プロジェクト概要
- 事業名
- 島根・益田フィールドワーク2025
- 実施期間
- 2025年6月28日~6月29日
- 実施地域
- 島根県益田市
- 参加者
- 東大生地方創生コンソーシアム所属学生 8名
- 実施主体
- 東大生地方創生コンソーシアム
- 共創パートナー
- ミライクエスト
- 主な連携先
- ユタラボ、久々茂神楽保存会、 かまて地域づくり協議会
- 主なテーマ
- 石見神楽と伝統文化の継承、中間支援組織、 地域自治、若者と地域の接点、 ライフキャリア、ウェルビーイング
2025年6月28日から29日まで、 東大生地方創生コンソーシアムの学生8名が、 島根県益田市でフィールドワークを実施しました。
今回のテーマは、 益田市における地方創生の取り組みを現場から理解するとともに、 地域で活動する方々の生き方に触れ、 自分自身のライフキャリアやウェルビーイングを考えることです。
学生たちは、石見神楽を守り続ける保存会、 若者と地域をつなぐ中間支援組織ユタラボ、 鎌手地区で住民主体の活動を進める地域自治組織を訪れました。
地域課題の解決方法を学ぶだけでなく、 「地域で楽しく生きるとはどういうことか」 「自分はどのような人生や働き方を選びたいのか」を考える、 2日間となりました。
衣装を着て、音を鳴らし、石見神楽を体感する
初日の中心となったのは、 島根県西部の石見地方で古くから受け継がれてきた 石見神楽の体験です。
石見神楽は、激しい舞と力強いリズム、 金糸や銀糸を使った豪華な衣装、 石州和紙で作られた面などが特徴の伝統芸能です。
学生たちは、神楽に関わる方々と昼食を囲んだ後、 練習場所へ移動しました。
実際に衣装を着せてもらい、 太鼓をたたき、 蛇の形をした大きな道具を動かす体験をしました。
見ていると軽やかに感じられる舞台上の動きも、 自分たちで体験すると、 衣装の重さや楽器の難しさ、 蛇を思いどおりに動かす難しさが分かります。

体験することで、見えなかった努力が見えてくる
観客として鑑賞するだけでは分からない、 衣装の重さ、音を出す難しさ、道具を操る技術。 自分の身体を使って体験することで、 伝統文化を支える人々の努力や熱意を、 より具体的に理解することができます。
伝統文化を守り続けるために必要なこと
石見神楽は、 かつての大阪万博にも出演するなど、 地域を越えて知られてきた伝統芸能です。
一方で、衣装や面、大道具の製作・維持、 稽古や公演の運営には、 多くの費用と時間が必要です。
少子化や過疎化が進む中で、 神楽に関わる人の数が減少しているという課題もあります。
伝統文化を継承するためには、 技術を次の世代へ伝えるだけでなく、 活動を支える人、資金、場所、 地域外からの関心をどのようにつくるかも重要です。
学生たちは、神楽に携わる方々の話から、 伝統文化への深い愛情と、 継承に向けた強い思いを感じました。
若者と地域をつなぐ、中間支援組織ユタラボ
ユタラボオフィスでは、 中間支援組織としての活動について説明を受けました。
ユタラボは、地域で活動したい若者と、 若者と一緒に取り組みたい地域の人や組織をつなぎ、 新しい活動や学びが生まれる環境を整えています。
学生たちは、ユタラボが設立された経緯、 これまでの活動、 今後目指している姿について話を伺いました。
益田市とユタラボが連携しながら、 地域づくりと人づくりを一体的に進めていることも学びました。

答えを与えるのではなく、関係と機会をつくる
地域で何かを始めたい若者がいても、 最初から具体的な企画や地域とのつながりを 持っているとは限りません。
一方、地域側も、 若者と何かをしたいと思っていても、 どのように出会い、活動を始めればよいか分からないことがあります。
その間に立ち、 人と人をつなぎ、 対話の機会をつくり、 小さな実践を支えるのが中間支援組織の役割です。
前面に立って活動を主導するのではなく、 それぞれが自分の力を発揮できる関係や環境を整える。
学生たちは、 地域に新たな動きを生み出す 「つなぐ人」の重要性を学びました。
地域づくりと、人づくりは切り離せない
地域の課題を解決する事業をつくるだけでなく、 その過程で人が学び、関係を築き、 自分の役割や可能性に気づく。 人が育つことが、地域に新しい活動を生み出し、 地域での経験が、さらに人を育てていきます。
地域で働く先輩の人生から、進路を考える
ユタラボでは、 東京大学の卒業生である宇都さんからも話を伺いました。
なぜ新卒で島根県へ就職したのか、 どのような経緯で益田市と出会ったのか、 これまでどのような人生を歩んできたのか。
学生たちは、 自分たちと同じ大学で学んだ先輩が、 地方で働き、地域の人と関係を築きながら キャリアを形成している姿に触れました。
就職先を、業界や企業名だけで選ぶのではなく、 どのような場所で、 誰と、 どのように働きたいのかを考える。
地域での暮らしや人との関係も含めて、 自分のキャリアを捉える機会となりました。
昼に体験した神楽を、夜の舞台で見る
初日の夜には、 益田駅前ビルEAGAで開催された 久々茂神楽保存会の夜神楽を鑑賞しました。
会場には、小さな子どもを含め、 多くの地域住民が集まっていました。
現代の言葉を使った掛け合いや、 客席の子どもを舞台へ招き入れる演出などもあり、 神楽が地域の日常の中で親しまれていることが伝わってきました。
昼間に衣装や楽器を体験したからこそ、 舞台上で保存会の方々が行っている動きや演奏の難しさを、 より深く理解することができました。

守るだけでなく、地域に愛され続ける工夫
伝統文化を守ることは、 昔の形をそのまま保存することだけではありません。
地域の子どもや若い世代が親しみ、 自分も参加したいと思える入口をつくることも大切です。
石見神楽では、 迫力ある舞台に加え、 観客との掛け合いや抽選会なども取り入れられていました。
伝統としての価値を大切にしながら、 現代の地域住民が楽しめる形へ工夫することが、 文化を次の世代へつなぐ力になります。
「地域のため」だけでなく、大人自身が楽しむ地域自治
2日目には、 益田市の鎌手地区を訪れました。
かまて地域づくり協議会の野村道徳さんから、 協議会の設立経緯や活動、 会長を務めるようになった背景について話を伺いました。
地域活動というと、 どぶ掃除や公園清掃など、 必要ではあるものの、 負担感の強い活動を想像することがあります。
かまて地域づくり協議会では、 そうした従来型の活動だけでなく、 大人たち自身が楽しむことを大切にしています。
学生たちは、魅力づくり部会「チャームラボ」の活動の一つである 「かまカフェ」に参加しました。

楽しく生きる大人の姿が、地域の魅力になる
地域活動を続けるためには、 義務感や責任感だけではなく、 活動する人自身が楽しめることも重要です。
大人たちが地域で仲間をつくり、 自分たちのやりたいことを試し、 生き生きと活動している。
その姿は、 若い世代にとって、 「この地域で暮らすのも楽しそうだ」と感じる理由になります。
地域の魅力は、 観光資源や施設だけで生まれるものではありません。
そこで暮らす人が、 自分らしく楽しく生きていること自体が、 地域の大きな魅力になります。
ウェルビーイングから考える地域づくり
地域のために我慢して活動するのではなく、 自分自身も楽しみ、仲間とのつながりや役割を感じられる。 一人ひとりの充実した暮らしが積み重なることで、 持続的な地域づくりにつながっていきます。
海、食、対話を通して地域を知る
鎌手地区では、 地域づくり協議会の皆さんと昼食を囲み、 活動や暮らしについて話を伺いました。
昼食後には、 地域の海に入る時間もありました。
地域について学ぶフィールドワークでは、 制度や事業の説明を聞くだけでなく、 食事を一緒にし、 自然を体験し、 何気ない会話を重ねることも大切です。
地域の方と同じ時間を過ごすことで、 資料だけでは分からない人柄や暮らし、 地域の空気を感じることができます。
二日間の体験を、自分の言葉にする
フィールドワークの最後には、 ユタラボオフィスで振り返りワークショップを実施しました。
学生たちは3つのグループに分かれ、 二日間で感じたことや考えたことを話し合いました。
自由ディスカッションでは、 30分間、話題が尽きることなく、 それぞれが自分の考えを積極的に発言しました。
最後には一人ずつ感想を発表し、 「益田に来てよかった」 「新しい視点に出会うことができた」といった思いを共有しました。

体験を、次の問いへ変える振り返り
現場で感じたことを、そのままにせず、 言葉にして人へ伝える。 他の参加者の視点と比べることで、 自分が何に心を動かされたのか、 次に何を考えたいのかが見えてきます。
学生が現場から感じたこと
石見神楽を実際に体験したことで、 保存会の方々が舞台上で行っていることの難しさと、 文化への深い愛情を感じました。
中間支援組織が人と人をつなぎ、 若者が地域へ関わるきっかけをつくることの重要性を学びました。
地域活動を義務として行うのではなく、 大人自身が楽しんでいる姿が印象に残りました。
地域で働く大学の先輩の話を聞き、 自分がどのような場所で、どのように働きたいのかを考える機会になりました。
益田を訪れたことで、 地方創生だけではなく、 自分にとって豊かに生きるとは何かを考える新しい視点に出会いました。
この活動から生まれたもの
OUTPUT|学生たちが形にした成果
- 石見神楽の衣装、楽器、蛇の大道具を使った体験
- 石見神楽の歴史、運営、継承課題に関するヒアリング
- 石見神楽関係者との昼食交流
- 久々茂神楽保存会による夜神楽の鑑賞
- ユタラボの設立経緯と中間支援活動に関するヒアリング
- 益田市とユタラボの地域づくり・人づくりの連携に関する学習
- 地域で働く東京大学卒業生へのライフキャリア・進路に関するヒアリング
- かまて地域づくり協議会の設立経緯と運営方針に関するヒアリング
- 魅力づくり部会「チャームラボ」の活動への参加
- 地域交流の場「かまカフェ」への参加
- 鎌手地区の地域住民との昼食交流
- 二日間の学びを整理する振り返りワークショップ
- 学生によるフィールドワーク報告書の作成
OUTCOME|学生と地域に生まれた変化
- 学生が石見神楽を身体的な体験から理解した
- 伝統文化の継承に必要な技術、資金、人材への理解が深まった
- 地域に愛されることが文化継承の基盤になると学んだ
- 中間支援組織が若者と地域をつなぐ役割を理解した
- 地域づくりと人材育成を一体で考える視点を得た
- 大学卒業後の進路や働き方を幅広く捉える機会が生まれた
- 地域活動には義務だけでなく、楽しさが重要であると実感した
- 地域で生き生きと活動する大人が、若者に与える影響を理解した
- 学生が自分自身のウェルビーイングやライフキャリアを考えた
- 参加者同士の対話を通して、それぞれの学びや関心が言語化された
- 学生の中に、益田市へ再び関わりたいという意識が生まれた
IMPACT|これから地域に育てていく可能性
- 石見神楽を題材とした継続的な学生向け文化体験・探究プログラムの形成
- 神楽の衣装、面、楽器、舞台運営を次世代へ伝える学習機会の拡大
- 大学生による石見神楽の情報発信やアーカイブづくり
- 地域外の若者が神楽の運営や継承に関わる仕組みの形成
- ユタラボと大学生による地域プロジェクトの継続的な創出
- 益田市を若者が地域とキャリアを考える学びのフィールドへ発展させる可能性
- 地域で働く社会人と学生をつなぐキャリア対話プログラムの形成
- 住民自身が楽しむ地域自治モデルの他地区への展開
- かまカフェなど、世代や立場を越えて交流できる場の充実
- 地域活動と個人のウェルビーイングを両立する仕組みづくり
- 学生が継続的に益田市を訪れ、地域活動へ参加する関係人口の形成
- 伝統文化、中間支援、地域自治、キャリア教育を横断する共同研究・実践への発展
地域づくりを、人生や幸せから考える
今回のフィールドワークでは、 伝統文化の継承、中間支援組織、地域自治という 異なる活動に触れました。
それぞれに共通していたのは、 地域づくりを、制度や事業だけで考えていないことです。
神楽を心から愛し、 次の世代へ残そうとする人。
若者と地域をつなぎ、 一人ひとりの挑戦を支える人。
地域のためという義務感だけではなく、 自分たち自身が楽しみながら活動する人。
地域は、 そこで暮らす人々の生き方や関係によってつくられています。
地方創生を考えることは、 地域の人口や経済を考えるだけではありません。
一人ひとりが、 どのような場所で、 誰と関わり、 どのように生きたいのかを考えることでもあります。
益田市で出会った人々の姿は、 学生たちに、 キャリアや豊かさについて新たな視点を与えました。
東大生の挑戦に寄り添う、ミライクエストの伴走支援
本活動の企画、訪問、体験、対話を主体的に担ったのは、 東大生地方創生コンソーシアムの学生たちです。
学生自身が益田市を訪れ、 伝統文化や地域自治の現場へ入り、 地域で活動する方々の生き方に触れました。
ミライクエストは、 東大生地方創生コンソーシアムの共創パートナーとして、 学生たちの主体性を尊重しながら、 現場で得た学びが次の調査や実践へつながるよう伴走しています。
大切にしているのは、 ミライクエストが学生に答えを与えることではありません。
学生が自分自身の関心や人生について問いを持ち、 地域の方との体験や対話を通して考えを深め、 自分たちの言葉で次の行動をつくれる環境を整えることです。
一度のフィールドワークを一過性の経験で終わらせず、 次の訪問、研究、実践、 地域との継続的な関係へつなげていくこと。
それが、ミライクエストの伴走支援の役割です。
地域と一緒に、人と事業を創る研究所
ミライクエストは、次世代、企業、行政、大学、地域をつなぎ、 現場で生まれた問いや学びを、 次の調査、実践、研究、事業へつなげていきます。
共創パートナー: ミライクエスト
実施期間: 2025年6月28日~6月29日
実施地域: 島根県益田市
参加者: 東大生地方創生コンソーシアム所属学生8名
主な連携先: ユタラボ、久々茂神楽保存会、 かまて地域づくり協議会