台風7号・8号の影響が心配され、当日の朝まで開催できるか分からなかった2026年6月27日。 108名の参加を予定していた「ミライクエスト共創フォーラム2026」は、 トヨタ産業技術記念館を会場に、80名の参加者とともに開催することができました。
テーマは、「これからの地域×モビリティをともにつくる」。 学生、企業、行政、大学、交通・モビリティ関係者など、世代も所属も異なる人たちが集まり、 4名のゲストからのインスピレーションを起点に、問いを書き、語り合い、 最後には一つの大きな車座となって地域と移動の未来を考えました。
本記事では、ミライクエストが企画・運営する共創プログラムを、 現場で生まれた問い・対話・次のアクションまで含めて紹介します。
- 開催日
- 2026年6月27日(土)
- 会場
- トヨタ産業技術記念館
- テーマ
- これからの「地域×モビリティ」をともにつくる
- 参加者
- 80名
- 主催
- ミライクエスト
- 協力
- 東海有志コミュニティ TENX./有志団体 D-SPRINGs
- 助成
- 公益財団法人トヨタ財団

台風の朝。それでも80名が集まった
開催当日は、台風7号と8号の影響が懸念され、朝まで開催そのものが危ぶまれる状況でした。 108名の参加を予定していたため、開催できたとしても多くの欠席が出るのではないかという不安がありました。
それでも会場には80名もの方々が集まってくださいました。 企業、行政、大学、地域団体、交通・モビリティ関係者、大学生、高校生。 年齢も専門分野も立場も異なる人たちが、同じ問いを囲む一日が始まりました。
参加者には、トヨタグループ各社をはじめ、中部国際空港、長良川鉄道、 NEXCO中日本、西日本旅客鉄道、本田技術研究所などモビリティに関わる企業・組織の方々、 行政職員、大学関係者などが参加。 学生も大学生・大学院生だけでなく、高校生が加わり、 社会人と次世代が同じ場で対話する構成となりました。
この考え方が、今回のフォーラムの空間設計の出発点でした。
学生とともにつくった、ミライクエストのフォーラム
このフォーラムの大きな特徴の一つは、企画から当日の進行までを、 東京大学文学部4年の高橋秀歩さんが中心となって担ったことです。
運営のコアメンバーは、 田園社会イニシアティブ株式会社/ミライクエスト推進チーム代表の楢木、 高橋秀歩さん、 そして株式会社デンソー社員で有志団体D-SPRINGs/東海有志コミュニティTENX.の創設者でもある加納健良さん。 3人を中心に、フォーラムのテーマ、ゲスト、タイムライン、座席配置、 対話の仕掛け、その後のラボへの接続までを組み立てていきました。
がグループ内でリーダーシップをとって対話を進行.jpg)
「次世代のために大人が何かを用意する」のではなく、 次世代自身が場をつくる側に立つ。 そして企業や行政、研究者、地域の実践者がその場に加わる。 これもミライクエストが大切にしている共創のあり方です。
4人のゲストから、地域×モビリティを考える
第1部では、「地域」「モビリティ」の最前線で活動する4名をゲストに迎え、 それぞれ異なる立場から地域と移動の未来を考えるインスピレーショントークを行いました。

テーマは「『移動』を根本から問い直す ~人と地域にとって、本当に豊かなモビリティとは何か~」。 20世紀の自動車社会がもたらした生活圏の拡大や都市化を振り返りながら、 生活路と交通路の共存、地域固有の感覚を取り戻すことなど、 「豊かな移動とは何か」を根本から問い直す視点が提示されました。

テーマは「東海エリアのモビリティネットワークが地域の未来をどう変えるか」。 空港・鉄道・道路を横断した広域モビリティの視点から、 地域資源や観光導線、人と地域をつなぐネットワークの可能性についてお話しいただきました。

テーマは「インフラ企業が地域とともに未来をつくる理由」。 高速道路を単なる移動インフラではなく、 地域連携、災害対応、観光、社員育成などと結びつく社会基盤として捉え、 インフラ企業だからこそできる地域との共創について紹介いただきました。

テーマは「地方におけるモビリティのリアルと、これからの地域のあり方」。 関市の公共交通や長良川鉄道、人口減少、観光・関係人口づくりなど、 地域の現実を踏まえながら、地域ごとに必要な移動のあり方について語っていただきました。
「聞く」だけで終わらせない。問いを書きながら聞く
今回のフォーラムでは、参加者に講演を聞いてもらうだけの形式にはしませんでした。
受付で一人ひとりに配布したのが、 紙のマンダラ形式でつくった「マイ クエスト カード」です。
カードには4名それぞれについて、 「ゲストからの気づき」と「ゲストに質問したいこと」を記入するマスを設けました。 参加者は話を聞きながら、自分自身の気づきや問いを書き留めていきます。
一方向の講演ではなく、最初から「対話が起こること」を前提にプログラムを設計しました。
4回の「ワイガヤ」で、少しずつ場を温める
さらに、4名のインスピレーショントークの間には、 毎回短い対話の時間を入れました。
隣や前後に座った2〜3人で、 「何が気になったか」「どんなことを聞いてみたいか」を気軽に共有。 いきなり全体の前で発言するのではなく、 まず小さな会話を何度も繰り返します。
聞く
4名のゲストから異なる視点を受け取る。
書く
マイ クエスト カードに気づきと問いを残す。
話す
隣同士の小さなワイガヤを繰り返す。
問いを育てる
自分とは違う視点を受け取り、次の問いへつなげる。





この短い対話を4回繰り返すことで、 会場には徐々に「話していい」「問いを出していい」という空気が生まれていきました。
後半のワークショップに入る頃には、 初対面同士であっても、自分の意見や疑問を自然に口にできる関係がつくられていました。 これは単に座席をグループに分けたからではありません。 小さな対話を積み重ねてから大きな対話へ移るという、段階的な場づくりが大きく作用しました。
8つの島へゲストが入り、問いから対話する
4名のインスピレーショントーク終了後は、 参加者を8つのグループに分け、本格的な共創ワークショップへ移りました。
各ゲストには2グループずつを割り当て、 「ゲストからの気づき」を共有する時間と、 「ゲストに質問したいこと」を直接ぶつける時間を設定。 ゲスト自身が島の中に入り、参加者と同じ目線で対話します。
企業の役職者、行政、地域の実践者、大学生、高校生が、 肩書きを越えて同じ円の中に座る。 ここでも特に意識したのは、学生が発言できる余白をつくることでした。
ゲスト自身が参加者の輪の中へ入り、一緒に問いを考える。 この距離の近さが、専門家への「質問」を、互いに考えを重ねる「対話」へ変えていきました。
8つの島が、最後には一つの大きな円になる
フォーラムの終盤、会場のレイアウトを大きく変えました。
それまで8つに分かれていた島をつなぎ、 会場全体を一つの大きな車座へ。 中央に4名のゲスト、その周囲に学生、さらにその外側に社会人が座ります。


進行を担った高橋さんが、4名のゲストの対話をつなぎながら、 学生や参加者へ次々と問いを投げていきます。
この段階では、すでに4回のミニ対話とグループワークを重ねています。 初対面だった参加者同士の距離は大きく縮まり、 「発表会」ではなく、本当にその場で考えが交差するクロストークになりました。


対話の裏側で、AIが「集合知」を構造化する
車座でクロストークが進んでいる一方、 バックオフィスでは、そこで生まれている言葉や視点をAIによるマンダラ分析へ入力していきました。
目的は、AIに答えを出してもらうことではありません。 参加者の発言の中に散らばる気づきや問いを構造化し、 その場で生まれた集合知を、次に使える共創知へ変えることです。
分析からは、地域×モビリティを考える上で、 次のような視点が浮かび上がりました。
さらに具体的なアイデアとして、 移動中に地元の人と会話できる仕掛け、 スマートフォンから離れて車窓を楽しむ時間、 観光と生活交通の共存、 行政と民間が小さく実験できる仕組み、 デジタルから離れること自体を地域の価値にする考え方など、 多角的な意見が生まれました。

対話を記録し、構造化し、次のフィールドワークや実験につなげていく。 これも今回のフォーラムで試した重要な共創の仕組みです。
アンケートから見えた、フォーラムの手応え
フォーラム終了後には、参加者アンケートを実施しました。 数字からも、この日の場が単なる講演会ではなく、 参加者自身が関わる共創の機会として受け止められていたことがうかがえます。
参加者アンケート
満足度だけでなく、その後も地域×モビリティの活動へ関わってみたいという声が多く寄せられました。
次は、実際の地域で試してみたい
アンケートでは、今後参加してみたい活動として、 フォーラムで話し合った内容を実際の地域へ持ち出す実践型のプログラムにも関心が寄せられました。
「話を聞いて勉強したい」だけではなく、 現場へ行きたい、試してみたい、誰かと一緒に取り組みたいという方向へ 関心が広がっていることも、今回のフォーラムで得られた大切な成果です。
「イベント」で終わらせず、次の実験へ
クロージングでは、このフォーラム自体がゴールではないことを参加者へ伝えました。
今回は、地域とモビリティを継続的に探究していく実践型コミュニティ 「もびかるラボ」のキックオフでもあります。
フォーラムで生まれた問いを、 次は実際の地域へ持っていく。 参加した皆さんにも「研究員」のような立場で、 その後も継続的に関わっていただくことを呼びかけました。
2026年8月29日|岐阜県関市へ
次の一歩として予告したのが、 関市観光協会の協力を得て実施するマイクロラボです。
美濃太田駅から長良川鉄道に乗車し、移動そのものを体験。 関市では参加者が自分自身の問いを持ってまちを歩き、 気になった場所や風景、移動のしやすさ・しにくさを写真や言葉として記録します。
「移動を楽しむ」「不便を価値に変える」「生活路と交通路を考える」といった フォーラムで生まれた視点を、今度は実際の地域で試します。
フォーラムから、すでに新しいつながりが動き始めた
開催後の振り返りでは、 「イベントとして良かった」という評価だけでなく、 参加者同士の新しいつながりが、その後の相談やプロジェクトへ動き始めていることも確認できました。
異なる企業・行政・地域の実践者が出会い、 互いの関心や課題を知る。 そこに学生の柔らかな問いや視点が加わることで、 これまで交わらなかった人やテーマがつながっていきます。
人を集めること自体が目的なのではなく、 出会った人たちの間に「次に一緒にやってみたい」が生まれること。 それこそが、ミライクエストが共創の場をつくる意味だと考えています。
OUTPUT・OUTCOME・IMPACT
学生・企業・行政・大学・研究機関・地域関係者など80名が参加。 4名のインスピレーショントーク、トーク後の短時間対話、 8グループでの共創ワークショップ、全体車座クロストークを実施しました。 マイ クエスト カードとAIマンダラを通じて、 参加者の問い・気づき・アイデアを記録・構造化しました。
社会人と学生、企業と行政、研究者と地域実践者など異なる立場の参加者が、 一方向の講演ではなく対話を通して関係を構築。 「移動を楽しむ」「不便だからこその価値」「生活路と交通路のバランス」 「民間と公営の協働」など、地域×モビリティに関する複数の問いと視点が共有されました。 参加者アンケートでも高い満足度と、その後の活動への継続的な関心が確認されました。
フォーラムを単発イベントで終わらせず、 実践型コミュニティ「もびかるラボ」と、 地域をフィールドに問いを試すマイクロラボへ接続。 企業有志、学生、行政、地域実践者の新たな関係が生まれ、 「人づくり」と「事業づくり」が同時に進む継続的な共創基盤づくりが始まりました。
この日、ミライクエストの「ラボ」が動き始めた
6月27日は、ミライクエストにとっても大きな転換点になりました。
素晴らしい専門家を呼び、話を聞く。 それだけではなく、 参加者一人ひとりが問いを持ち、 学生と社会人が対等に話し、 対話をAIで構造化し、 その問いを次の地域で実際に試していく。
問いを見つける。
人と人をつなぐ。
小さく試す。
そして、次の行動へつなげる。
この一連のプロセスそのものが、 ミライクエストがこれから育てていきたい「ラボ」の形です。
フォーラムの開催報告書では、 グループ分け、短時間対話、学生を中心にした質問設計、 ゲストを輪の中へ迎える空間づくり、 AIによる集合知の可視化が組み合わさることで、 会場全体に活発な対話が広がったと整理しています。
台風のなか集まってくださった80名の皆さま、 4名のゲストの皆さま、 運営・ファシリテーションを支えてくださった皆さま。 本当にありがとうございました。

ミライクエスト共創フォーラム2026
これからの「地域×モビリティ」をともにつくる
2026年6月27日(土)|トヨタ産業技術記念館
「人口減少時代に、モビリティを活用してどのように地域を活性化する?」を問いに、 ゲスト・学生・社会人が一体となって対話した共創フォーラム。 ここで生まれた問いは、実践型コミュニティ「もびかるラボ」と、 地域をフィールドとする次のマイクロラボへつながっていきます。
協力:東海有志コミュニティTENX./有志団体D-SPRINGs
助成:公益財団法人トヨタ財団
企画・運営コアメンバー: 楢木隆彦(田園社会イニシアティブ株式会社/ミライクエスト推進チーム)、 高橋秀歩(東京大学文学部4年)、 加納健良(株式会社デンソー/D-SPRINGs/TENX.)
地域とともに、問いから未来をつくる。
ミライクエストでは、学生・企業・行政・教育機関・地域が、 立場を越えて問いを持ち寄り、小さな実験から新しい人・事業・仕組みを育てていきます。
ミライクエストに相談する
アンケートでは、4名のインスピレーショントークと共創ワークショップの双方が、 「印象に残ったプログラム」として多く挙げられました。
研究、広域モビリティ、インフラ、自治体という異なる視点からの話を聞き、 その直後に自分の気づきや問いを誰かと話す。 そして後半では、ゲストと同じ輪に入り、さらに問いを深めていく。
「専門家の知見を受け取ること」と「参加者自身が対話すること」が分かれているのではなく、 一つの流れとしてつながっていたこと が、今回のフォーラムの特徴でした。