高校生が運営するカフェで地域の食を味わい、 住民主体の地域づくりや農業、教育、移住者の挑戦に触れる。 東京大学の学生5名が福井県美浜町を訪れ、 行政、民間団体、住民、高校生、移住者との対話を通して、 人が育ち、やりたいことへ挑戦できる地域のあり方を学びました。
本記事では、東大生地方創生コンソーシアムの学生たちが主体となって実施した活動を、共創パートナーであるミライクエストの視点から紹介します。
プロジェクト概要
- 事業名
- 福井・美浜フィールドワーク2026
- 実施期間
- 2026年4月24日~4月26日
- 実施地域
- 福井県三方郡美浜町
- 参加者
- 東大生地方創生コンソーシアム所属学生 5名
- 実施主体
- 東大生地方創生コンソーシアム
- 共創パートナー
- ミライクエスト
- 主な協力先
- FoundingBase、美方高校、 菅浜わくわく共同体、美浜町役場、 地域住民・事業者、三方五湖青年会議所
- 主なテーマ
- 教育とまちづくり、高校生の地域参加、 住民主体の地域自治、農業と地域産業、 移住者による事業づくり、 人が挑戦しやすい地域環境
2026年4月24日から26日まで、 東大生地方創生コンソーシアムの学生5名が、 福井県美浜町でフィールドワークを実施しました。
今回の活動は、 以前から美浜町に関わってきた学生が中心となり、 美浜町でいきいきと活動する人を増やすことを目指した 新入生向けフィールドワークとして企画されました。
美浜町から教育事業を受託しているFoundingBaseの協力を得ながら、 行政、民間団体、地域住民、高校生、大学生、移住者など、 幅広い年代と背景を持つ人々に会いました。
まちづくりを制度や事業の仕組みだけから捉えるのではなく、 地域で暮らす人が何を楽しみ、 何に挑戦し、 どのような関係を築いているのかを知る。
美浜町にある人の温かさと、 挑戦を支える環境を体感する3日間となりました。
教育から、人と地域を育てる
最初に、 FoundingBaseがどのような目的を持つ会社であり、 美浜町でどのような事業に取り組んでいるのかについて オリエンテーションを受けました。
美浜町では、 放課後教室「SUN」をはじめ、 子どもや高校生が地域と関わりながら学べる 教育プログラムが行われています。
参加学生の中には、 北海道安平町で同じようなプログラムを 利用した経験を持つ学生もいました。
子どもの頃に何を感じていたのか、 どのような大人との出会いが印象に残っているのかを共有しながら、 地域教育について双方向の対話が行われました。
教育やまちづくりに関心を持つ学生が多く、 FoundingBaseの事業や、 地域で人を育てる仕組みについて 積極的に質問する姿が見られました。
まちづくりは、人が育つ環境をつくること
施設や制度を整えるだけでなく、 子どもや若者が地域の人と出会い、 自分の関心を見つけ、 小さな挑戦を試せる環境をつくる。 人が育つことが、 地域の新しい活動や担い手の誕生につながります。
高校生が地域の食と交流をつくる「さかなカフェ」
学生たちは、 美方高校食物科の調理部が 月に一度開催している「さかなカフェ」を訪れました。
会場は、 美浜町生涯学習センター「なびあす」です。
今回は、 食物科の卒業生が育てた鯛を使った料理が提供され、 おにぎりや味噌汁とともに味わいました。
自分たちより若い高校生が、 調理だけでなく、 接客や店の運営にも一生懸命取り組む姿が 印象に残りました。
来場者は、 小さな子どもから学生、高齢者まで幅広く、 事前予約が必要になるほど 地域に知られた活動となっていました。

高校生の活動を、地域全体が応援する
高校生が挑戦するだけでなく、 地域の人がその活動を知り、 予約して訪れ、 食事を楽しみながら応援する。 若者の挑戦を地域全体で受け止める関係が、 次の学びと自信につながります。
住民自身が、地域を楽しむ菅浜わくわく共同体
菅浜地区では、 「菅浜わくわく共同体」の皆さんが運営する ピザ店を訪れました。
菅浜わくわく共同体は、 地区の住民が一体となり、 菅浜を盛り上げる活動を進めるために発足し、 法人化された団体です。
ピザを囲みながら、 団体の成り立ちや活動、 菅浜で暮らすことへの思いについて話を伺いました。
特に印象に残ったのが、 元保育士の方が語った 「第二の人生を、この地区でもっと楽しく生きる」 という言葉です。
学生たちも臆することなく地域の方へ話しかけ、 歴史に関心を持つ学生は、 菅浜地区の歴史をまとめた本を 贈っていただきました。

棚田、雁皮、レモン園、ツリーハウスを巡る
交流後には、 菅浜わくわく共同体が管理する 棚田や地域資源を見学しました。
菅浜でしか生産されていない 高級和紙の原料となる雁皮、 耕作放棄地を活用したレモン園、 地域の人がつくったツリーハウスなど、 多様な活動が行われています。
地域課題を解決するという言葉から始まるのではなく、 自分たちが面白いと思うことや、 やってみたいことから活動が広がっていることが 特徴的でした。
「地域のため」より、「自分たちが楽しい」から始める
義務感だけで地域活動を続けるのではなく、 自分たちが楽しみたいことを試し、 その結果として人が集まり、 地域資源が活用されていく。 楽しさが活動の継続力になることを学びました。
高校生が語る「みはまシナプスプロジェクト」
高校生を対象とした学びのコミュニティ「Kai」に通う 敦賀高校2年生から、 「みはまシナプスプロジェクト」への思いを聞きました。
みはまシナプスプロジェクトは、 美浜町役場が中心となって立ち上げ、 町民や高校生も参加しながら、 町を盛り上げるために話し合う事業です。
発表後には、 美浜町役場まちづくり推進課の職員や 他の高校生も加わり、 3つのグループに分かれて対話を行いました。
発表への感想や、 高校生から投げかけられた疑問について、 東大生と地域の参加者が一緒に考えました。
お菓子やジュースが用意された アットホームな空間では、 高校生が東大生へ進路相談をする場面も見られました。

故郷を語る高校生と、自分の生い立ちを重ねる
実際に美浜町で育った高校生と関わる中で、 参加学生も自分の故郷や生い立ちを 振り返る様子が見られました。
地方出身の学生も、 都市圏で育った学生も、 美浜町の高校生の言葉を通して、 自分にとっての地域や居場所について考えました。
地域を学ぶことが、 自分自身の過去や進路を問い直す機会にもなっています。
若者を参加者ではなく、地域の担い手として見る
大人が決めた地域づくりへ高校生を招くのではなく、 高校生自身が町への思いや疑問を発表し、 行政や大学生と同じ場で話し合う。 若者を一人の担い手として扱うことが、 地域への愛着と主体性を育てます。
「大人が本気で楽しむ姿」を子どもへ見せる
夜には、 美浜町でさまざまな活動を行う秋山さんとの 交流夕食会を開催しました。
秋山さんは保険業を本業としながら、 大人が本気で楽しむ姿を子どもたちへ見せる団体 「遊viva美浜」を立ち上げています。
地域のイベントにはキッチンカーで出店し、 自らイベントを企画するなど、 美浜町で幅広く活動しています。
今回は、 話しながら食べられる料理として 手巻き寿司を用意していただきました。
FoundingBaseのメンバーや 美浜町出身の大学生も加わり、 自分のこと、相手のこと、 その日に感じたことを ざっくばらんに話す時間となりました。


子どもが地域の未来を想像できる、大人の姿
地域のために我慢して活動するのではなく、 大人自身がやりたいことへ挑戦し、 仲間と楽しんでいる。 その姿を子どもが見ることが、 「この町でも面白いことができる」という 未来の選択肢につながります。
70歳を過ぎても挑戦を続ける、ガーデナー奥井さん
2日目には、 美浜町でトマトや花の苗を育て、 出荷している奥井さんの苗ハウスを訪れました。
70歳を過ぎても元気に働く奥井さんから、 苗の育て方や土づくり、 事業を始めたきっかけについて話を伺いました。
どのように事業を大きくし、 ここまで続けてきたのか、 人生を元気に生きる秘訣についても 明るく語ってくださいました。
普段、 農業の仕事へ触れる機会が少ない学生にとって、 苗を育てる技術も、 仕事を長く続ける生き方も新鮮に映りました。
学生からも、 栽培方法や事業経営について 積極的に質問が寄せられました。

地域産業は、人の技術と生き方によって支えられる
農業を理解するには、 作物や売上だけを見るのでは十分ではありません。
長い時間をかけて蓄積された技術、 失敗を乗り越えてきた経験、 仕事を続ける人の思いも、 地域産業を支える重要な資源です。
奥井さんとの対話は、 仕事と人生を切り離さずに考える機会となりました。
移住者が、地域のものを使って新しい店を開く
昼食には、 美浜町へ移住した川嶋さんが 4月にオープンしたカフェ兼食堂 「青会食堂」を訪れました。
川嶋さんは、 美浜町へUターンした方との結婚をきっかけに 地域へ移住しました。
店では、 美浜町の食材を使った 地産地消の料理が提供されています。
建物は、 夫の父親が以前使っていた鉄工所を リノベーションしたものです。
かつて仕事場だった場所が、 地域の人や訪問者が集まり、 食事を楽しむ新しい拠点へと生まれ変わっていました。

移住者の挑戦を、地域の資源とつなぐ
使われなくなった建物、 地域で採れる食材、 家族や地域の人とのつながり。 既に地域にあるものと移住者の経験や発想を組み合わせることで、 新しい仕事と交流の場が生まれます。
地域イベントを、若い担い手がつくる
最後に、 美浜駅に隣接する道の駅「はまびより」で開催された 三方五湖青年会議所主催の 「グルメ&こどもフェス」を訪れました。
三方五湖青年会議所の皆さんから、 普段の活動内容や、 青年会議所へ参加した理由、 今回のイベントを企画した背景について 話を伺いました。
秋山さんもキッチンカーで出店し、 青年会議所の皆さんとの接点を つくってくださいました。
学生たちが訪れた時点では、 秋山さんの唐揚げとうどんはすべて完売し、 はまびよりの駐車場も満車となっていました。
地域の事業者や団体がつながり、 子どもや家族が楽しめるイベントをつくることで、 地域に新しいにぎわいが生まれていました。

学生が現場から感じたこと
美浜の人たちは、 「地方創生をしよう」として動いているというより、 自分たちがやりたいことや、 楽しいと思うことへ取り組んでいるように感じました。 その姿に触れ、 自分も美浜で何かをやってみたいと思うようになりました。
美浜町には、 まちづくりを進める行政やFoundingBaseの皆さんと、 強い思いを持って活動する地域の方々がいます。 町内外を問わず、 誰もが挑戦しやすい環境があると感じました。
高校生が美浜町を好きだと語っていたことが印象に残りました。 この町が、 年齢や出身地に関係なく、 誰かの居場所になれる温かさを持っているからだと思います。
地方創生とは、 外から来た自分たちが地域を変えることだと考えていました。 しかし今回は、 自分自身が美浜町から学び、 成長させてもらったと感じました。
システムをつくるだけでなく、 人を育て、 そのための場所をつくるという考え方が、 美浜町を挑戦しやすい地域へ変えていると感じました。
この活動から生まれたもの
OUTPUT|学生たちが形にした成果
- FoundingBaseの事業と美浜町の教育プログラムに関するオリエンテーション
- 放課後教室SUNや地域教育に関する意見交換
- 美方高校食物科の調理部が運営する「さかなカフェ」の訪問
- 高校生による調理・接客・地域交流の実践の見学
- 菅浜わくわく共同体との交流と活動内容のヒアリング
- 棚田、雁皮、レモン園、ツリーハウスなどの地域資源の見学
- 高校生による「みはまシナプスプロジェクト」の発表の聴講
- 高校生、行政職員、大学生によるグループ対話
- 秋山さんや地域関係者との手巻き寿司交流会
- ガーデナー奥井さんの苗ハウスの見学と事業ヒアリング
- 移住者が開いた「青会食堂」の訪問
- 三方五湖青年会議所の地域イベントと活動に関するヒアリング
- 参加学生による活動の振り返りと報告書の作成
OUTCOME|学生と地域に生まれた変化
- 学生が教育とまちづくりを一体で考える視点を得た
- 高校生が地域の担い手として活動する姿への理解が深まった
- 地域の人が楽しみながら活動することの継続力を学んだ
- 住民主体の地域自治や法人化の意義を知った
- 棚田や耕作放棄地などを地域資源として捉える視点を得た
- 地域の大人の生き方が、子どもや若者へ影響することを実感した
- 農業を技術だけでなく、仕事と人生の視点から理解した
- 移住者が地域資源を生かして新しい事業をつくる姿に触れた
- 行政、民間団体、住民、高校生の関係が挑戦を支えていると学んだ
- 学生の中に、美浜町で何かを実践したいという意識が生まれた
IMPACT|これから地域に育てていく可能性
- 大学生が継続的に美浜町の教育・地域活動へ関わる仕組みの形成
- 高校生と大学生が地域課題や進路を語り合う対話プログラムの継続
- 放課後教室や学びのコミュニティと大学生の連携
- 地域で活動する大人を次世代へ紹介するキャリア教育の展開
- 菅浜地区の棚田、雁皮、レモン園を生かした体験・商品開発
- 住民のやりたいことを小さな事業へつなげる支援体制の形成
- 農業者の技術や人生を記録し、次世代へ伝える仕組みづくり
- 移住者と地域住民による飲食・交流・空き施設活用の拡大
- 高校生、行政、地域団体が共同で地域企画を生み出す環境の充実
- 地域イベントを通じた若い世代の参画と事業者間連携の拡大
- 美浜町を、人が育ち、挑戦を試せる学びのフィールドへ発展させる可能性
地域を動かすのは、制度だけではなく人の熱量
今回のフィールドワークでは、 教育、高校生の活動、地域自治、農業、移住、 地域イベントという多様な現場を訪れました。
それぞれの活動は異なっていますが、 共通していたのは、 自分たちがやりたいことを、 仲間と一緒に楽しみながら形にしていることです。
地域課題を解決しなければならないという 義務感だけで動くのではなく、 面白そうだからやってみる。
誰かと一緒に試してみる。
その小さな行動へ、 行政、民間団体、地域住民、高校生、 移住者が関わり、 次の活動へつないでいく。
美浜町では、 システムを先につくるのではなく、 人が育ち、 人と人がつながる場所をつくることが、 挑戦しやすい地域環境につながっていました。
外から訪れた学生も、 地域を変える側としてではなく、 美浜の人から学び、 自分自身が変化する経験を得ました。
その経験が、 再び美浜町を訪れ、 自分も何かをやってみたいという 次の関係の入口となっています。
東大生の挑戦に寄り添う、ミライクエストの伴走支援
本活動の企画、訪問、対話、振り返りを主体的に担ったのは、 東大生地方創生コンソーシアムの学生たちです。
学生自身が美浜町で築いてきた関係を起点に、 新入生が地域の方々と出会い、 教育、地域自治、農業、移住について 自分の目で確かめました。
ミライクエストは、 東大生地方創生コンソーシアムの共創パートナーとして、 学生たちの主体性を尊重しながら、 現場で得た学びが次の調査や実践へつながるよう伴走しています。
大切にしているのは、 ミライクエストが学生に答えを与えることではありません。
学生が自分自身の関心から問いを持ち、 地域の方との対話や体験を通して考えを深め、 自分たちの言葉で次の行動をつくれる環境を整えることです。
一度のフィールドワークを一過性の体験で終わらせず、 次の訪問、研究、実践、 地域との継続的な関係へつなげていくこと。
それが、ミライクエストの伴走支援の役割です。
地域と一緒に、人と事業を創る研究所
ミライクエストは、次世代、企業、行政、大学、地域をつなぎ、 現場で生まれた問いや学びを、 次の調査、実践、研究、事業へつなげていきます。
共創パートナー: ミライクエスト
実施期間: 2026年4月24日~4月26日
実施地域: 福井県三方郡美浜町
参加者: 東大生地方創生コンソーシアム所属学生5名
主な協力先: FoundingBase、美方高校、 菅浜わくわく共同体、美浜町役場、 地域住民・事業者、三方五湖青年会議所