商店街を歩き、若者の居場所で中高生と交流し、 ノーベル賞受賞者・大村智博士の研究人生に耳を傾ける。 東京大学の学生6名が山梨県韮崎市を訪れ、 不動産、教育、研究、農業、ワイン、地域交流という 多様な視点から、まちに眠る魅力と次の可能性を探りました。
本記事では、東大生地方創生コンソーシアムの学生たちが主体となって実施した活動を、共創パートナーであるミライクエストの視点から紹介します。
プロジェクト概要
- 事業名
- 山梨・韮崎フィールドワーク2026
- 実施期間
- 2026年4月18日~4月19日
- 実施地域
- 山梨県韮崎市
- 参加者
- 東大生地方創生コンソーシアム所属学生 6名
- 実施主体
- 東大生地方創生コンソーシアム
- 共創パートナー
- ミライクエスト
- 主な訪問先
- 韮崎中央商店街、青少年育成プラザ Miacis、 韮崎大村美術館、螢雪寮、Chance Center、アメリカヤ
- 主なテーマ
- 商店街と不動産、若者の居場所、研究と地域還元、 地域の担い手との交流、ワインと地域産業、 地域資源をつなぐまちづくり
2026年4月18日から19日まで、 東大生地方創生コンソーシアムの学生6名が、 山梨県韮崎市でフィールドワークを実施しました。
今回の活動は、韮崎市議会議員の石河さんと、 学生とのつながりをきっかけに企画されたものです。
韮崎市出身のノーベル賞受賞者・大村智博士との交流を軸にしながら、 商店街、不動産、教育、農業、ワイン、 地域で活動する人々のつながりなど、 さまざまな角度から韮崎というまちを捉えました。
地域の魅力を見学するだけでなく、 その魅力を支えている人に会い、 一緒に過ごし、自分たちも活動へ加わる。
韮崎にある資源を知るとともに、 それらをどのようにつなぎ、 まちの新しい動きへ変えていけるのかを考える 2日間となりました。
まちづくり会社と歩く、韮崎の商店街
最初のプログラムでは、 まちづくり会社「ニラサキヤ」の皆さんに案内していただき、 韮崎中央商店街や周辺地域を歩きました。
学生たちは、 韮崎の地形や歴史、 駅前の商店街が形成されてきた背景について説明を受けました。
今回は地理学や地質学に関心を持つ新入生も多く、 まちの景観を地形や土地の成り立ちから捉える話に、 熱心に耳を傾けていました。
また、商店街では、 ニラサキヤが不動産事業として扱っている物件も 紹介していただきました。
空き店舗や古い建物を、 新たな店や活動の場所として生かすこと。
不動産を単に貸し借りするだけでなく、 まちに必要な人や事業を呼び込み、 商店街の次の姿をつくる手段として捉える視点を学びました。

不動産を、まちの未来をつくる手段へ
空き店舗を埋めることだけを目的にするのではなく、 どのような人や事業が入れば、 商店街に新しい関係や動きが生まれるのかを考える。 まちづくり会社が不動産事業を担うことで、 建物の活用と地域の将来像を一体で考えることができます。
商店街に新しい店が増えても、人通りは増えるのか
韮崎中央商店街には、 古い建物を改修した新しい店舗や、 個性的な活動拠点が生まれています。
一方で、学生たちは実際に商店街を歩く中で、 車の通行量に比べ、 歩行者が少ないことにも気づきました。
店舗が増えることと、 人が歩き、立ち寄り、地域の中で時間を過ごすことは、 必ずしも同じではありません。
車を中心とした生活の中で、 駅前や商店街へ人が訪れる理由をどのようにつくるのか。
店舗、不動産、公共交通、イベント、 地域の情報発信をどのようにつなぐのか。
学生たちは、 商店街のリノベーションが進む一方で残されている課題を、 自分たちの足で歩くことによって実感しました。
若者だけの居場所「ミアキス」で交流する
韮崎駅前にある青少年育成プラザ Miacisでは、 施設を利用している中高生と、 ボードゲームを通して交流しました。
ボードゲームの進め方は、 韮崎市にも拠点を置いて活動する ボードゲームの専門家から教えていただきました。
初めて出会った学生と中高生も、 ゲームが始まると自然に会話が生まれ、 時間を忘れて楽しみました。
ミアキスは、高校生以下に利用を限定し、 若者が安心して過ごせる空間をつくっています。
職員がさまざまな企画を考え、 若者が立ち寄りたくなるきっかけをつくるなど、 よりよい居場所にするための工夫も行われていました。

居場所は、場所を用意するだけでは生まれない
若者が安心して過ごせる空間に加え、 人と出会うきっかけや、 自分の関心を試せる企画、 見守りながら関係を築くスタッフがいること。 場所、活動、人の関係がそろうことで、 若者にとっての居場所が育っていきます。
大村智博士から、研究人生と地域への思いを聞く
韮崎大村美術館では、 韮崎市出身の大村智博士から、 研究人生や故郷への思いについて話を伺いました。
約90分にわたるフリートークの中で、 これまでどのように研究へ向き合ってきたのか、 世界的な成果を生み出すまでに何を大切にしてきたのかが 語られました。
また、世界的な評価を受けた後も、 故郷である韮崎へ知識や資源を還元しようとする 思いについても話していただきました。
新入生からも多くの質問が寄せられ、 大村博士は一つひとつに楽しそうに答えてくださいました。
最後には、 参加学生へ直筆サイン入りの著書も贈られました。

世界的な成果を、地域の未来へ返す
個人が大きな成果を上げたとき、 その知識、経験、ネットワーク、資源を、 生まれ育った地域へどのように返していくのか。
大村博士の活動からは、 研究の成果を自分の実績だけにとどめず、 美術館や人材育成、地域の活動へつなげていく姿勢が感じられました。
学生たちにとって、 研究者としての生き方だけでなく、 自分の力を社会や地域へどのように還元するかを 考える機会となりました。
地域の大きな資源は、そこで育った人でもある
景観や建物、農産物だけでなく、 地域で生まれ、学び、世界で活躍してきた人の経験も、 その土地にしかない大切な資源です。 人の歩みや思いを次世代へ伝えることが、 新しい挑戦を生み出すきっかけになります。
大村博士の生家で、地域の担い手と食卓を囲む
初日の夜は、 大村博士の生家であり宿泊場所でもある 螢雪寮で交流会が開かれました。
会場には、 大村博士のもとに韮崎をよりよくしたいという思いで集まった 「積み重ねの会」の皆さんが参加しました。
さらに、日中から同行してくださった山梨大学の学生や、 ミアキスでスタッフを務める大学生も加わりました。
参加した学生6名は、 それぞれ異なるテーブルに分かれ、 ほうとうなどの地域の料理を味わいながら、 地元の方とじっくり話しました。
リノベーション、宿泊、ワイン、子ども会、 建設、スポーツ、情報発信、教育など、 参加者が取り組む活動は多岐にわたります。
一人ひとりの活動は異なっていても、 韮崎をよりよくしたいという思いでつながっていることが、 会話を通して伝わってきました。

多様な活動を、まち全体の力へ変える
不動産、教育、農業、観光、スポーツ、文化など、 一人ひとりが異なる分野で活動していても、 互いの取り組みを知り、協力できる関係が生まれれば、 まち全体としてより大きな動きをつくることができます。
ワインを振る舞い、地域の活動を支える
2日目には、 韮崎中央商店街の入口にある Chance Centerを訪れました。
ここでは、韮崎市の地域おこし協力隊として活動する青山さんが、 自身で製造したワインを地域の方へ振る舞う 試飲会を開催しました。
学生たちは試飲会の運営を手伝い、 駅前で開催されていたイベント会場でも、 来場者へ声をかけました。
初めは声をかけることに緊張していた学生も、 通行する人の反応を見ながら、 声のかけ方や伝え方を少しずつ工夫していきました。

魅力があっても、伝わらなければ人は動かない
韮崎には、 ワイン、歴史、自然、研究者、個性的な店、 地域で活動する多様な人々がいます。
一方で、商店街を歩く人が少なく、 地域の魅力や活動が十分に知られていないという課題もあります。
良い商品や場所があるだけでなく、 誰に、どのような言葉で、 どのように届けるかを考える必要があります。
学生たちは、 実際に声をかけ、反応を受け取る経験から、 情報発信や集客も地域活動を支える重要な仕事であることを学びました。
地域の魅力を、外から見つけ、内外へ伝える
地域で暮らす人にとって当たり前になっている景色や人、活動も、 外から訪れた人には唯一無二の魅力として映ることがあります。 外からの視点で価値を見つけ、 地域の人と一緒に言葉にしていくことが、 新しい発信や事業の入口になります。
アメリカヤで、二日間の体験を振り返る
フィールドワークの最後には、 韮崎中央商店街にある「アメリカヤ」を見学し、 参加者全員で振り返りを行いました。
学生からは、 韮崎には歴史、自然、人物、商店街、ワインなど、 多くの魅力があるという声が挙がりました。
特に印象に残ったのは、 それぞれ異なる活動をしている地域の人々が、 韮崎への愛情や思いを共有していることです。
一方で、 魅力的な店舗が増えていても歩行者が少ないことや、 地域資源が十分に結びついていないことも 課題として挙げられました。
韮崎にある人、場所、活動を、 どのようにつなぎ、 市内外の人へ伝えていくのか。
学生たちは、 今回見つけた問いを、 次の調査や実践へつなげたいと考えました。
学生が現場から感じたこと
韮崎には、ほかに二つとない人物や景色、活動があります。 地域では当たり前に受け止められている魅力を、 内外の人へどのように伝えるか、 まだ多くの可能性があると感じました。
まちづくりに関わる方々は、 不動産、宿泊、ワイン、教育、スポーツなど、 それぞれ異なる活動をしていました。 その人たちがつながれば、 大きな動きが生まれる可能性を感じました。
新しい店が生まれている一方で、 商店街を歩く人が少ない現状も目の当たりにしました。 地域の魅力を生かすためには、 交通や人の流れまで含めて考える必要があると感じました。
ワイン試飲会の声かけでは、 無視されても続ける中で、 相手や状況に応じて伝え方を工夫できるようになりました。 自分から動くことで得られる学びを実感しました。
韮崎の歴史、地理、人物のつながりは、 現地で地域の方に話を聞かなければ分からないものでした。 自分の目で見て、体で感じることの重要性を学びました。
この活動から生まれたもの
OUTPUT|学生たちが形にした成果
- ニラサキヤの案内による韮崎中央商店街と周辺地域のまち歩き
- 韮崎の地形、歴史、商店街、不動産活用に関する学習
- 青少年育成プラザ Miacisの見学
- 中高生とのボードゲームを通じた交流
- 若者の居場所づくりに関する運営方法のヒアリング
- 韮崎大村美術館での大村智博士との約90分の対話
- 研究人生と故郷への地域還元に関する学習
- 螢雪寮での地域関係者・大学生との交流会
- Chance Centerでのワイン試飲会の運営補助
- 駅前イベントでの来場者への案内・声かけ
- アメリカヤの見学と全体振り返り
- 学生によるフィールドワーク報告書の作成
OUTCOME|学生と地域に生まれた変化
- 学生が韮崎を歴史、地理、人物、産業のつながりから理解した
- まちづくり会社が不動産事業を担う意義への理解が深まった
- 商店街のリノベーションと人通りの間にある課題に気づいた
- 若者の居場所には、空間だけでなく企画や人の関係が必要だと学んだ
- 大村智博士の研究人生と地域還元への思いに触れた
- 地域で活動する多様な担い手との関係が生まれた
- 地域の魅力は外からの視点によって再発見できると気づいた
- 魅力を伝えるための情報発信や声かけの重要性を学んだ
- 学生が自ら行動し、地域の活動へ参加する自信を得た
- 韮崎で次の調査や実践に取り組みたいという意識が生まれた
IMPACT|これから地域に育てていく可能性
- 韮崎の人物、場所、事業をつなぐ地域資源マップの作成
- 学生による商店街の人流・滞在・交通に関する継続調査
- 空き店舗と新しい担い手をつなぐ学生参加型の不動産活用
- ミアキスと大学生が連携した若者向けプログラムの形成
- 大村智博士の研究人生を題材とした次世代向け探究学習
- 研究者や地域出身者の経験を地域へ還元する仕組みづくり
- 地域の担い手と学生をつなぐ継続的な交流機会の創出
- ワイン、商店街、観光、食を組み合わせた地域体験の開発
- 地域の魅力を内外へ伝える学生視点の情報発信
- 公共交通と商店街の回遊を組み合わせた地域づくりの検討
- 韮崎を地域資源と人のつながりを学び、試すフィールドへ発展させる可能性
魅力ある人と資源を、まちの力へ変える
今回のフィールドワークでは、 韮崎に歴史、自然、商店街、ワイン、 研究者、若者の居場所、 多様な地域の担い手が存在することを学びました。
しかし、魅力的な資源があるだけで、 自然に地域の活性化へつながるわけではありません。
空き店舗と新しい事業者をつなぐ人、 若者が安心して過ごせる場を支える人、 研究の成果を地域へ還元する人、 地域の商品や活動を伝える人。
異なる役割を持つ人々がつながることで、 一つひとつの資源は、 まち全体の新しい価値へ変わっていきます。
地域の外から訪れた学生には、 地域の中では当たり前になっている魅力を見つけ、 新しい組み合わせや問いを提案できる可能性があります。
一度の訪問で答えを出すのではなく、 今回出会った人との関係を大切にしながら、 韮崎の魅力をつなぐ次の実践を考えていくこと。
それが、今回のフィールドワークから始まる 次のステップです。
東大生の挑戦に寄り添う、ミライクエストの伴走支援
本活動の企画、訪問、交流、運営補助を主体的に担ったのは、 東大生地方創生コンソーシアムの学生たちです。
学生自身が韮崎を歩き、 地域の方々に話を聞き、 若者との交流やワインイベントの運営に参加しながら、 地域の魅力と課題を自分たちの視点で捉えました。
ミライクエストは、 東大生地方創生コンソーシアムの共創パートナーとして、 学生たちの主体性を尊重しながら、 現場で得た学びが次の調査や実践へつながるよう伴走しています。
大切にしているのは、 ミライクエストが学生に答えを与えることではありません。
学生が自分自身の関心から問いを持ち、 地域の方との対話や活動を通して考えを深め、 自分たちの言葉で次の行動をつくれる環境を整えることです。
一度のフィールドワークを一過性の体験で終わらせず、 次の訪問、研究、実践、 地域との継続的な関係へつなげていくこと。
それが、ミライクエストの伴走支援の役割です。
地域と一緒に、人と事業を創る研究所
ミライクエストは、次世代、企業、行政、大学、地域をつなぎ、 現場で生まれた問いや学びを、 次の調査、実践、研究、事業へつなげていきます。
共創パートナー: ミライクエスト
実施期間: 2026年4月18日~4月19日
実施地域: 山梨県韮崎市
参加者: 東大生地方創生コンソーシアム所属学生6名
主な訪問先: 韮崎中央商店街、青少年育成プラザ Miacis、 韮崎大村美術館、螢雪寮、Chance Center、アメリカヤ