4回のワークショップを重ね、 現地を歩き、 授業を考え、 子どもたちとの接し方を学び、 必要な教材まで自分たちで準備してきました。
そして2025年11月28日。 加茂高校の高校生たちが、 三和小学校の子どもたちの前に 「先生」として立つ日を迎えました。
先輩たちが積み重ねてきた実践を受け継ぎながら、 今年度の高校生たちはさらに自分たちらしい授業へ。 教室にも林道にも、 子どもたちとの対話と笑顔があふれる一日となりました。
プロジェクト概要
- 事業名
- 市活委第4号 「マンガ教材を活用した教材開発ワークショップ開催」委託業務
- 実施日
- 2025年11月28日
- 時間
- 12:50〜14:50
- 会場
- 美濃加茂市立三和小学校・隣接する林道
- 高校生
- 加茂高校 15名
- 小学生
- 三和小学校 30名
- 授業構成
- アイスブレイク → 林道散策 → 教室での模擬授業
- 企画・伴走
- 美濃加茂市/ミライクエスト
この日の小学生は、 1年生から6年生までを混ぜた6つのグループに分かれました。
しかも高校生には、 自分たちが担当するグループが どの学年で構成されているのかを 事前に知らせていません。
低学年の子には、 どんな言葉なら伝わるのか。
年齢の違う子どもたち全員が、 一緒に参加できる方法は何か。
計画した授業をそのまま実行するだけではなく、 目の前の子どもたちを見ながら、 その場で考え、対応することも このプログラムの大切な学びです。
11月28日|授業の流れ
最初の20分は、「仲良くなる」ための授業
高校生たちが特に大切にしていたのが、 授業開始直後のアイスブレイクでした。
初めて会う高校生と小学生。
そのまま「授業」を始めるのではなく、 まず話しやすい関係をつくる。
高校生たちは、 ゲームや質問、 マンガ教材、 スライドなど、 グループごとに違う方法を考えてきました。


まずは机を囲んで会話から。 マンガ教材も使いながら、 小学生が話しやすい空気を高校生自身がつくっていきます。


椅子を円形にしたり、 床にカードを広げたり。 「子どもたちとどうすれば自然に話せるか」を考えた 6グループ6様のアイスブレイクが展開されました。
授業の前に、まず関係をつくる。
今年度の各グループに共通していたのは、 子どもたちとのコミュニケーションを 最初から非常に大切にしていたことでした。 「教える人」と「教えられる人」に分かれるのではなく、 まず一緒に話し、一緒に楽しむ。 その時間が、その後の授業の土台になりました。
教室を出て、里山そのものを教材にする
アイスブレイクの後は、 三和小学校に隣接する林道へ向かいました。
この日は雨も心配されていましたが、 幸い予定通り散策を実施することができました。
高校生たちは、 子どもたちと歩きながら、 木や葉、川、地面、 周囲にあるさまざまなものへ目を向けます。
あるグループは落ち葉や自然物を集め、 あるグループは会話を楽しみながら歩く。
後半の教室での授業につながる材料を探しながら、 同時に子どもたちとの距離もさらに縮まっていきました。



林道では、高校生が子どもたちのそばにつきながら散策。 足元のものを一緒に探したり、 気づいたことを話したりと、 「見る」「拾う」「話す」こと自体が授業になっていきます。
林道では、 高校生の中から自然にリーダー役も生まれました。
子どもたちが安全に移動できるよう 仲間へ声をかけたり、 全体の動きを見ながら誘導したり。
教室では見えにくい、 高校生自身の判断力や対応力が 発揮される場にもなりました。
同じ「里山」でも、授業は6通り
14時10分。
林道から教室へ戻り、 いよいよ各グループの本番授業が始まりました。
ここまでですでに小学生との関係ができているため、 教室には堅苦しい空気はありません。
高校生が問いかける。
小学生が答える。
そこからまた次の会話が生まれる。
一方通行の説明ではなく、 子どもたちの反応によって授業そのものが動いていきました。


拾ってきた自然を、「作品」に変える
今年度も、 工作や制作を取り入れたグループがありました。
林道で拾った葉や枝。
先ほどまでただの「落ち葉」だったものが、 教室へ戻ると授業の材料になります。
模造紙へ貼ったり、 絵を描き加えたり、 フォトフレームへ変えたり。
「見たこと」を、 自分自身の表現に変える時間です。


林道で集めた葉や枝を使いながら制作。 高校生が完成形を決めるのではなく、 子どもたち自身が考え、手を動かし、 それぞれの「里山」を表現していきます。

マンガ教材から、問いを広げる
このプログラムの出発点となっているのが、 美濃加茂市の地域資源やSDGsを題材に、 加茂高校の高校生とともに制作したマンガ教材です。
ただし、 マンガを「読むこと」が目的ではありません。
マンガの中に描かれた里山や地域の姿をきっかけに、 実際の林道を歩き、 自分自身で見て、 そしてまた教材へ戻る。
リアルな体験と教材が行き来することで、 子どもたちの中に新しい問いや気づきが生まれていきます。

「楽しんでもらう」が、本気の授業になった
事後の高校生へのヒアリングでは、 多くの生徒が共通して 「子どもたちに楽しんでもらいたい」 という思いを語っています。
明るく接する。
目を見て話す。
分かりやすい言葉を選ぶ。
たくさん質問する。
子どもの話を聞く。
思い出に残るものを一緒につくる。
その一つひとつが、 実際の授業の中で形になっていました。
高校生たちが授業後に残した言葉
「私が話しかけると楽しそうに答えてくれて、 とても嬉しかったです。」
「一緒に山で散策したり工作できて、 とても楽しかったです。」
「終わった時に『楽しかった』と言ってくれたのが、 すごく嬉しかったです。」
「自分は教員志望なので、 今回の学びを生かして、 分かりやすく伝えることを意識したい。」
計画通りにいかないからこそ、学べることがある
一方で、 高校生たちからは 「時間配分が難しかった」 「準備していたことをすべて生かせなかった」 「説明する難しさを感じた」 といった振り返りもありました。
しかし、 それこそが実際に授業を行ったからこそ得られる経験です。
目の前の子どもの反応は、 完全には予測できません。
天候も、 時間も、 その場の雰囲気も変化します。
だからこそ、 高校生自身が考え、 判断し、 必要に応じて予定を変える。
このプログラムでは、 大人があえて介入しすぎないことで、 その経験そのものを学びにしています。
完成された授業を与えるのではなく、 「自分で授業をつくる経験」をつくる。
やりたいことを考え、 現場を見て、 仲間と相談し、 必要なものを準備し、 実際の子どもたちを前に試してみる。 そこで初めて分かることがあります。 成功も、戸惑いも、失敗も含めて、 すべてが次の進路や挑戦につながる原体験になります。
先輩から後輩へ。5年間で育った「縦のつながり」
この活動は、 単年度で完結する取り組みではありません。
令和3年度に加茂高校の高校生とマンガ教材を制作し、 その後、 小学生への模擬授業へ発展。
三和小学校での実践も、 今回で3回目となりました。
過年度の授業計画、 写真、 子どもたちの反応、 時間配分、 うまくいったこと、 改善すべきこと。
そうした記録が次の高校生へ引き継がれ、 今年の実践に生かされています。
さらに2025年度には、 前年度に参加した高校生が 「もっと良い授業をしたい」 と再び参加してくれました。
一度の体験で終わらず、 再挑戦できる場になる。
そしてその経験が、 また次の後輩へ渡っていく。
5年間の継続によって、 このプログラムには 少しずつ「縦のつながり」が生まれています。
OUTPUT|この日に生まれた実践
- 高校生15名が6グループに分かれて小学生30名へ模擬授業を実施
- アイスブレイク・林道散策・教室授業を組み合わせた約2時間の授業を実践
- マンガ教材、スライド、黒板、工作、自然素材などを使った多様な授業を展開
- 林道で得た実体験を教室での対話・制作・学習へつなげた
- 高校生自身が考えた授業計画を実際の学校現場で実践した
OUTCOME|高校生に生まれた変化
- 相手に合わせて説明や言葉を変える経験を得た
- 子どもの反応を見ながら授業を調整する対応力を体験した
- 自分の思いを他者へ伝える難しさと面白さを実感した
- 教職や自身の進路をより具体的に考えるきっかけとなった
- 前に立って話すことや子どもと接することへの自信につながった
IMPACT|地域に積み重なる価値
- 高校生の経験が次年度の後輩へ引き継がれる継続的な仕組みの形成
- 再チャレンジできる場としての地域人材育成環境の形成
- 高校生と小学生の異世代交流による地域内のつながりの創出
- 地域資源を教材にした実践型教育モデルの蓄積
- 行政・高校・小学校・地域・民間が協働する持続的な人材育成モデルへの発展
子どもたちの「内なるモチベーション」を引き出す
今回の授業を見ていて、 改めて強く感じたことがあります。
このプログラムが目指しているのは、 高校生が「正しい答え」を子どもへ教えることではありません。
子どもたち自身が、 「何だろう」 「やってみたい」 「もっと知りたい」 と思うきっかけをつくることです。
三和小学校の先生方からは、 普段の授業ではコミュニケーションが難しい児童も、 この日は高校生と楽しそうに関わり、 落ち着いて授業へ参加していたというお話もいただきました。
高校生が楽しそうに授業をしている。
その楽しさが小学生へ伝わる。
そして子ども自身の好奇心や、 「やってみよう」という気持ちが動き出す。
その瞬間こそ、 この取り組みが生み出したいものなのだと思います。
高校生が育ち、子どもが育ち、地域に経験が残る
高校生にとっては、 教職や将来を考える原体験になる。
小学生にとっては、 少し年上の高校生と出会い、 一緒に地域や自然について考える特別な時間になる。
学校には、 通常の授業とは異なる新しい学びの選択肢が生まれる。
そして行政や地域には、 実践を重ねるたびに、 授業計画や写真、 子どもたちの反応、 高校生の気づきといった経験が蓄積されていきます。
一つの授業で終わらせず、 次の人へつなぐ。
その積み重ねが、 地域全体を学びの場にしていくのだと考えています。
美濃加茂市
学校・高校・地域との調整を行い、 高校生が実際の地域や教育現場で挑戦できる 実践フィールドを整えます。
ミライクエスト
高校生の主体性を中心に置きながら、 ガイダンス、ワークショップ、現地視察、 授業設計、本番実践までのプロセスを企画し、 継続して伴走します。
「先生になる日」が、次の挑戦の始まりになる。
高校生たちは、 自分たちで考えた授業を、 実際の子どもたちへ届けました。 思い通りにいったこともあれば、 その場で考え直したこともあったはずです。 しかし、そのすべてが 教室の外では得られない経験です。 そして今年の経験もまた、 次の高校生たちへ引き継がれていきます。
実施日: 2025年11月28日
実施時間: 12:50〜14:50
実施場所: 美濃加茂市立三和小学校・隣接する林道
参加: 加茂高校 高校生15名/三和小学校 小学生30名
協力: 三和小学校、加茂高校ほか関係者の皆さま
企画・伴走: 美濃加茂市/ミライクエスト
次世代に原体験を。地域には知の資産を。
ミライクエストは、 行政・学校・地域の皆さまとともに、 次世代が地域をフィールドに 考え、試し、実践できる機会を育て、 そこで生まれた経験を次の世代へつないでいきます。