レポート

「take & take」から「give & take」へ|神奈川・三浦フィールドワーク2026

東京大学の学生6名が神奈川県三浦地域を訪れ、 マグロの流通、沿岸漁業、藻場再生、アオリイカの産卵環境、 地域の食や産官学連携について学びました。 海から資源を受け取るだけでなく、 海へ何を返していけるのかを考えた2日間です。 本記事では、東大生地方創生コンソーシアムの学生たちが 主体となって実施した活動を、 共創パートナーであるミライクエストの視点から紹介します。
ミライクエスト共創パートナー|伴走支援プロジェクト

プロジェクト概要

事業名
神奈川・三浦フィールドワーク2026
実施期間
2026年4月18日~4月19日
実施地域
神奈川県三浦地域
参加者
東京大学の学生6名、同行者1名
実施主体
東大生地方創生コンソーシアム
共創パートナー
ミライクエスト
主な訪問先
うらりマルシェ、城ヶ島、城ヶ島おさかな市場、 劔崎、浜諸磯、秋田家
主なテーマ
三浦の漁業、マグロ流通、藻場再生、 早熟カジメ、アオリイカの産卵床、 海洋環境、持続可能な漁業、産官学連携

今回のフィールドワークのテーマは、 「三浦地域の漁業を取り巻く今とリアルに触れる」ことです。

三浦といえば、 三崎のマグロや漁港、 城ヶ島の景観などが広く知られています。

多くの観光客が訪れ、 水産物や地域産品を楽しむ一方で、 その海では、水温上昇や藻場の減少、 漁獲環境の変化などが進んでいます。

学生たちは、 商品として並ぶ魚を見るだけでなく、 魚を扱う事業者、 海を守る漁師や活動団体、 研究者の話を聞き、 漁業と海洋環境の両面から三浦の現在を考えました。

うらりマルシェで、マグロが届くまでを知る

最初に訪れたのは、 三崎港に隣接する「うらりマルシェ」です。

参加者は昼食としてマグロ丼を味わい、 マルシェ内を見学しました。

店頭には、 マグロを中心とした水産物や加工品、 地域の農産物などが並んでいます。

学生たちは、マグロ卸業者の方から、 商品が店頭へ届くまでの流通や、 販売の現状について話を伺いました。

うらりマルシェでマグロ卸業者から説明を受ける学生
うらりマルシェで、マグロの流通や販売について卸業者の方から話を伺いました。

消費者の選択が、漁業の価格をつくる

私たちが店頭で商品を選ぶとき、 価格や見た目を基準にすることが多くあります。

しかし、その価格の背景には、 漁師、卸売、加工、流通、販売など、 多くの人の仕事があります。

参加者の振り返りでは、 流通の過程で漁業関係者へ 利益が十分に分配されていない現状を知り、 消費者としての選択にも責任があると感じたという声がありました。

うらりマルシェに並ぶ地域の水産物や加工品を見学する学生
店頭の商品や地域産品を見ながら、漁業と消費者をつなぐ流通の役割を考えました。

食べることも、地域の漁業への参加になる

どの商品を選び、 どの価格を適正だと考えるかは、 生産者や漁業者の仕事を支えることにつながります。 消費者も、食を通して漁業の未来に関わる一人です。

城ヶ島で、海を守る活動に参加する

午後には城ヶ島を訪れ、 FABOの活動について話を伺いました。

FABOは、三浦の海で、 藻場の回復や保全に取り組んでいます。

学生たちは、 養殖された早熟カジメを海へ植え付ける作業と、 アオリイカの産卵床をつくる作業に参加しました。

海の環境問題というと、 大規模で専門的な設備が必要だと感じるかもしれません。

しかし、現場で行われていたのは、 海藻を紐で固定し、 土嚢とともに海へ沈める作業や、 枝葉の付いた木材を浅瀬へ設置する作業でした。

城ヶ島でFABOの藻場保全活動について説明を受ける学生
FABOの皆さんから三浦の海の現状を聞き、早熟カジメの植え付けや産卵床づくりに参加しました。

早熟カジメを、変化する海へ植える

カジメは、沿岸の藻場を構成する海藻の一つです。

藻場は、 魚やイカなどの海洋生物が暮らし、 産卵し、成長する場所になります。

しかし、海水温の変化などによって、 従来の海藻が育ちにくくなることがあります。

FABOでは、 変化する環境へ適応しやすい早熟カジメを育て、 海へ植え付ける活動に取り組んでいました。

失われた状態をただ嘆くのではなく、 現在の海に適した新しい方法を探り、 実際の行動へ移す姿勢が、 学生たちの印象に残りました。

アオリイカが卵を産める場所をつくる

学生たちは、 アオリイカの産卵床づくりにも参加しました。

枝葉の付いた木材を海へ沈めることで、 イカが卵を産み付けやすい環境をつくります。

藻場や海中の構造物が失われれば、 生物が産卵し、次の世代を育てる場所も減少します。

産卵床づくりは、 生物を直接増やすのではなく、 生物が自ら命をつなげる環境を整える活動です。

城ヶ島の海岸で海洋環境や植生を観察する学生
城ヶ島の海岸を歩きながら、海と陸の環境、生物が暮らす場所について観察しました。

「take & take」から「give & take」へ

海から魚や資源を得るだけではなく、 海藻を育て、 産卵できる場所をつくり、 海へ環境を返していく。 海から受け取ることと、 海へ与えることを両立させる考え方が、 持続可能な漁業の土台になります。

専門家でなくても、海へできることがある

参加者からは、 藻場再生の作業が、 想像していたよりも取り組みやすかったという声がありました。

専門知識が必要な調査や研究はありますが、 現場で海藻を固定したり、 産卵床を設置したりする作業には、 市民や学生が参加できる部分もあります。

海洋環境の問題を、 研究者や漁師だけの課題にせず、 地域、企業、学生、市民が関われる活動へ広げることが重要です。

一つひとつの活動は小さく見えても、 継続し、他地域へ広がれば、 海の環境を回復する大きな力になる可能性があります。

城ヶ島おさかな市場で、地域の漁業を見る

城ヶ島おさかな市場では、 生簀に入った魚や販売されている商品を見ながら、 働く方へ話を伺いました。

海で獲れた魚が、 どのように保管され、 店頭へ並び、 消費者へ届けられるのか。

うらりマルシェで見たマグロ流通とは異なる、 地域の魚と販売現場の関係に触れました。

城ヶ島おさかな市場の生簀や商品を見学する学生
生簀の魚や店頭の商品を見ながら、地域の漁業と販売の現場について話を伺いました。

劔崎と浜諸磯を歩き、三浦の景観を味わう

その後、参加者は二つのグループに分かれ、 劔崎と浜諸磯を散策しました。

三浦の魅力は、 水産業や観光施設だけではありません。

海岸線、岩場、海の色、 風や空気を自分の身体で感じることで、 海洋環境を守る意味がより具体的になります。

景観を楽しむ観光と、 海の生態系を守る活動は、 別々のものではありません。

豊かな自然環境があるからこそ、 人が訪れ、 地域の食や文化にも関心が広がります。

地魚を囲み、産官学連携について考える

夜には秋田家で地魚を味わいながら、 東京大学の潮教授から話を伺いました。

三浦の海業、 海洋環境、 大学と地域の連携など、 幅広いテーマについて意見を交わしました。

現場で海藻を植え、 市場で魚を見た後に、 地域の魚を食べながら専門家の話を聞く。

体験、食、対話がつながることで、 海洋環境や漁業を、 自分の暮らしと関係する問題として考える時間となりました。

秋田家で地魚を囲みながら海業と産官学連携について意見交換する学生
地魚を味わいながら、潮教授と三浦の海業、環境、産官学連携について意見交換しました。

海の課題は、文系・理系を越えて考えるテーマ

海洋環境の研究だけでなく、 流通、消費、観光、教育、地域経済、政策など、 多様な分野が海と関わっています。 地域に根差した活動は、 文系・理系を越えた壮大な共創のテーマです。

学生が現場から感じたこと

三浦の観光の賑わいは、 地域の方、企業、大学や研究機関による 海の環境を守る取り組みに支えられていると感じました。

環境問題が起きた事実にとどまらず、 変化した海に合わせて新しい方法を考え、 実際に形にしている姿勢が印象に残りました。

漁師の方と直接話し、 流通を通してしか見えていなかった 漁業の実態に触れることができました。

海藻を土嚢とともに海へ沈める方法や、 枝葉を使ったイカの産卵床づくりなど、 シンプルな方法でも環境回復へつながることに驚きました。

頭で海の現状を学ぶだけでなく、 体を使って保全活動に参加し、 自分が海へ何を返せるのかを考える機会になりました。

「take & take」ではなく、 「give & take」という考え方から、 持続可能な漁業について考えました。

この活動から生まれたもの

OUTPUT|学生たちが形にした成果

  • うらりマルシェでの水産物・地域産品の見学
  • マグロ卸業者への流通・販売に関するヒアリング
  • FABOの藻場回復・保全活動に関するヒアリング
  • 早熟カジメの植え付け作業への参加
  • アオリイカの産卵床づくりへの参加
  • 城ヶ島の海岸環境と景観の観察
  • 城ヶ島おさかな市場での生簀・販売商品の見学
  • 市場で働く方への地域漁業に関するヒアリング
  • 劔崎・浜諸磯のフィールド散策
  • 地魚を囲んだ海業・環境・産官学連携に関する意見交換
  • 参加学生によるフィールドワーク報告書の作成

OUTCOME|学生と地域に生まれた変化

  • 学生が観光と漁業、海洋環境のつながりを理解した
  • 水温上昇や藻場減少が漁業へ与える影響への理解が深まった
  • 環境変化へ適応する新しい養殖・保全手法を知った
  • 専門家でなくても参加できる海洋保全活動があると気づいた
  • 漁業を流通・消費まで含めた構造として捉えるようになった
  • 消費者の選択が漁業者の収益に関係するという意識が生まれた
  • 地域課題には文系・理系を越えた多様な関わり方があると学んだ
  • 学生が環境分野や将来の進路について考える機会になった
  • 三浦の海を守る活動を身近な人へ伝えたいという意識が生まれた

IMPACT|これから地域に育てていく可能性

  • 学生や市民が参加できる藻場再生体験プログラムの形成
  • 早熟カジメを活用した環境変化に強い藻場づくり
  • アオリイカの産卵床設置活動の継続と他地域への展開
  • 漁師、研究者、行政、企業、学生の連携強化
  • 海洋保全活動と観光・環境教育を組み合わせた海業の展開
  • 消費者へ漁業・流通の背景を伝える情報発信の充実
  • 適正な価格で地魚を届ける地域流通モデルの検討
  • 大学生による継続的な海洋環境調査と現場参加
  • 海から得るだけでなく、海へ価値を返す地域文化の形成
  • 三浦を持続可能な漁業と海洋保全を学ぶフィールドへ発展させる可能性

失われた海を嘆くのではなく、未来の海をつくる

今回のフィールドワークでは、 三浦の活気ある観光や水産物の背景に、 海の環境を守る地道な活動があることを学びました。

海水温が変化し、 従来の海藻が育ちにくくなっている。

魚やイカが生まれ育つ場所が減っている。

その現実を知ることは重要です。

しかし、FABOの活動が示していたのは、 失われたものだけを見るのではなく、 今の海へ適応する方法を考え、 手を動かして未来の環境をつくる姿勢でした。

海藻を植え、 産卵場所をつくり、 魚を適正な価格で消費者へ届ける。

海、漁業、流通、消費をつなぎ直し、 海から受け取るだけではなく、 海へ価値を返していく。

今回の活動は、 「take & take」から「give & take」へ進む 三浦の漁業と海業の可能性を考える機会となりました。

東大生の挑戦に寄り添う、ミライクエストの伴走支援

本活動の現地訪問、作業、ヒアリング、振り返りを 主体的に担ったのは、 東大生地方創生コンソーシアムの学生たちです。

学生自身が三浦の海へ入り、 漁業者、事業者、環境保全団体、研究者と出会い、 頭と体の両方を使って海の未来を考えました。

ミライクエストは、 東大生地方創生コンソーシアムの共創パートナーとして、 学生たちの主体性を尊重しながら、 現場で得た学びが次の調査、実践、研究へつながるよう伴走しています。

大切にしているのは、 ミライクエストが学生へ答えを与えることではありません。

学生が自ら地域へ入り、 現場の事実に触れ、 地域の方の思いを聞き、 自分に何ができるのかを考えられる環境を整えることです。

一度のフィールドワークを一過性の体験で終わらせず、 次の訪問、情報発信、研究、 海洋保全活動への参加へつなげていくこと。

それが、ミライクエストの伴走支援の役割です。

地域と一緒に、人と事業を創る研究所

ミライクエストは、次世代、企業、行政、大学、地域をつなぎ、 現場で生まれた問いや学びを、 次の調査、実践、研究、事業へつなげていきます。

実施主体: 東大生地方創生コンソーシアム
共創パートナー: ミライクエスト
実施期間: 2026年4月18日~4月19日
実施地域: 神奈川県三浦地域
参加者: 東京大学の学生6名、同行者1名
主な活動: マグロ流通のヒアリング、 早熟カジメの植え付け、 アオリイカの産卵床づくり、 魚市場見学、海岸散策、 海業・産官学連携に関する意見交換

東大生地方創生コンソーシアムについて

地域に関心を持つ東京大学の学生がつながり、 全国各地の現場に入りながら、 調査・実践・提案に取り組んでいます。

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