で使えるクレジットを受け取れる仕組みです。
地域の店や交通でクレジットを循環させ、 市民が楽しみながら持続可能なまちづくりへ参加します。
自然と共生する発電所
発電所をコンクリートだけで囲うのではなく、 木や植物と融合した空間にする提案です。
再生可能エネルギーと、 景観・生態系の保全を両立させる未来像を描きました。
日常が発電所になるインフラ
道路へソーラーパネルを組み込んだり、 車の走行エネルギーを発電へ利用したりする構想です。
環境対策を特別な活動にせず、 日常生活そのものへ組み込むことを目指しました。
4日間の学びを、地域の方へ発表
最終日には、三浦市民交流センターで 成果発表会を開催しました。
市役所や地域関係者を前に、 運営チームが4日間の活動を報告しました。
続いて参加者一人ひとりが、 LEGO作品を示しながら、 自分が学んだことと、 三浦の未来へ向けた提案を発表しました。
発表後には歓談の時間を設け、 来場者と参加者が直接意見を交換しました。


参加者アンケートから見る成果
プログラム全体の評価
思考を深められた
社会課題の解決につながると感じた
5段階評価によるアンケートでは、 全項目の平均が4.0を上回りました。
特に、 「見学・講義・ワークショップの繰り返しで思考を深められた」は4.7、 「科学や技術が社会課題の解決につながると感じた」は4.6となりました。
各活動では、 冷凍マグロ市場、にじいろさかな号、 マイナス60度の冷凍倉庫、 LEGOワークショップなどが高く評価されました。
3日間で学んだことを生かしてLEGOで理想の拠点をつくり、 違う考えを持つ人の作品と組み合わせる過程は、 今までにない体験でした。
最先端の研究や革新的な取り組みを行う方々と出会い、 その活動を初めて知ることができました。
さまざまな背景や年代の人と日常的に会話し、 自分とは違う考え方に触れられたことが印象に残りました。
食べるものによって味が変わるウニや、 磯焼けという現実の海洋課題を知ることができました。
バイオマス施設では、 循環を実際の事業として続ける難しさを実感しました。
この活動から生まれたもの
OUTPUT|参加者が形にした成果
- プラネタリーヘルス、自然資本、水産資源に関する専門家講義
- 神奈川県水産技術センターの養殖施設見学
- 磯焼け、ムラサキウニ、未利用資源に関する学習
- 城ヶ島・三崎港のフィールドワーク
- みさき魚市場での冷凍マグロ競りの見学
- マイナス60度の冷凍倉庫体験
- 観光船からの三崎港・海洋環境の観察
- 三浦バイオマスセンターの見学
- エネルギー情勢とカーボンクレジットに関する講義
- TBM横須賀サーキュラー工場の見学
- 模造紙と付箋を使った毎日の振り返り
- LEGO SERIOUS PLAYによる未来構想ワークショップ
- 三浦の新しい循環拠点に関する7つの提案
- 三浦市民交流センターでの成果発表会
OUTCOME|参加者に生まれた変化
- 環境問題を自分の暮らしや地域と結びつけて考えるようになった
- 科学や技術が社会課題の解決につながるという実感が生まれた
- 海洋環境、食、エネルギー、資源循環を横断的に捉える視点を得た
- 地域資源を活用する際の可能性と課題を両面から理解した
- 環境に良い仕組みも、事業として継続する必要があると学んだ
- 見学、講義、振り返りを繰り返すことで思考が深まった
- 異なる年代や背景を持つ参加者の考えを受け入れる力が育った
- 自分の考えを形にして伝える力が高まった
- 高校生と大学生の間に学び合う関係が生まれた
- 三浦の自然や産業へ継続的に関わりたいという意識が生まれた
IMPACT|これから地域に育てていく可能性
- 三浦を循環経済とプラネタリーヘルスの実践的学習拠点にする
- 高校生・大学生・研究者・事業者が継続的に交流する仕組みの形成
- 地域の水産資源と環境課題を学ぶ探究プログラムの展開
- 未利用魚やウニを活用した商品・教育コンテンツの開発
- 水産業、観光、環境教育をつなぐ海の体験拠点の形成
- 地域資源を活用した再生可能エネルギー事業の検討
- カーボンクレジットを地域経済へ取り入れる実証
- 市民の日常行動を環境価値へ変える地域通貨の可能性
- 資源循環技術を学ぶ企業・研究機関との連携強化
- LEGOやグラフィックレコーディングを活用した共創教育の展開
- 参加者の提案を地域の小さな実証へつなげる仕組みづくり
- 三浦から海・食・エネルギーが循環する地域モデルを発信する

学びを、地域の未来をつくる力へ
今回のサマースクールでは、 海、水産業、食、エネルギー、資源循環という 幅広いテーマを扱いました。
一見すると別々に見える課題も、 地域の中ではつながっています。
海藻が減れば、 魚やウニの生態が変わります。
漁獲や流通が変われば、 市場、飲食、観光にも影響します。
廃棄物や未利用資源の使い方を変えれば、 新しい素材やエネルギー、 地域産業が生まれる可能性があります。
重要なのは、 環境、産業、暮らしを分けて考えるのではなく、 一つの循環として捉えることです。
現場で見て、 専門家から学び、 仲間と対話し、 自分の手で未来を形にする。
ミウラサマースクールは、 知識を得るだけの学習ではなく、 地域の未来を自分たちで構想する 共創型の学びの場となりました。
次世代の挑戦を支える、ミライクエストの役割
本プログラムを企画・運営したのは、 東京大学の学生を中心とした ミウラサマースクール実行委員会です。
学生たちは、 訪問先の調整、参加者募集、 宿泊・移動の手配、 当日の進行、振り返り、成果発表までを担いました。
ミライクエストは、 本プログラムの協賛パートナーとして、 活動に必要な資金面を中心に支援しました。
次世代が地域へ入り、 大学や研究機関の知と、 企業や地域の実践をつなぎ、 自分たちなりの未来を描く。
その挑戦を、 一度の体験で終わらせず、 次の学び、研究、実証、事業へつなげていくことが、 ミライクエストの役割です。
地域と一緒に、人と事業を創る研究所
ミライクエストは、次世代、企業、行政、大学、地域をつなぎ、 現場で生まれた問いや学びを、 次の調査、実践、研究、事業へつなげていきます。
運営協力: 地域ミライ共創ラボ、株式会社kokoakari、 株式会社晴天、ミウラプロジェクト
協賛: ミライクエスト、 一般社団法人One Earth Guardiansオフィス、 一般社団法人社会科学研究機構
後援: 三浦市
実施期間: 2025年8月4日~8月7日
実施地域: 神奈川県三浦市、横須賀市、葉山町
参加者: 高校生2名、大学生5名
主な活動: 専門家講義、水産・エネルギー・資源循環施設の見学、 振り返り、LEGOワークショップ、成果発表