次世代・探究

高校生が先生になる日。地域で学んだことを小学生へ|2023年度 マンガ教材探究型授業プログラム #6

約3年間かけて、 高校生自身が地域を調べ、 地域の人に話を聞き、 制作に関わってきたマンガ教材。 その教材が、 2024年3月18日、 ついに実際の小学校の授業へ入りました。

岐阜県立加茂高等学校の高校生11名が、 美濃加茂市立三和小学校の 1年生から5年生まで27名を対象に、 自分たちで考えた授業を実践。 「教材をつくる」から「人に伝える」へ。 マンガ教材探究型授業プログラムにとって、 大きな節目となる一日です。

2023年度 マンガ教材探究型授業プログラム #6

実施概要

実施日
2024年3月18日(月)
プログラム
2023年度 マンガ教材探究型授業プログラム
実施場所
美濃加茂市立三和小学校・三和富士山道
対象
三和小学校 1〜5年生 27名
参加高校生
岐阜県立加茂高等学校 11名
授業グループ
5グループ
授業構成
アイスブレイク → 林道散策 → 教室での授業
総合指導・企画運営
田園社会イニシアティブ株式会社/ミライクエスト
協力
美濃加茂市立三和小学校、 日比野安平氏、 NPOブリッジほか
27名 三和小学校
1〜5年生
11名 加茂高校の高校生が
授業を実践
5チーム 高校生自身が
授業を企画・実践

この日の三和小学校には、 いつもの授業とは少し違う空気が流れていました。

教室の前に立つのは、 学校の先生ではありません。

加茂高校の高校生たちです。

当日は新聞社の取材も入り、 高校生たちにも緊張した様子が見られました。

それでも、 これまで何度も話し合い、 授業を考え、 試行錯誤してきた時間を思い出しながら、 それぞれのチームが 今できることを精一杯やりきりました。

フィールドと教室をつなぐ、3部構成の授業

高校生たちが考えた授業は、 教室の中だけで完結するものではありませんでした。

まず子どもたちとの距離を縮め、 一緒に地域の自然へ出て、 そこで見つけたものや感じたことを 教室へ持ち帰る。

体験と対話、 そしてマンガ教材をつなぐ 3部構成です。

9:40〜10:00

① アイスブレイク

自己紹介や簡単なゲームなどを通して、 高校生と小学生がお互いを知り、 話しやすい関係をつくります。

10:00〜10:30

② 三和富士山道を歩く

高校生と小学生が一緒に林道へ入り、 木や草花、落ち葉、 森の風景などを自分の目で観察します。

その後

③ 教室で授業

林道で見たものや感じたことを振り返りながら、 マンガ教材、 スライド、 黒板、 自然素材など、 各チームが考えた方法で授業を行いました。

まずは、「先生」と「児童」になる前に

授業は、 いきなりマンガ教材を開くところから 始まったわけではありません。

まず行ったのは、 高校生と小学生がお互いを知る アイスブレイクです。

自己紹介をしたり、 子どもたちが参加しやすいゲームを行ったり。

高校生たちは、 「何を教えるか」だけでなく、 「どうすれば子どもたちが安心して話してくれるか」 というところから授業を始めました。

三和小学校の教室で自己紹介とアイスブレイクを行う加茂高校の高校生
小学生を前に自己紹介する高校生たち。 まずはお互いを知り、 これから一緒に活動するための空気をつくっていきます。
小学生とアイスブレイクを行う加茂高校の高校生
小学生が参加できる仕掛けも取り入れながら、 少しずつ高校生と子どもたちの距離を縮めていきました。
小学生へ手作り教材を示しながら活動する加茂高校の高校生
手作りの教材やスライドなども活用。 5つのチームそれぞれが、 子どもたちが参加しやすい導入を工夫しました。

教室を出て、「三和の森」そのものを教材にする

アイスブレイクの後は、 高校生と小学生が一緒に学校を出ました。

向かったのは、 学校のすぐそばにある 「三和富士山道」です。

この林道は、 後に三和小学校の子どもたちが 「〜美しい自然、三和の道〜 三和富士山道」と名付け、 加茂農林高校の高校生たちが 林道整備や看板・ベンチづくりなどにも関わってきた場所です。

ここでは、 高校生が一方的に説明するのではなく、 小学生と一緒に歩き、 「何がある?」 「何が気になる?」 と同じ景色を見ながら自然に触れていきました。

三和富士山道を小学生と一緒に歩く加茂高校の高校生
三和富士山道を一緒に歩く高校生と小学生。 教室を出て、 地域そのものを学びのフィールドにしていきます。
三和富士山道で小学生に寄り添いながら歩く加茂高校の高校生
小学生に寄り添いながら林道を歩く高校生。 年齢や学校を越えた関係が、 フィールドでの時間の中から自然に生まれていきます。
三和富士山道を高校生と小学生が一緒に散策する様子
木、草花、落ち葉、森の空気。 実際に歩きながら見つけたものが、 この後の教室での授業につながっていきました。

「里山」を、言葉ではなく体験から考える

「自然を大切にしましょう」と説明するだけではなく、 まず地域の森を歩く。 自分で見つけ、 気づき、 誰かと話してみる。 高校生たちは、 フィールドでの体験そのものを 授業の入口にしました。

同じ教材でも、5チームなら5つの授業になる

林道散策の後は、 それぞれの教室へ戻り、 5つのグループが考えてきた授業を実践しました。

共通して使うのは、 美濃加茂市の地域資源や 里山、SDGsなどを題材にしたマンガ教材。

しかし、 授業の形はグループごとに大きく異なりました。

マンガ教材を一緒に読みながら、 里山や自然についてじっくり考えるチーム。

林道散策で見つけた木や草花を 黒板いっぱいに描くチーム。

森で拾った葉などに絵の具をつけ、 模造紙へ写し取りながら 一つの作品をつくるチーム。

高校生一人ひとりの考え方や個性が、 授業の中に表れていました。

教材を「正しく教える」のではなく、 自分たちなりの授業へ

このプログラムでは、 完成された授業案を高校生へ渡していません。 何を伝えたいのか。 小学生にどう問いかけるのか。 どうすれば楽しく参加してもらえるのか。 高校生自身が考え、 試し、 授業の形にしてきました。

マンガ教材を囲みながら小学生と内容を考える加茂高校の高校生
マンガ教材を囲みながら、 高校生と小学生が一緒に内容を考えます。 一方的に説明するのではなく、 子どもたちの反応を見ながら対話を重ねました。
三和富士山道で見つけた自然を黒板へ描く三和小学校の児童
林道で見つけた木や草花などを、 子どもたちが黒板いっぱいに描いていきます。 フィールドで見たものを思い出しながら、 体験を自分たちの表現へ変えていく時間です。
教室で小学生を前に授業を行う加茂高校の高校生
教室では、 スライドや教材なども使いながら 高校生自身が授業を進行しました。
マンガ教材を使い小学生と対話する加茂高校の高校生
マンガ教材のページを実際に見せながら、 小学生へ問いかけます。 「読む教材」だけではなく、 対話を生み出すための教材として活用しました。
自然の葉を使って作品づくりを行う三和小学校の児童と加茂高校の高校生
林道で触れた自然を題材にした表現活動。 葉などの自然素材に絵の具をつけ、 模造紙へ写し取りながら作品をつくりました。

高校生は「先生役」になることで、もう一度地域を学ぶ

この取り組みで学んでいるのは、 小学生だけではありません。

むしろ、 誰かに伝えようとした瞬間に、 高校生自身の学びが もう一段深くなっていきます。

自分では分かっているつもりでも、 小学生へ説明しようとすると うまく言葉にならない。

考えていた質問に、 想像していなかった答えが返ってくる。

盛り上がると思ったところで反応がなく、 逆に予想していなかったところで 子どもたちが夢中になる。

実際の子どもたちと向き合うからこそ、 計画だけでは分からないことがあります。

教員志望の高校生にとっては、 「教師になるとはどういうことなのか」を 実際の学校で考える原体験にもなりました。

教材開発から、学校での実践へ。約3年の歩み

この日の授業だけを見ると、 一日の教育イベントにも見えるかもしれません。

しかし、 この取り組みは2021年度から続く 高校生たちの探究の積み重ねの上にあります。

2021年度
地域を調べ、マンガ教材をつくる 加茂高校の高校生が 美濃加茂市の地域資源について調査し、 地域の人へのヒアリングなどを行いながら、 デザイナーやライターと一緒に 美濃加茂市版のマンガ教材制作へ参加しました。
2022年度
教材を使って、小学生へ授業する 前年度の高校生が制作に関わった教材を活用し、 高校生自身が授業を設計。 ぎふ清流里山公園で、 公募で参加した小学生を対象に 模擬授業を実施しました。
2023年度
実際の小学校の授業へ 三和小学校の協力により、 ついに実際の学校・授業時間の中で実践。 高校生11名が5グループに分かれ、 1〜5年生27名と向き合いました。

「教材をつくる」。

「教材を使って授業を考える」。

そして、 「本物の学校で、本物の子どもたちへ伝える」。

少しずつステージを上げながら、 高校生たちの学びも 地域との関係も深まってきました。

最後に、校長先生から高校生へ

授業を終えた高校生たちに、 三和小学校の校長先生から 感想と労いの言葉をいただきました。

本番直前の3月13日にも、 学校側からアドバイスをいただきながら 授業内容を練り直してきた高校生たち。

実際の学校で、 実際の子どもたちと向き合い、 一つの授業をやりきった経験は、 教室を出た後にも残っていくものだと思います。

授業終了後に三和小学校の校長先生から言葉を受ける加茂高校の高校生
すべての授業を終えた後、 三和小学校の校長先生から 高校生たちへ感想と労いの言葉をいただきました。

この活動から生まれたもの

OUTPUT|形になった成果

  • 加茂高校の高校生11名が授業実践に参加
  • 三和小学校1〜5年生27名を対象に実施
  • 高校生が5グループに分かれて授業を企画・実践
  • 実際の小学校の授業時間を使ったプログラムとして実施
  • アイスブレイク、林道散策、教室授業の3段階で構成
  • 三和富士山道をフィールドとした地域学習を実施
  • マンガ教材を活用した対話型授業を実践
  • 黒板、スライド、手作り教材など各グループが独自に活用
  • 林道で見つけた自然を授業へつなげる活動を実施
  • 自然素材を使った表現活動など複数の授業方法を実践
  • 2021年度の教材開発から約3年を経て学校実践へ到達

OUTCOME|参加者に生まれた変化

  • 高校生が「教わる側」から「教える側」へ立場を変えて地域を捉え直す経験となった
  • 小学生の反応を見ながら授業を調整する実践経験が生まれた
  • 教員志望の高校生が実際の児童と向き合う原体験を得た
  • 高校生と小学生が学校・学年を越えて直接関わる機会が生まれた
  • 地域の森林や里山を実際に歩いた体験を教室での学びへ接続できた
  • マンガ教材を「読むもの」から「対話を生むもの」へ展開できた
  • 同じ教材から多様な授業方法が生まれることを実践的に確認できた

IMPACT|地域に残り始めた価値

  • 高校と小学校、地域フィールドをつなぐ教育実践モデルの蓄積
  • 地域資源を教材化し、次世代から次世代へ伝える仕組みの実践
  • 高校生が地域の教育活動を担う新しい参加機会の形成
  • 教材開発から授業実践までを継続する探究学習モデルの蓄積
  • 地域の自然・人・学校を一体的な学びのフィールドとして活用する実践例の形成
  • 将来的に他地域でも応用可能な「高校生がつくり、高校生が教える」教育モデルへの可能性

※OUTPUTは実施によって確認できた直接的成果、 OUTCOMEは今回の実践から確認・推察できる参加者の変化、 IMPACTは継続によって地域に育てていきたい中長期的価値として整理しています。

地域で学んだ高校生が、 次の世代へ地域を伝える

2021年度、 高校生が地域を調べるところから始まった マンガ教材づくり。 2022年度には、 その教材を使って小学生へ授業を行いました。 そして2023年度、 ついに実際の小学校の授業へ。 高校生11名が5つのチームとなり、 三和小学校の1〜5年生27名とともに、 森を歩き、対話し、考え、表現しました。 地域について「教わった高校生」が、 今度は「伝える高校生」になる。 その循環こそが、 このプログラムが育ててきた 大切な価値の一つだと考えています。

プログラム: 2023年度 マンガ教材探究型授業プログラム
実施日: 2024年3月18日(月)
実施場所: 美濃加茂市立三和小学校・三和富士山道
対象: 三和小学校 1〜5年生 27名
参加: 岐阜県立加茂高等学校 高校生11名
授業グループ: 5グループ
企画・総合指導: 田園社会イニシアティブ株式会社/ミライクエスト
協力: 美濃加茂市立三和小学校、 日比野安平氏、 NPOブリッジほか

次世代に原体験を。地域には知の資産を。

ミライクエストは、 地域そのものを学びのフィールドにし、 若者が人や自然、文化、産業と出会い、 自分自身の問いを持って実践する機会を これからも育てていきます。

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