プロジェクト概要
- 事業名
- みのかもワーキングホリデー2025・山之上梨農園調査
- 実施期間
- 2025年8月2日~8日、8月12日~18日
- 実施地域
- 岐阜県美濃加茂市
- 実施主体
- 東大生地方創生コンソーシアム
- 共創パートナー
- ミライクエスト
- 伴走支援
- 旅費交通費等の資金面での支援、地域関係者との接続、 活動中のメンタリング、成果整理・発信
- 助成
- トヨタ財団2023年度国内助成採択プログラム
2025年8月2日から8日、8月12日から18日にかけて、 岐阜県美濃加茂市を舞台に、 東大生地方創生コンソーシアム美濃加茂プロジェクトチームによる 「みのかもワーキングホリデー2025」が実施されました。
本プログラムでは、東京大学の学生たちが地域に滞在し、 梨農園での農業体験、市内関係者へのヒアリング、 地域行事への参加、山之上地区の梨農園調査などに取り組みました。
学生たちは、あらかじめ用意された答えを探すのではなく、 地域の方々と出会い、現場を歩き、実際の仕事を体験しながら、 「地域では何が起きているのか」 「本当に向き合うべき課題は何か」を考えました。
ミライクエストは、東大生地方創生コンソーシアムの共創パートナーとして、 旅費交通費等の資金面での支援に加え、 地域関係者との接続、活動中のメンタリング、 成果発表に向けた伴走支援を行っています。

地域に滞在し、現場から問いを考える
みのかもワーキングホリデーは、地域活性化に関心を持つ学生が、 美濃加茂市の現場を肌で体験しながら、 地域が抱える課題について考え、提案する宿泊型のプログラムです。
期間中は、多文化共生に関する取り組みの見学、 市長との意見交換、梨農園での作業、中山道のまち歩き、 農業や都市計画に関するヒアリング、 地域の祭りやイベントへの参加など、 多様な活動が行われました。
学生たちは、農家、行政職員、地域で活動する方々など、 異なる立場の人から直接話を聞きました。
現場での出会いと体験を重ねることで、 事前に抱いていた地域や農業への認識も、 少しずつ変化していきました。


課題を受け取るのではなく、問いを立て直す
地域で示されている課題をそのまま受け取るのではなく、 「誰にとっての課題なのか」 「立場が変われば、課題の見え方も変わるのではないか」と考えること。 現場に入りながら問いを立て直していくことが、 この活動における重要な学びとなりました。
山之上の梨をめぐる実態調査
今回の活動では、これまでの美濃加茂市と東京大学とのプロジェクトでも テーマとなってきた「山之上の梨」について、 より深く現状を把握するための調査が実施されました。
地域では、梨農園の減少や後継者不足といった課題感が共有されている一方、 農園の営業状況や経営実態について、 最新の情報が十分に整理されていない状況がありました。
そこで学生たちは、事前にGoogleマップなどを用いて梨農園を整理し、 複数の調査チームに分かれて農園を巡回しました。
現地では、営業状況、経営形態、販売方法、地方発送の有無、 後継者の状況、農地継承への意向、経営上の課題などについて、 可能な範囲で聞き取りと確認を行いました。

梨農園調査には、過去の美濃加茂プロジェクトに参加した学生と、 今回初めて地域を訪れた学生が参加しました。
東京大学の学生を中心に、地元高校生1名を含む計18名が、 複数のチームに分かれて調査に取り組みました。

調査から見えてきた山之上の梨の現在
調査の結果、市内に約100あるとされていた梨農園のうち、 学生たちが営業を確認できた農園は53か所でした。
市が保有していた資料には古い情報も含まれていると考えられ、 現場の状況をあらためて把握し、 情報を更新する必要性が見えてきました。
一方で、現地を訪れた学生たちは、 単に「梨が売れない」「後継者がいない」という言葉だけでは表せない、 多様な現実にも出会いました。
多くの来訪者が訪れ、午前中に商品が売り切れるほど にぎわう直売所がある一方、 長年の顧客や地域とのつながりを大切にしながら、 厳しい経営状況の中で農園を続けている方もいます。
農家、行政、新規就農を希望する人、地域住民、 梨を購入する人では、 それぞれが守りたいものや目指している姿が異なります。
学生たちは、地域課題を一つの言葉でまとめるのではなく、 異なる立場の声を丁寧に聞き、 その背景まで考えることの重要性を学びました。
梨に関わるすべての人が「いいな」と思える仕組みへ
最終発表では、「美濃加茂市の梨をとりまく課題の解決」をテーマに、 現地での体験とヒアリングをもとにした分析と提案が行われました。
学生が着目したのは、 梨を取り巻く課題そのものだけではありません。
農家、行政、新規就農希望者、地域住民など、 立場によって課題の認識や目指すものが異なっていることでした。
そのうえで、梨に関わるすべての人が 「いいな」と思える仕組みをつくることが、 課題解決の鍵になるのではないかと考えました。
具体的な提案として示されたのが、 新規就農者の受け皿となる「研修農園」の構想です。
公的な団体などが主体となって農地を確保し、 ベテラン農家の技術や経験を生かしながら、 就農希望者が栽培と経営を学べる環境を整える。
さらに、山之上地域の特徴である直売のノウハウも含めて継承し、 将来的な独立まで支援することが構想されています。


新たな視点と可能性
今回の活動では、梨産地が抱える課題を確認するだけでなく、 これまでの前提や先入観を問い直す、 いくつもの「新たな視点と可能性」が見えてきました。
兼業・複合経営という可能性
ある農園では、カフェを併設するとともに、 農業以外の仕事も組み合わせながら経営を行っていました。
この事例との出会いによって、 「梨農家は専業でなければ続けられない」という 学生たちの先入観が覆されました。
農業と飲食、観光、物流、地域交流などを組み合わせることで、 梨農園の経営を支える新しいモデルが生まれる可能性があります。
温暖化への対応と品種転換
現地では、温暖化による収量や栽培環境への影響についても 話を伺いました。
早生品種への植え替えや接ぎ木など、 気候の変化に対応するための工夫が、 それぞれの農園で行われています。
地域の梨を将来へつないでいくためには、 これまで培われてきた栽培技術を継承すると同時に、 変化する気候に対応した品種や栽培方法を検討することも重要です。
作業の省力化とDX
梨やぶどうの収穫、選別、包装などの作業を体験した学生たちは、 品質を維持するための細かな配慮と、 作業を日常的に続けることの身体的な負担を実感しました。
年齢や性別、体力の違いにかかわらず、 多様な人が梨栽培に関わり続けられるようにするためには、 機械化、省力化、デジタル技術の導入など、 農業におけるDXも重要なテーマとなります。
地域資源をつなぐ可能性
学生たちは活動を通じて、梨だけでなく、 中山道の宿場、祭り、音楽、多文化共生の取り組み、 地域で主体的に活動する人々など、 美濃加茂市に多様な地域資源があることを知りました。
それぞれの資源を個別に捉えるのではなく、 人や活動をつなぎ、新しい体験や事業として組み合わせることで、 美濃加茂ならではの地域の魅力を さらに育てられる可能性があります。

この活動から生まれたもの
OUTPUT|学生たちが形にした成果
- 美濃加茂市内の行政・農業・地域関係者へのヒアリング
- 梨農園における収穫、選別、包装、販売等の農業体験
- 複数チームによる山之上地区の梨農園の現地調査
- 営業状況、販売方法、経営形態、継承意向等の情報整理
- 中間発表会と最終発表会の実施
- 梨産地の現状に関する基礎データと調査報告の作成
- 新規就農者を支える研修農園構想の提案
OUTCOME|学生と地域に生まれた変化
- 学生の農業や地域に対する理解の解像度が高まった
- 統計や事前情報だけでは分からない地域の実態を把握した
- 質問する力、聞き取る力、異なる意見を整理する力が育まれた
- 「課題を解く」前に「問いを立て直す」重要性を学んだ
- 農家、行政、新規就農希望者など、立場ごとの違いが可視化された
- 地域の本音や将来について対話するための土台が生まれた
- 学生の中に、美濃加茂市へ再び関わりたいという思いが育まれた
IMPACT|これから地域に育てていく可能性
- 梨農園の実態に基づいた、農地・技術・経営ノウハウの継承
- 研修農園や新規就農者を受け入れる仕組みの形成
- 兼業や複合経営を取り入れた新しい梨農業モデルの創出
- 観光、飲食、交流、物流などと農業をつなぐ新しい事業の創出
- DXや省力化によって、多様な人が農業に関われる環境づくり
- 地域の実態を継続的に調査し、データを更新する仕組みづくり
- 学生と地域が継続的に学び、調査し、実践する関係の構築
地域に入り、地域と一緒に考える
今回の活動を通じて学生たちは、 地域課題には一つの正解があるわけではないことを学びました。
現場に入り、異なる立場の人々の声を聞き、 自分たちが最初に立てた問いそのものを見直していく。
その過程で、統計や資料だけでは分からない地域の明るさ、 人々の思い、産業の厳しさ、 そして新しい可能性が見えてきました。
地域の外から訪れる学生だからこそ、 地域の中では当たり前になっていることに気づき、 中立的な立場から新しい問いを投げかけることができます。
一方で、学生だけで地域を変えることはできません。
地域で暮らし、働き、活動する方々と一緒に考え、 小さな実践と関係を積み重ねていくことが重要です。
今回見えてきた「新たな視点と可能性」を、 一度の提案で終わらせるのではなく、 次の調査や実践へつなげることが、 今後の大切なステップになります。

東大生の挑戦に寄り添う、ミライクエストの伴走支援
本活動の企画、運営、調査、提案を主体的に担ったのは、 東大生地方創生コンソーシアムの学生たちです。
学生自身が地域に入り、出会う人を増やし、問いを深め、 調査結果を整理し、地域へ提案するところまで取り組みました。
ミライクエストは、その挑戦を後方から支える共創パートナーとして、 旅費交通費等の資金面での支援、地域関係者との接続、 活動中のメンタリング、成果の整理や発信などを行っています。
大切にしているのは、 ミライクエストが学生たちに答えを与えることではありません。
学生たちが自分自身の関心から問いを立て、 地域の方々との関係を築きながら、 自分たちの言葉で考え、行動できる環境を整えることです。
学生の活動を一過性の体験で終わらせず、 次の調査、研究、実践、 地域との継続的な関係へつなげていくこと。
それが、ミライクエストの伴走支援の役割です。

地域と一緒に、人と事業を創る研究所
ミライクエストは、次世代、企業、行政、大学、地域をつなぎ、 現場で生まれた問いや学びを、 次の調査、実践、研究、事業へつなげていきます。
プロジェクト: 美濃加茂プロジェクトチーム
共創パートナー: ミライクエスト
実施期間: 2025年8月2日~8日、8月12日~18日
実施地域: 岐阜県美濃加茂市
助成: トヨタ財団2023年度国内助成採択プログラム