プロジェクト概要
- 事業名
- 宮城・女川フィールドワーク2025
- 実施期間
- 2025年6月28日~6月29日
- 実施地域
- 宮城県牡鹿郡女川町ほか
- 主な拠点
- 女川フューチャーセンター Camass
- 参加者
- 東大生地方創生コンソーシアム所属学生 4名
- 実施主体
- 東大生地方創生コンソーシアム
- 共創パートナー
- ミライクエスト
- 主な活動
- 震災遺構の見学、復興まちづくりに関する講話・町歩き、 地域関係者との意見交換、トリガイ養殖の学習と体験、 震災経験者へのヒアリング
2025年6月28日から29日まで、 東大生地方創生コンソーシアムの学生4名が、 宮城県女川町を中心としたフィールドワークを実施しました。
今回の訪問は、女川町でまちづくりや関係人口の創出に取り組む 「アスヘノキボウ」とのつながりから実現したものです。
学生たちは、震災遺構の見学、女川駅周辺の町歩き、 地域で活動する方々との意見交換、 水産業の新たな可能性を探るトリガイ養殖の学習と体験に取り組みました。
復興した町の姿を見るだけではなく、 震災の記憶をどのように受け継ぐのか、 地域外の人や若者がどのようにまちづくりへ関わるのか、 産業を次の世代へどうつなぐのかを考える2日間となりました。
震災の記憶を、終わった話にしない
初日に学生たちが訪れたのは、 石巻市にある震災遺構・大川小学校です。
津波によって大きな被害を受けた校舎が、 震災当時の姿を伝える遺構として残されています。
学生たちは、校舎の損傷や周囲の地形を実際に見ながら、 当時何が起きたのかを学びました。
復興が進み、町の景観が新しくなったとしても、 震災がもたらした苦しみや教訓を、 過去の出来事として処理してはいけない。
現場に立つことで、 防災や避難について考え続けることの重要性を、 改めて感じる機会となりました。

復興を見ることと、記憶を受け継ぐこと
新しい町並みや活気ある地域の姿を見る一方で、 震災によって失われた命や暮らしを忘れないこと。 復興を考えるうえでは、 未来をつくる視点と、過去を受け継ぐ視点の両方が必要です。
若者が中心となって進めた女川の復興まちづくり
女川フューチャーセンター Camassでは、 アスヘノキボウの丹野さんから、 女川町の復興まちづくりと団体の活動について話を伺いました。
女川町は、東日本大震災によって町の約7割が被害を受けました。
町の存続に危機感を持った地域の人々は、 30年後の女川を見据え、 若い世代を中心に復興まちづくりを進めてきました。
アスヘノキボウは、女川町の外から訪れる人に対し、 インターンシップやお試し移住などの機会を提供しています。
地域で新しい活動を始める人だけでなく、 挑戦する人を支え、人と人を結びつける存在がいること。
学生たちは、その役割が地域に新たな動きを生み出すうえで とても重要であることを学びました。
海と共に暮らす町を歩く
講話の後は、アスヘノキボウの方々に案内していただきながら、 女川駅周辺やシーパルピア女川を歩きました。
女川町では、将来の災害を想定しながら、 減災を意識した町の再設計が行われています。
しかし、実際に町を歩いて感じられたのは、 防災施設としての硬さだけではありませんでした。
海から離れるのではなく、 海と共に生きていこうとする町の姿勢や、 開放的な景観が感じられました。

シーパルピア女川には、 魚介類を扱う店舗、飲食店、楽器店、ダイビング用品店など、 多様な店が並んでいます。
一方で、観光客向けの商品や価格帯が多く、 地域住民が日常的に利用しにくいという声もありました。
復興によって新しく整備された町を、 観光客だけでなく地域住民にとっても暮らしやすい場所にしていくこと。
町の魅力と日常生活をどのように両立させるかという、 新たな課題も見えてきました。
女川で挑戦する8人との意見交換
初日の午後には、 女川町でまちづくりや地域活性化に取り組む8名の方々との 意見交換会が行われました。
商業施設の運営、子どもの居場所づくり、 漁業、移住、地域イベントなど、 参加者の活動分野や背景はさまざまです。
それぞれが異なる役割を担いながら、 女川の未来に向けて活動していました。
学生たちは、一人のリーダーが町を動かしているのではなく、 多様な人が互いにつながり、 それぞれの得意分野を生かしていることに強い印象を受けました。

日常の中に交流が生まれる場所
意見交換会の後は、 シーパルピア女川にある店舗で懇親会が開かれました。
店内には地域の方々が自然に集まり、 年齢や立場を越えて会話が生まれていました。
まちづくりは、会議や事業だけで進むものではありません。
日常の中で人が出会い、 気軽に話し、新しい関係が生まれる場所があることも、 地域の力になることを感じました。
挑戦する人をつなぐ「中間支援」の役割
地域で活動する一人ひとりを支え、 外から来た人と地域の人をつなぎ、 新しい挑戦が生まれる環境を整える。 女川の事例から、地域を動かすためには、 活動する人だけでなく、人と人を結ぶ存在が重要であることが見えてきました。
水産業の未来を拓く、トリガイ養殖
2日目は、地域おこし協力隊として女川町へ移住し、 トリガイの養殖事業に取り組む長谷川翔亮さんから話を伺いました。
女川の水産業は、 海水温の上昇などの環境変化によって、 ホタテなど従来の養殖が難しくなるという課題に直面しています。
その中で長谷川さんが注目したのが、 比較的高い水温にも適応しやすいトリガイでした。
トリガイは、食料としての価値に加え、 肉類などと比べて環境負荷が小さいタンパク源としての可能性もあります。
天然の良港を持つ女川の環境を生かしながら、 気候変動に対応した新しい水産業をつくろうとする取り組みです。
顕微鏡で幼生を観察する
講話の後は、 人工的に育てられたトリガイの幼生を顕微鏡で観察しました。
学生たちは、幼生の見た目や大きさ、動きを確認し、 コンピューター上で一つひとつの長さを測りました。
こうした観察記録を積み重ねることで、 水温など、種苗の生育に適した条件を探っていきます。
小さな個体を何度も観察し、 丁寧にデータを記録する地道な作業が、 新しい産業をつくる研究の土台になっていました。
自分たちでさばき、実際に味わう
観察後には、 実際にトリガイをさばき、試食する体験も行いました。
貝殻から身を取り出し、 内臓などを取り除きながら、 水産物が食卓へ届くまでの工程の一端を体験しました。
研究対象として観察するだけでなく、 実際に触れ、調理し、味わうことで、 トリガイという地域資源への理解がより深まりました。

環境変化を、新しい産業への問いに変える
海水温の上昇によって従来の養殖が難しくなる中、 新たな環境に適した水産物を研究し、 地域産業として育てようとする。 課題を受け止めるだけでなく、 地域の強みを生かして次の可能性をつくる姿勢を学びました。
女川から、多賀城・塩竈・七ヶ浜へ
女川町でのプログラムを終えた後、 学生たちは多賀城市、塩竈市、七ヶ浜町も訪れました。
多賀城跡や鹽竈神社を訪れ、 宮城県沿岸地域の歴史や文化に触れました。
七ヶ浜町では、 震災当時の避難所運営や、 津波被害に伴う住宅移転について、 地域の方から話を伺いました。
復興の過程では、 地区や立場の違いによって意見の対立や軋轢が生じることもあります。
その経験から、 一人ひとりの声を丁寧に聞くことの重要性を学びました。
海辺の建物に、新しい役割をつくる
七ヶ浜町では、 元釣具店の建物を活用したリノベーションの現場も見学しました。
海沿いという立地を生かし、 新しい交流や活動の拠点へ生まれ変わろうとしている建物です。
既存の建物や場所に新たな役割を与え、 地域の魅力や活動につなげることも、 これからの地域づくりの一つの可能性です。

学生が現場から感じたこと
女川町は、復興とまちづくりを考えるうえで、 他の地域にとっても参考になる一つのモデルだと感じました。 行政だけではなく、民間や住民の声が反映された町づくりに強く惹かれました。
女川で活動する、年齢も立場も異なる方々が、 互いにつながりながら地域の未来に取り組んでいる姿が印象に残りました。 地域の魅力は、土地だけでなく、そこで活動する人によって生まれると感じました。
トリガイは、環境変化によって厳しい状況にある女川の水産業に、 新しい可能性をもたらす存在になり得ると感じました。
震災から時間が経過した女川町では、 少子化や地域内の人々の距離など、 復興後の新たな課題も生まれていることを知りました。
この活動から生まれたもの
OUTPUT|学生たちが形にした成果
- 石巻市震災遺構・大川小学校の見学
- 女川町の復興まちづくりとアスヘノキボウの活動に関する講話の受講
- 女川駅周辺・シーパルピア女川の町歩きと地域観察
- 女川町で活動する8名の地域関係者との意見交換
- 地域住民や事業者との懇親・交流
- 女川町の水産業とトリガイ養殖に関する講演の受講
- トリガイ幼生の顕微鏡観察と生育データの確認
- トリガイをさばき、実食する水産体験
- 多賀城跡、鹽竈神社、七ヶ浜町の訪問
- 震災経験者へのヒアリングとリノベーション施設の見学
- 2日間の学びを共有する振り返りの実施
- 学生によるフィールドワーク報告書の作成
OUTCOME|学生と地域に生まれた変化
- 震災の記憶と復興後の町の姿を、現場から立体的に理解した
- 復興まちづくりにおける民間・住民・若者の役割への理解が深まった
- 地域の挑戦を支える中間支援組織の重要性を学んだ
- 地域の魅力は、施設や景観だけでなく、人と人との関係から生まれることを実感した
- 観光客向けの町づくりと住民の日常生活を両立する課題に気づいた
- 環境変化と水産業の関係を、新しい産業の可能性として捉える視点を得た
- データを積み重ねる地道な研究が、地域産業の基盤になることを学んだ
- 震災後の復興にも、新たな地域課題が生まれることを理解した
- 住民の声を丁寧に聞き、異なる立場を理解する重要性を学んだ
- 学生の中に、再び女川を訪れ、地域と関わりたいという思いが生まれた
IMPACT|これから地域に育てていく可能性
- 女川町と東京大学の学生による継続的なフィールドワークの実施
- 震災の記憶と教訓を次世代へ伝える学習プログラムの形成
- 復興まちづくりを学ぶ地域横断型の教育・研究プログラムへの発展
- 学生が女川町の事業者や地域団体の活動へ継続的に参画する関係づくり
- アスヘノキボウを中心とした、地域内外の若者や挑戦者をつなぐ仕組みの拡大
- 女川町の水産業と大学の研究・学生の探究をつなぐ共同プロジェクトの創出
- トリガイ養殖の研究・データ収集・商品開発への学生参画
- 気候変動に対応した新しい水産業モデルの形成
- 地域住民と観光客の双方にとって価値のある女川駅周辺の活用
- 空き店舗や既存施設を活用した交流・学習・事業拠点の創出
- 復興後に生まれた少子化や地域内格差など、新たな課題に対する調査と対話の継続
- 女川を「復興を学ぶ場所」から「未来の地域づくりを共に試す場所」へ発展させる可能性
地域の復興から、未来の地域づくりを考える
今回のフィールドワークでは、 震災から復興した女川町の姿を見るだけでなく、 そこに至るまでの人々の覚悟や行動、 現在も続く地域の挑戦に触れました。
女川町では、若い世代や民間の力を生かしながら、 地域内外の人をつなぎ、 新しい活動や事業を生み出してきました。
一方で、復興が進んだ後にも、 少子化、住民の日常生活、産業の変化、 地域内の関係性など、新たな課題が生まれています。
地域づくりには、完成した答えはありません。
震災の記憶を受け継ぎながら、 変化する環境や社会に合わせて問いを立て直し、 地域の人と外から訪れる人が一緒に未来を考えること。
女川町での体験は、 学生たちにとって、 復興と地域づくりを自分自身の問題として考える機会となりました。
東大生の挑戦に寄り添う、ミライクエストの伴走支援
本活動の企画、訪問、ヒアリング、体験を主体的に担ったのは、 東大生地方創生コンソーシアムの学生たちです。
学生自身が地域を訪れ、 現地で活動する人々に会い、 震災、まちづくり、産業について自分の目で確かめました。
ミライクエストは、 東大生地方創生コンソーシアムの共創パートナーとして、 学生たちの主体性を尊重しながら、 地域で得た学びが次の調査や実践へつながるよう伴走しています。
大切にしているのは、 ミライクエストが学生に答えを与えることではありません。
学生が自分自身の関心から問いを持ち、 地域の人との対話を通して考えを深め、 次の行動を自分たちの言葉で生み出せる環境を整えることです。
一度のフィールドワークを一過性の経験で終わらせず、 次の訪問、研究、実践、 地域との継続的な関係へつなげていくこと。
それが、ミライクエストの伴走支援の役割です。
地域と一緒に、人と事業を創る研究所
ミライクエストは、次世代、企業、行政、大学、地域をつなぎ、 現場で生まれた問いや学びを、 次の調査、実践、研究、事業へつなげていきます。
共創パートナー: ミライクエスト
実施期間: 2025年6月28日~6月29日
主な実施地域: 宮城県牡鹿郡女川町
主な活動拠点: 女川フューチャーセンター Camass
参加者: 東大生地方創生コンソーシアム所属学生4名