プロジェクト概要
- 事業名
- 東京大学体験活動プログラム 「東京飽きたへん?鳥取来てごしないや」
- 実施期間
- 2025年9月18日~9月21日
- 実施地域
- 鳥取県米子市・大山町
- 参加者
- 東京大学学部生・大学院生 5名
- 実施主体
- 東大生地方創生コンソーシアム
- 共創パートナー
- ミライクエスト
- 主な訪問先
- 米子市役所、米子城跡、大山町役場、 わたげ荘、國吉農園、大山寺、御来屋、 美保テクノスほか
- 主なテーマ
- 地域のファンづくり、人とのつながり、 五感で感じる地域の魅力、行政、農業、 自然、観光、関係人口
地域を訪れ、 魅力や課題を調査し、 解決策を提案する。
地方創生のフィールドワークでは、 そのような流れが重視されることがあります。
しかし、地域を十分に知らないまま、 外から来た人がすぐに課題や答えを語ることはできません。
今回のプログラムでは、 地域へ貢献する存在になるための前段階として、 まず米子・大山の魅力を体感し、 地域の方々の思いや価値観に触れ、 「人に会いに帰ってきたい」と思える関係をつくることを目指しました。
課題を探す前に、地域を好きになる
地域に深く関わるためには、 課題や施策だけでなく、 そこに暮らす人や日常を知ることが必要です。 地域のファンになることは、 継続的な関わりや貢献へ進むための大切な入口です。
米子市役所で、地域の現在を知る
初日は、米子市役所を訪問しました。
伊木市長から挨拶をいただき、 米子市の概況について説明を受けた後、 参加者が関心を持っていた教育、DX、観光などの 具体的な施策について話を伺いました。
全体説明の後には、 市役所職員との座談会も行われました。
米子で暮らすとはどのようなことか、 行政の中でDXはどのように進められているのか。
制度の説明だけでなく、 職員の方々の実感や率直な話を聞くことで、 地域の行政を身近なものとして捉えることができました。

紹介された場所へ、自分たちの足で行ってみる
市役所で観光地として紹介された米子城跡へ、 参加者全員で歩いて向かいました。
当日は曇っていたため、 期待していた夕陽を見ることはできませんでした。
それでも、城跡からは、 中海と日本海に挟まれた米子市街を 広く見渡すことができました。
説明を聞くだけでなく、 実際に歩き、坂を上り、 自分の目で街を見る。
地図や資料では分からない、 米子の地形や海との距離を体感しました。

地域で働く人の、思いや価値観に触れる
初日の夜には、 米子の商店街にあるカフェ「みっくす」で、 地域の事業者約10名とのごはん会を行いました。
高校生から年配の方まで、 幅広い世代の方々が集まりました。
どのような事業を行っているかだけではなく、 なぜその仕事をしているのか、 どのような価値観を大切にしているのかを語り合いました。
地域の魅力は、 観光名所や特産品だけでつくられるものではありません。
そこで暮らし、 自分の思いから仕事や活動を生み出している 一人ひとりの存在も、地域の大切な魅力です。

事業ではなく、人に会いに帰ってくる
地域との継続的な関係を生み出すのは、 有名な場所やイベントだけではありません。 「あの人にもう一度会いたい」という気持ちが、 再訪や新しい活動のきっかけになります。
大山町役場で、地域の魅力を一緒に考える
2日目は、山陰線で米子市から大山町へ移動しました。
大山町役場では、 竹口町長から大山町の概況について 熱のこもった説明を受けました。
特に、大山町独自の英語教育に 関心を持つ参加者が多くいました。
後半には、役場職員の方々とグループに分かれ、 参加者が事前課題で調べた 「大山町の魅力」について話し合いました。
教育や観光など、 外から見て魅力だと感じたものと、 地域の方が捉えている現状を照らし合わせました。

まちづくりプレイヤーと過ごす、余白の時間
大山町では、 シェア別荘「わたげ荘」を訪れました。
元地域おこし協力隊で、 大山町のまちづくりプレイヤーとして活動する 「まーしーさん」と昼食を囲みました。
地域での活動や暮らしについて話を聞くだけでなく、 大山町のオリジナルゲームで遊び、 周辺を自由に散策しました。
あらかじめ決められた学習だけではなく、 地域の方と同じ場所でゆっくり過ごす時間からも、 人柄や土地の空気が伝わってきます。
國吉農園で、農業の大変さと楽しさを味わう
午後には、 無農薬で農業を行う國吉農園を訪れました。
元地域おこし協力隊で、 國吉農園の代表を務める國吉美貴さんから話を伺いながら、 里芋掘りと、ねぎ畑の雑草刈りを手伝いました。
農薬を使わずに育てる畑では、 雑草を人の手で取り除く作業が欠かせません。
土に触れ、 作物を掘り出し、 手を動かすことで、 農業の大変さと収穫の楽しさを体感しました。
農園で働く方々の年齢層が若かったことも、 参加者にとって印象的でした。

地域で働く若い世代の姿が、選択肢を広げる
地方で働くことは、 都会での仕事を諦めることではありません。 自分の関心や価値観を生かしながら、 農業やまちづくりへ挑戦する若い世代との出会いは、 学生の進路や生き方の選択肢を広げます。
満天の星空の下で、仲間と過ごす
2日目の宿泊先は、 一面に芝生が広がるグランピング施設「トマシバ」です。
夜には、日本海の漁火と 満天の星空を楽しみました。
東京では、 空のどこを見ても星があるような風景を 体験することは多くありません。
芝生に寝転び、 仲間と話しながら空を見上げた時間は、 多くの参加者にとって特に印象深い体験となりました。

山と海の近さを、歩いて感じる
3日目は、 大山町役場の職員の方とともに、 大山の中腹や大山寺周辺を散策しました。
大山自然歴史館では、 大山が神聖な山として大切にされてきた歴史や、 豊かな生態系について学びました。
その後、日本海を眺められる御厨地区へ移動しました。
山の自然を歩いた後、 短い移動で海の風景へ出会える。
大山町では、 山と海が非常に近い距離にあることを、 身体で感じることができます。

観光地ではない日常を歩く
午後には、御来屋周辺を散策しました。
地域おこしにも力を入れるオーナーが営む Kazy Coffeeや、 後醍醐天皇ゆかりの名和神社、 御来屋の海などを訪れました。
有名な観光地を効率よく巡るのではなく、 町を歩き、 気になる場所へ立ち寄り、 その地域に流れるゆったりとした時間を味わう。
参加者は、 地域の何気ない風景や空気そのものに 魅力があることに気づきました。
地域からいただいた野菜を、自分たちで料理する
3日目の夕食には、 國吉農園からいただいた野菜を使いました。
参加者自身が、 具だくさんのカレー、豚汁、 麻婆茄子などを調理しました。
マコモダケなど、 初めて食べる食材もありました。
生産者と出会い、 畑を手伝い、 そこで育った野菜を仲間と料理して食べる。
食材の背景を知ることで、 食事は単なる栄養補給ではなく、 地域との関係を深める時間になります。

3日間で見つけた「ワクワク」を言葉にする
夕食後には、 3日間で見つけた「ワクワク」や「気づき」を、 付箋に書き出しました。
地域の有名な観光資源だけではなく、 道端で見つけたもの、 人との会話、 空気、風、匂い、 地域独特のゆっくりした時間など、 小さな発見が多く挙げられました。
参加者には、 それまで最終発表の内容を知らせていませんでした。
発表を意識して体験を評価するのではなく、 まず地域での時間を素直に楽しみ、 心が動いた瞬間を集めることを大切にしたためです。
地域の魅力は、用意された答えの中にない
有名な観光地や統計だけではなく、 自分が心を動かされた瞬間を丁寧に振り返ることで、 その人にしか見つけられない地域の魅力が見えてきます。
地域の方と一緒に、ファンを増やす方法を考える
最終日は、美保テクノスの会議室で ワークショップと発表会を行いました。
3日間で交流した行政や事業者の方々にも参加いただき、 学生一人と地域の方3人による 4人グループをつくりました。
学生が見つけた「ワクワク」を起点に、 なぜその体験が魅力的だったのかを深掘りし、 米子・大山のファンを増やすためのアイデアへ発展させました。

人の存在を感じる冒険
参加者の一人は、 大山の人との距離感を 「人が遠くて近い」と表現しました。
人の姿は多くない一方で、 道端に置かれたスイカや、 小学生からの挨拶など、 何気ない場面から人の存在と温かさを感じたといいます。
その気づきから、 観光地ではない普通の町を歩き、 地域の人と出会うスタンプラリーのような 「人の存在を感じる冒険」が提案されました。
五感で地域を味わう「目隠し観光」
別の参加者が特に印象に残ったと語ったのが、 地域の「匂い」です。
稲の香り、 熱を持ったアスファルト、 遠くから漂う焼畑のような匂い。
映像や写真では再現できない感覚が、 その場所にいる実感をつくっていました。
そこから、 視覚に頼らず匂いや音、風を味わう 「目隠し観光」というユニークなアイデアも生まれました。
農作業と宿泊を組み合わせる
農作業を手伝う代わりに、 大学生が手頃な価格で地域へ滞在できる プログラムも提案されました。
農家の人手を支えながら、 学生は地域の仕事と暮らしを知ることができます。
一度の観光ではなく、 地域の人と一緒に働き、 生活する時間をつくることで、 より深い関係へつながる可能性があります。
人とのつながりを「第六感」として伝える
米子・大山には、 山、海、空、風、音、匂いがあります。 そこに、人との距離の近さや温かさを加えれば、 五感を超えた「人間の六感」を感じられる地域として、 独自の魅力を発信できるかもしれません。
学生たちに生まれた変化
活動後の報告では、 参加者の地方に対する見方が、 漠然としたイメージから 「具体的で生きた現場」へ変わったことが示されました。
行政の仕事を知り、 政策立案に関心を持った学生。
地方創生と関わる形で、 自分の進路を見直そうと考えた学生。
地域で出会った人の温かさや、 自然とともにある暮らしを、 自分の生き方へ取り入れたいと考えた学生。
5名全員が、 「今回の活動は、今後自分の将来に何らかの形で役立つ」 という質問に、5段階評価で最高の5をつけました。
人の姿は少なくても、一人ひとりの存在や温かさを強く感じました。
山と海が近く、雲や風、空気まで都会とは違う距離で感じられました。
写真では伝わらない匂いや温度が、もう一度この町へ来たいという気持ちにつながりました。
初対面の仲間と3泊4日を過ごし、最後には安心して自分の考えを話せる関係になりました。
この活動から生まれたもの
OUTPUT|学生たちが形にした成果
- 米子市長・市職員への教育、DX、観光に関するヒアリング
- 米子城跡からの市街地・中海・日本海の観察
- 米子の地域事業者約10名との交流会
- 大山町長による町の概況説明
- 大山町役場職員との教育・観光に関するグループ対話
- 地域おこし協力隊経験者・まちづくりプレイヤーとの交流
- 國吉農園での里芋掘りと雑草刈り
- 大山寺・大山自然歴史館の訪問
- 御来屋地区、名和神社、地域店舗、海岸の散策
- 地域産野菜を使った夕食づくり
- 付箋を使った「ワクワク」と「気づき」の可視化
- 地域関係者とのファンづくりワークショップ
- 人との出会い、五感、農業体験を軸とした施策提案
- フィールドワーク報告書の作成
OUTCOME|学生と地域に生まれた変化
- 学生の地方に対する見方が、抽象的な印象から具体的な体験へ変わった
- 行政施策を職員や市長・町長の思いとともに理解した
- 地域で働く人の価値観や生き方への理解が深まった
- 農作業を通して地域産業の大変さと楽しさを体感した
- 地域の魅力を視覚だけでなく、匂い、風、音、温度から捉えるようになった
- 観光地だけではない日常の風景に価値を見つけた
- 初対面の学生同士に信頼関係が生まれた
- 地域の人との距離の近さが再訪したい気持ちにつながった
- 学生の進路や政策・地方創生への関心が広がった
- 地域の方が学生の視点から地域の魅力を見直す機会になった
IMPACT|これから地域に育てていく可能性
- 「人に会いに帰ってくる」関係人口づくり
- 地域住民との出会いを中心にしたまち歩きプログラムの形成
- 匂い、風、音、温度を生かした五感型観光の開発
- 人とのつながりを含む「六感で感じる地域」という発信
- 農作業と滞在を組み合わせた大学生向けプログラムの展開
- 学生の体験記を活用した感情に届く情報発信
- 行政・事業者・農業者と大学生による継続的な対話の場づくり
- 地域で活動する若い世代と都市部の学生をつなぐ仕組みの形成
- 学生が繰り返し地域へ戻り、活動へ参加する関係の構築
- 米子・大山を地域との関係を育てる学びのフィールドへ発展させる可能性
企画を通して見えた、次への課題
体験を、より深い関係と地域への還元へ
報告書では、今回の成果だけでなく、 次回へ向けた課題も率直に整理されています。
3泊4日で多くの方と出会えた一方、 それぞれの交流が単発的となり、 一人ひとりと深い関係を築く時間は限られていました。
また、「米子・大山のファンになる」というテーマが広いため、 最終日の議論で目標を定めにくいという課題もありました。
今後は、関わる地域の方を絞り、 同じ方と数日間をともに過ごすことや、 学生の楽しさだけでなく、 地域へ何を還元するのかを最初から設計することが重要です。
「地域を知る」から、「地域のファン」へ
今回のフィールドワークでは、 地域の課題に対する完成した解決策を つくることを目的にしませんでした。
米子・大山を歩き、 地域の方と食事をし、 畑で作業し、 山と海を眺め、 仲間と同じ場所で生活する。
その中で、 写真や資料では伝わらない 人の温かさ、匂い、風、音、空気を感じました。
地域への貢献は、 地域を好きになり、 もう一度訪れたいと思うことから始まります。
「人に会いに帰ってくる」。
今回の4日間は、 学生たちが米子・大山との 長い関係を始めるための入口となりました。

MEDIA|新聞・テレビで紹介されました
本活動は、日本海新聞2025年9月20日号および 中海テレビで紹介されました。
※新聞記事の著作権に配慮し、紙面画像の掲載は控えています。
東大生の挑戦に寄り添う、ミライクエストの伴走支援
本活動の企画、現地調整、運営、振り返り、 最終ワークショップを主体的に担ったのは、 東大生地方創生コンソーシアムの学生たちです。
学生自身が地域との接点をつくり、 参加者と地域の方が自然に交流できる4日間を設計しました。
ミライクエストは、 東大生地方創生コンソーシアムの共創パートナーとして、 学生たちの主体性を尊重しながら、 活動が次の調査、実践、地域との継続的な関係へつながるよう 伴走しています。
大切にしているのは、 ミライクエストが地域課題の答えを与えることではありません。
学生が地域へ入り、 人と出会い、 自分の心が動いた理由を考え、 次の関わり方を自分たちでつくれる環境を整えることです。
地域を知ることから、 地域のファンになることへ。
そして、いつか地域とともに行動する 「貢献者」へ進んでいくこと。
それが、ミライクエストの伴走支援の役割です。
地域と一緒に、人と事業を創る研究所
ミライクエストは、次世代、企業、行政、大学、地域をつなぎ、 現場で生まれた問いや学びを、 次の調査、実践、研究、事業へつなげていきます。
実施主体: 東大生地方創生コンソーシアム
共創パートナー: ミライクエスト
実施期間: 2025年9月18日~9月21日
実施地域: 鳥取県米子市・大山町
参加者: 東京大学学部生・大学院生5名
主な活動: 行政訪問、地域事業者との交流、農業体験、 大山寺・御来屋散策、地域食材の調理、 ファンづくりワークショップ