プロジェクト概要
- 事業名
- 三浦ワーキングホリデー2025
- 実施期間
- 2025年9月2日~9月16日
- 実施地域
- 神奈川県三浦市を中心とした三浦半島周辺
- 参加者
- 東京大学学部1年生 3名
- 実施主体
- 東大生地方創生コンソーシアム 三浦プロジェクトチーム
- 共創パートナー
- ミライクエスト
- 主な協力
- ミウラプロジェクト、三浦市、漁業関係者、 水産・海洋関係機関、地域事業者ほか
- 主なテーマ
- 海業、沿岸漁業、藻場再生、海洋環境、 マリンレジャー、食、観光、地域産業
三浦市は、東京から近い海辺の地域でありながら、 漁業、マグロ、水産流通、マリンレジャー、 商店街、観光など、多様な産業が重なっています。
また、海を活用して地域に雇用や所得を生み出す 「海業」という言葉の発祥地でもあります。
今回のワーキングホリデーでは、 学生たちが地域に宿泊しながら、 行政、漁師、企業、研究機関、商店、 マリンレジャー事業者などを訪問しました。
話を聞くだけではなく、 実際に漁船へ乗り、 刺し網漁を体験し、 朝市や港の人の動きを観察し、 海藻や水産資源の育成現場にも入りました。
「海業」とは何かを、地域の現場から考える
活動初日には、 三浦市の担当者から、 海業が生まれた歴史的背景と、 現在の取り組みや課題について話を伺いました。
海業は、 漁業だけを指す言葉ではありません。
漁港、水産物、飲食、観光、 宿泊、体験、マリンレジャーなどをつなぎ、 海を中心に地域で新しい経済活動を生み出す考え方です。
一方で、行政、漁業者、企業、観光事業者、住民では、 海に求める価値や優先順位が異なります。
学生たちは、海業を単独の事業としてではなく、 多様な関係者によって構成される 地域全体の仕組みとして捉え始めました。

海業は、海に関わる人と産業をつなぐ考え方
漁業、観光、食、宿泊、レジャーを 個別に発展させるだけではなく、 海という共通の資源を中心に、 地域内で価値と所得が循環する仕組みをつくる。 そのためには、産業を越えた対話と連携が欠かせません。
港、船、食から見る新しい海のビジネス
初日には、港や船に関わる事業者からも 海を活用した新しいビジネスについて話を伺いました。
富裕層向けの船や、 海上で地域の食を楽しむガストロノミー企画など、 海の価値を高付加価値な体験へ変える可能性があります。
港は、魚を水揚げするだけの場所ではありません。
船、食、観光、宿泊、体験を組み合わせることで、 地域へ長く滞在してもらい、 地域内での消費を増やす拠点にもなります。

マグロの価値を守る、冷凍と流通の技術
三浦の海業を考えるうえで、 三崎のマグロ産業も重要な地域資源です。
学生たちは、マグロを扱う事業者を訪れ、 冷凍倉庫や保管設備を見学しました。
マグロは、漁獲された後の温度管理によって、 品質や商品価値が大きく変わります。
超低温で保存することで、 鮮度、色、食感を維持し、 必要な時期に必要な市場へ供給できます。
地域の海で獲れたものを 高い価値のまま消費者へ届けるためには、 漁業だけでなく、 保存、加工、流通、販売までを一体で考える必要があります。


海を科学の視点から見る
神奈川県水産技術センターでは、 三浦半島の水産業と海洋環境について話を伺いました。
海の水温、水質、潮流、 魚や海藻の生育状況は、 漁業の成果に直接影響します。
しかし、海の中の変化は、 陸上からは簡単に見えません。
調査、研究、種苗生産、 海藻や水産生物の育成を通して、 海の状態を継続的に把握する必要があります。

海藻を育て、海へ戻す技術
施設では、 海藻を水槽で育てる設備も見学しました。
海藻の種苗を安定して育て、 成長した海藻を海へ移すことは、 藻場再生へつながる取り組みの一つです。
学生たちは、 水槽内の海藻や育成器具に触れながら、 海洋環境の再生には、 長期的な研究と地道な作業が必要であることを学びました。



漁業の課題は、漁師だけでは解決できない
魚が減る背景には、 水温、海流、海藻、沿岸開発、 気候変動など複数の要因があります。 漁師、行政、研究者、企業、市民が、 それぞれの知識と役割を持ち寄る必要があります。
早朝の海へ出て、刺し網漁を体験する
ワーキングホリデーの大きな特徴が、 漁師とともに船へ乗り、 実際の漁を体験したことです。
学生たちは早朝に出港し、 刺し網を引き上げる作業や、 網にかかった魚や伊勢海老を外す作業を体験しました。
海況や天候によっては、 出港できないこともあります。
漁に出ても、 必ず十分な魚が獲れるとは限りません。
収入が海の状態に左右される不安定さ、 早朝からの作業、 船上での安全確保、 網の手入れなど、 漁業の厳しい現実を身体で理解しました。

海の資源が減ることは、地域全体の問題
漁獲量が減れば、 漁師の収入が減少します。
地魚を扱う飲食店や直売所、 観光客向けの商品や体験にも影響します。
漁業人口が減り、 次の担い手が入れなくなれば、 地域の文化や知識も失われていきます。
学生たちは、 海の豊かさを回復することが、 漁業だけでなく、 食、観光、地域経済の土台になると考えました。
三崎朝市で、食と人の流れを調べる
早朝には、三崎朝市を訪れ、 集客状況や来場者の特徴を調査しました。
駐車場のナンバープレートから、 来場者がどの地域から訪れているかを確認し、 会場内の人の動きや販売商品を観察しました。
朝市では、 魚介類、加工品、惣菜など、 三浦らしい食が販売されています。
地域の食を直接購入できる場は、 生産者や事業者の収入だけでなく、 観光客と地域をつなぐ接点にもなります。

地域資源を、来訪する理由へ変える
魚や農産物があるだけでは、 地域への来訪や消費にはつながりません。 朝市、飲食店、体験、情報発信を組み合わせ、 「ここで買いたい」「ここで食べたい」と思える理由を つくることが重要です。
地域の店や暮らしから、海業の広がりを見る
滞在中は、 地元の飲食店、パン店、ジェラート店、 商店街の関係者なども訪ねました。
地元産の魚や野菜を使った料理、 地域に根づいた個人商店、 観光客と住民が行き交う街並みも、 海業を構成する大切な要素です。
また、地域の方と食卓を囲み、 活動内容を共有しながら意見交換を行いました。
公式なヒアリングだけでなく、 移動中の会話や食事の時間からも、 地域の人間関係や価値観が見えてきました。
藻場再生の現場を見る
滞在終盤には、 城ヶ島周辺で行われている 藻場保全・再生活動を見学しました。
藻場は、 魚や海洋生物が産卵し、 稚魚が育つ場所です。
海藻が減少すると、 魚が暮らせる環境も失われ、 沿岸漁業へ影響します。
現場では、ダイバー、地域関係者、 企業など、さまざまな立場の人が活動に参加していました。


活動はある。しかし、つながっていない
三浦や相模湾周辺では、 藻場再生に取り組む複数の団体や活動があります。
一方で、それぞれの活動が個別に進められ、 人材、資金、研究成果、技術が 十分に共有されていないという課題があります。
活動の社会的認知もまだ高いとはいえず、 継続的な資金や参加者を確保することが難しい状況です。
海を守る活動を、地域経済の土台にする
藻場再生は環境保全だけを目的とする活動ではありません。 魚が育つ海を取り戻すことは、 漁業、食、観光、教育、マリンレジャーの 持続可能性を高めることにもつながります。
14日間の体験を、構造として整理する
学生たちは、漁師、漁協、行政、 企業、研究者、商店、観光事業者など、 多くの関係者から話を聞きました。
それぞれの立場には、 異なる課題と目標があります。
漁師は、海の資源と生活を守りたい。
行政は、地域全体の利益や制度を考える必要があります。
企業は、事業として継続できる収益性を求めます。
観光事業者は、 地域へ人を呼び、滞在や消費を増やしたいと考えます。
学生たちは、 誰か一人の意見だけで結論を出すのではなく、 多様な情報を整理し、 海業全体の構造を図として表現しました。
提言|藻場再生に取り組む団体をつなぐ
最終的に学生たちが提案したのが、 「藻場再生プロジェクトの加速」です。
現在、藻場再生の活動には、 資金、人員、研究者の不足、 団体間の連携不足、 社会的認知の低さなどの課題があります。
そこで、相模湾全域、 将来的には全国で藻場再生に取り組む団体をつなぐ 「連合体」の設立を提案しました。
各団体の活動を束ねることで、 技術や知識を共有し、 資材調達などのコストを抑え、 企業や行政からの支援を受けやすくします。
また、漁師、研究者、企業、市民、 マリンレジャー事業者が対話できる場をつくり、 海の再生を共通の目標として 連携を進めることを目指します。
三浦から、循環型の海辺のまちへ
藻場が回復し、 魚が育つ海が戻れば、 漁師は持続的に地魚を供給できるようになります。
地魚を飲食店や宿泊施設で提供し、 地域の商品として発信することで、 食と観光の価値も高まります。
漁業、飲食、観光、教育、環境保全がつながり、 地域の中で価値が循環する。
学生たちは、 藻場再生を起点とした 「三浦から循環型都市モデルを構築する」 という未来像を描きました。
地域の方々へ、最終提言を発表
9月16日には、 14日間の調査と体験をまとめた最終発表を行いました。
会場には、漁業、行政、研究、 企業、地域活動などに関わる約20名が参加しました。
学生たちは、 「マリンレジャー」 「街並み・食」 「沿岸漁師」 「豊かな生物の存在する海」という 四つの視点から、 三浦の海業を整理しました。
約2時間にわたり、 発表と質疑、意見交換が行われました。


異なる立場の人が、同じ場で話すきっかけ
地域課題は、 一つの立場だけでは解決できません。 学生の発表が、漁師、行政、企業、研究者など、 普段は異なる場所で活動する人々が 意見を交わすきっかけとなりました。
学生たちに生まれた学びと変化
実際に漁へ出たことで、 漁業の不安定さや過酷さ、 他の仕事にはない特殊性を具体的に理解できました。
漁師、漁協、市、県、企業など、 それぞれが異なる目標や事情を持っていることが、 地域課題の複雑さにつながっていると感じました。
自分たちでヒアリング先を開拓し、 関心のあることを深く探究する主体性が身につきました。
早朝の漁港の光や海、 地域の方や仲間と食卓を囲んで話す時間が、 特に大切な経験として残りました。
今回の体験を通して、 海や水産業への関心が生まれ、 今後の進路や研究分野の選択肢が広がりました。
この活動から生まれたもの
OUTPUT|学生たちが形にした成果
- 三浦市における海業の歴史と政策に関するヒアリング
- 港、造船、マグロ冷凍・流通事業の現場調査
- 神奈川県水産技術センターでの水産業・海洋環境調査
- 水産資源と海藻の育成設備の見学・体験
- 刺し網漁、伊勢海老漁、漁網の手入れの体験
- 漁師、漁協、行政、企業、研究者へのヒアリング
- 三崎朝市の集客状況と来場者属性の調査
- 飲食店、商店、観光・マリンレジャー事業者の訪問
- 城ヶ島周辺の藻場保全・再生活動の見学
- 海業を四つの側面から整理した構造分析
- 藻場再生団体をつなぐ連合体構想の提案
- 地域関係者約20名へ向けた最終発表と意見交換
- 三浦ワーキングホリデー実績報告書の作成
OUTCOME|学生と地域に生まれた変化
- 学生が海業を複数の産業と関係者による構造として理解した
- 沿岸漁業の労働環境、収入、担い手不足への理解が深まった
- 海洋資源の減少が食・観光・地域経済へ及ぼす影響を学んだ
- 藻場再生が漁業再生の基盤になるという視点を得た
- 行政、漁師、企業、研究者の利害や役割の違いを理解した
- 学生が自ら訪問先を開拓し、調査を進める主体性を身につけた
- 大量の情報を整理し、構造化して伝える経験を得た
- 共同生活を通して、他者との価値観の違いや協働の難しさを学んだ
- 学生の進路や研究分野に海洋・水産という新しい選択肢が生まれた
- 地域内の異なる関係者が意見を交わす場が生まれた
IMPACT|これから地域に育てていく可能性
- 相模湾の藻場再生団体をつなぐネットワークの形成
- 藻場再生に関する技術・調査データ・知的資源の共有
- 企業、行政、市民による継続的な資金・人材支援の仕組みづくり
- 漁師、研究者、企業、マリンレジャー事業者の連携強化
- 藻場再生と環境教育を組み合わせた体験プログラムの形成
- 大学生が継続的に海洋環境を調査するフィールドの形成
- 回復した地魚を地域の飲食・宿泊施設で提供する仕組みづくり
- 海洋環境、漁業、観光をつなぐ三浦独自の海業モデルの発展
- 三崎朝市や地域店舗を含む地域内消費の循環強化
- 水産業への若者の関心と新たな担い手の創出
- 三浦を持続可能な海辺の循環型地域モデルへ発展させる可能性
海の豊かさを取り戻すことから、海業を考える
今回のワーキングホリデーを通して、 学生たちは、 海業を観光商品や地域イベントだけで 実現できるものではないと考えるようになりました。
地域の食も、 漁業体験も、 マリンレジャーも、 豊かな海があってこそ成り立ちます。
海の資源が減り続ければ、 地域産業全体の土台が失われていきます。
だからこそ、 海洋環境の回復を地域づくりの中心へ置く。
藻場再生を起点に、 漁業、観光、食、教育、研究、 企業活動をつなぎ直す。
現場で漁業の厳しさと海の変化を体験した学生だからこそ、 海業の根本にある 「豊かな海を取り戻す」という提言へたどり着きました。
東大生の挑戦に寄り添う、ミライクエストの伴走支援
本活動の現場体験、ヒアリング、分析、提言を 主体的に担ったのは、 東大生地方創生コンソーシアムの学生たちです。
学生自身が地域へ入り、 漁師や行政、企業、研究者と出会い、 自分たちで次のヒアリング先を開拓しました。
ミライクエストは、 東大生地方創生コンソーシアムの共創パートナーとして、 活動に必要な資金面の支援、 地域や関係者との接続、 企画・調査・成果発信の伴走を行っています。
大切にしているのは、 ミライクエストが学生に答えを与えることではありません。
学生が自ら問いを持ち、 現場で事実を確かめ、 異なる意見と向き合い、 自分たちの言葉で提案をつくれる環境を整えることです。
一度のワーキングホリデーを一過性の経験で終わらせず、 次の調査、研究、実践、 地域との継続的な関係へつなげていくこと。
それが、ミライクエストの伴走支援の役割です。
地域と一緒に、人と事業を創る研究所
ミライクエストは、次世代、企業、行政、大学、地域をつなぎ、 現場で生まれた問いや学びを、 次の調査、実践、研究、事業へつなげていきます。
共創パートナー: ミライクエスト
協力: ミウラプロジェクトほか、三浦市・地域関係者の皆さま
実施期間: 2025年9月2日~9月16日
実施地域: 神奈川県三浦市を中心とした三浦半島周辺
参加者: 東京大学学部1年生3名
主な活動: 漁業体験、海洋・水産施設見学、朝市調査、 地域事業者・行政・研究者へのヒアリング、 藻場保全活動見学、構造分析、最終提言