製茶工場で荒茶の加工を学び、 茶畑で肥料と栽培の新しい考え方に触れ、 みかん畑では人の手でしかできない作業を体験する。 東京大学の学生5名が静岡県牧之原市を訪れ、 茶とみかんの生産現場から、 一次産業の課題と学生が継続的に関わる可能性を考えました。
本記事では、東大生地方創生コンソーシアムの学生たちが主体となって実施した活動を、共創パートナーであるミライクエストの視点から紹介します。
プロジェクト概要
- 事業名
- 静岡・牧之原フィールドワーク2026
- 実施日
- 2026年4月25日
- 実施地域
- 静岡県牧之原市
- 参加者
- 東大生地方創生コンソーシアム所属学生 5名
- 実施主体
- 東大生地方創生コンソーシアム
- 共創パートナー
- ミライクエスト
- 主な訪問先
- 道の駅そらっと牧之原、 農事組合法人さかぐち、 向笠園、 いたくら農園
- 活動テーマ
- 学びから共創へ
- 主なテーマ
- 茶産業、荒茶加工、茶栽培、 肥料の活用、みかん農業、 担い手不足、耕作放棄地、 学生と農家の継続的な連携
東大生地方創生コンソーシアムの学生5名が、 静岡県牧之原市で日帰りのフィールドワークを実施しました。
今回の活動の起点となったのは、 2024年12月に「いたくら農園」で行った みかん収穫の農作業アルバイトです。
作業の合間に農家の方々と対話を重ねる中で、 担い手不足や耕作放棄地の増加、 学生との継続的な連携の難しさについて 直接話を聞きました。
そこで今回は、 学生が一時的な労働力として農作業へ参加するだけではなく、 地域の課題を自分事として捉え、 農家とともに解決策を考える関係へ進むことを目指しました。
活動テーマは、 「学びから共創へ」。
製茶工場、茶畑、みかん農園を訪れ、 生産、加工、農法、労働、 地域との関係を一続きのものとして学びながら、 牧之原の農業に学生がどのような価値を提供できるのかを考えました。
一大茶産地を支える、製茶工場の仕組み
最初に訪れたのは、 農事組合法人さかぐちの製茶工場です。
学生たちは、 牧之原地域の茶産業全体について説明を受けた後、 工場内を見学しました。
茶畑で収穫された茶葉は、 そのまま消費者へ届くわけではありません。
工場では、 茶葉を蒸し、揉み、乾燥させるなどの工程を通して、 荒茶へ加工していきます。
工場内には大型の機械が並び、 多くの茶葉を効率的に加工できる仕組みが整えられていました。

機械化されても、人と人の調整は欠かせない
牧之原の茶産業は、 多様な農家、加工事業者、流通関係者によって支えられています。
大規模な機械設備によって高度に組織化されている一方で、 良い茶を安定してつくるためには、 茶葉を育てる農家と、 荒茶を加工・仕入れる側との 綿密なコミュニケーションが必要です。
茶葉の状態や収穫時期、 加工の進め方は毎回同じではありません。
設備や工程を整えるだけではなく、 畑と工場の間を行き来し、 状況を理解しながら調整する人の役割が重要です。
産業を支えるのは、機械だけではなく関係の設計
大規模な機械を導入しても、 原料をつくる農家と加工する側の連携がなければ、 安定した品質は生まれません。 生産、加工、流通の間に立ち、 異なる立場をつなぐ人材が、 これからの茶産業に必要とされています。
茶畑で学ぶ、完成していない農法
続いて学生たちは、 茶農家の向笠園を訪れました。
茶畑の中を歩きながら、 茶の栽培方法や肥料の使い方について話を伺いました。
向笠園では、 慣習や経験だけに頼るのではなく、 肥料の使用を化学的に考える 新しい取り組みが進められていました。
土や茶樹の状態を見ながら、 どのような肥料を、 どの程度使うのかを考える。
農法は、 一度確立すれば完成するものではありません。
気候、土壌、資材、 消費者の求める品質が変わる中で、 現場では常に試行錯誤が続けられています。

現場の経験と科学的な視点をつなぐ
農業には、 長い時間をかけて蓄積された生産者の経験があります。
一方で、 肥料、土壌、気候などを 科学的に捉えることで、 新しい改善の可能性も生まれます。
経験か科学かのどちらか一方を選ぶのではなく、 現場で育まれた知恵と新しい分析を組み合わせること。
学生たちは、 大学で学ぶ知識を地域の現場へどう生かすかを 考える機会を得ました。
既存の農法は、完成された答えではない
長く続いてきた方法にも、 気候や社会の変化に合わせた見直しが必要です。 現場の経験を尊重しながら、 科学的な視点や新しい技術を重ねることが、 持続可能な農業につながります。
みかん畑で、人の手にしかできない作業を知る
最後に訪れたのは、 今回の活動のきっかけとなった いたくら農園です。
学生たちは、 みかん畑で枝切り後の整理や、 摘蕾の作業を行いました。
摘蕾は、 つぼみの数や状態を見ながら、 必要なものを残していく作業です。
一つひとつの枝やつぼみを確認しながら進めるため、 大型機械では代替しにくく、 人の目と手による丁寧な作業が必要になります。
学生たちは、 実際に畑で作業することで、 果樹農業に必要な時間と労力を体感しました。

人手不足は、単純な人数の問題ではない
農業の人手不足という言葉からは、 作業する人の数が足りない状況が想像されます。
しかし実際には、 作物の状態を見分け、 適切な作業を判断できる経験や技術も必要です。
短期間だけ人を集めても、 すぐにすべての作業を任せられるわけではありません。
農家と学生が繰り返し関わり、 地域や作物への理解を深めながら、 少しずつできることを増やしていく。
継続的な関係づくりが、 担い手不足へ向き合う一つの入口になります。
一過性の労働力から、地域を理解する仲間へ
農繁期だけ作業を手伝う関係で終わるのではなく、 農家の課題や年間の仕事を知り、 若者の視点や学びを地域へ返していく。 継続的な対話と実践が、 学生と農家の双方に価値のある関係を育てます。
食卓を囲み、農業と地域の未来を語る
農作業後には、 板倉さんのご自宅で夕食をいただき、 意見交換を行いました。
作業中には聞ききれなかったことや、 農業の現状、 地域で暮らすこと、 学生との今後の連携について、 食卓を囲みながら話しました。
参加学生からは、 地域の文化や特徴を生かしたイベントによって、 人と人をつなぐという話が特に印象に残ったという 振り返りも寄せられました。
作業を一緒に行い、 その後に食事を共にすることで、 見学や短いヒアリングだけでは生まれにくい 関係と対話が育ちます。
茶とみかんを、地域のファンづくりへつなげる
今回の活動では、 農業現場を学ぶことに加え、 地域にとって学生がどのような価値を提供できるのかを 考えることも目的としました。
若者の視点から、 牧之原の茶やみかんの魅力を発信すること。
農作業を体験するだけでなく、 生産者の思いや産業の仕組みを伝えること。
地域のイベントや大学での活動を通じて、 牧之原を知る人や、 再び訪れたいと思う人を増やすこと。
学生の学びと、 地域の将来のファンづくりをつなぐことで、 双方が価値を感じられる連携の可能性が生まれます。
学生が現場から感じたこと
茶産業には多くの関係者が関わり、 大規模な機械と高度な仕組みが整えられていました。 それでも、農家と加工する側の細かなコミュニケーションが 欠かせないことを学びました。
既存の農法は完成されたものではなく、 現場の経験と科学的な視点を組み合わせながら、 改善を続ける必要があると感じました。
みかん畑では、 機械では丁寧に行いにくい作業を体験しました。 一次産業を支える人の手と技術の重要性を、 身体で理解することができました。
地域の文化や特徴を生かしたイベントによって、 人と人をつなぐという話が印象に残りました。 農業を生産だけでなく、 地域の交流や魅力づくりと結びつけて考えたいと思いました。
この活動から生まれたもの
OUTPUT|学生たちが形にした成果
- 農事組合法人さかぐちの製茶工場見学
- 牧之原地域の茶産業全体に関するヒアリング
- 荒茶の加工プロセスに関する学習
- 向笠園の茶畑と工場の見学
- 肥料の使用を化学的に考える栽培方法に関するヒアリング
- いたくら農園での枝切り後の整理作業
- みかんの摘蕾作業
- 農家との農業課題・担い手不足に関する対話
- 板倉さん宅での夕食懇談会
- 学生と農家の継続的な連携に向けた意見交換
- 学生によるフィールドワーク報告書の作成
OUTCOME|学生と地域に生まれた変化
- 学生が茶の生産から荒茶加工までの流れを理解した
- 機械化された産業にも人と人の調整が必要だと学んだ
- 農法は常に改善が必要なものであると理解した
- 現場の経験と科学的な知識をつなぐ視点を得た
- みかん農業に人の手でしか行いにくい作業があることを体感した
- 農業の担い手不足を、技術継承を含む課題として捉えた
- 学生が一時的な労働力ではなく、地域の協力者となる可能性を考えた
- 食卓を囲むことで農家と学生の関係が深まった
- 地域文化とイベントを通じた人のつながりに関心が生まれた
- 牧之原の農業へ継続的に関わる意識が育まれた
IMPACT|これから地域に育てていく可能性
- 学生が継続的に茶畑・みかん畑の農作業へ参加する仕組み
- 農家と大学生が年間を通して交流する関係づくり
- 茶産業とみかん農業を横断して学ぶフィールドワークの形成
- 農業現場の課題と大学での研究・専門知識をつなぐ共同調査
- 肥料や栽培方法に関する現場と学生の学びの連携
- 学生視点による牧之原の茶・みかんの情報発信
- 生産者の思いや農作業を伝える体験プログラムの開発
- 大学祭や地域イベントを活用した牧之原産品の紹介
- 地域文化や農産物を生かして人をつなぐ交流企画
- 牧之原を繰り返し訪れる若者や地域のファンの形成
- 学生と農家が共に課題と解決策を考える共創体制への発展
学ぶだけで終わらず、地域と共に考える
今回のフィールドワークでは、 茶とみかんという牧之原を支える農業の現場へ入りました。
製茶工場では、 大規模な機械と高度な組織によって 茶産業が支えられていることを学びました。
茶畑では、 経験と科学的な視点を組み合わせながら、 栽培方法を改善し続ける姿に触れました。
みかん畑では、 機械だけでは代替しにくい 人の手による丁寧な作業を体験しました。
それぞれの現場に共通していたのは、 農業が設備や技術だけで成り立つものではなく、 人の判断、経験、対話によって支えられていることです。
学生が地域を訪れて学ぶだけでは、 農業の課題は解決しません。
現場で知ったことを持ち帰り、 発信し、 再び地域を訪れ、 自分たちにできることを農家とともに考える。
「学びから共創へ」というテーマは、 一度の活動で完成するものではありません。
継続的な関係を積み重ねながら、 学生の学びと地域の期待を結びつけていくこと。
それが、 今回のフィールドワークから始まる 次のステップです。
東大生の挑戦に寄り添う、ミライクエストの伴走支援
本活動の企画、訪問、農作業、ヒアリングを 主体的に担ったのは、 東大生地方創生コンソーシアムの学生たちです。
学生自身が、 以前の農作業で聞いた農家の課題を起点に、 製茶工場、茶畑、みかん農園を訪れ、 地域との次の関係を考えました。
ミライクエストは、 東大生地方創生コンソーシアムの共創パートナーとして、 学生たちの主体性を尊重しながら、 現場で得た学びが次の調査や実践へつながるよう伴走しています。
大切にしているのは、 ミライクエストが学生に答えを与えることではありません。
学生が自分自身の関心から問いを持ち、 農家や地域の方との対話と作業を通して考えを深め、 自分たちの言葉で次の行動をつくれる環境を整えることです。
一度のフィールドワークを一過性の体験で終わらせず、 次の訪問、研究、実践、 地域との継続的な関係へつなげていくこと。
それが、ミライクエストの伴走支援の役割です。
地域と一緒に、人と事業を創る研究所
ミライクエストは、次世代、企業、行政、大学、地域をつなぎ、 現場で生まれた問いや学びを、 次の調査、実践、研究、事業へつなげていきます。
共創パートナー: ミライクエスト
実施日: 2026年4月25日
実施地域: 静岡県牧之原市
参加者: 東大生地方創生コンソーシアム所属学生5名
主な訪問先: 農事組合法人さかぐち、向笠園、いたくら農園