GREETING (ご挨拶)
次世代に原体験を。
地域には知の資産を。
田園社会イニシアティブ株式会社/ミライクエスト代表の楢木隆彦と申します。
このページでは、ミライクエストがこれまでどのような想いで歩んできたのか、 これから何を目指していくのかを、少し長くなりますが、 私自身の言葉で書かせていただきました。 ご一読いただけましたら幸いです。
今、私たちがミライクエストを通して目指していることを、 まず最初にお伝えしたいと思います。
この想いは、今になって生まれたものではありません。
私たちはこれまで、水、土、里山、農、自然、人の暮らしに関わる活動を続ける中で、 人の命が何によって支えられているのかを考えてきました。
昨今の気候変動による豪雨や農業被害、地震などの大規模災害、 過疎地域における医療へのアクセスの問題などを目の当たりにする中で、 その危機感は、これまで以上に切実なものになっています。
私たちの暮らしを支えているのは、医療だけではありません。 交通、農業、食、水、土、里山、防災、通信、技術、人と人とのつながりなど、 さまざまなものが関わり合っています。
一つの企業、一つの行政、一つの専門分野だけでは解決できないことが、 これからますます増えていくと思います。
だからこそ、地域や立場、世代を越えて人がつながり、 知恵や技術を持ち寄ることが必要です。
ミライクエストがつくりたいのは、 そうした人たちがともに考え、試し、 新しい仕組みや事業を生み出していける 共創の場と仕組みです。
次の世代には、地域に足を運び、 人や自然、仕事、技術にリアルに触れる原体験を届ける。
そこで生まれた問いや気づき、実践から得られた知を、 その場限りで終わらせず、地域の資産として残していく。
これが、私たちが「地域まるごと研究所」を進めている理由です。
これまで私たちは、地域に入り、人と出会い、 農や自然、医療、モビリティ、次世代育成など、 さまざまな実践を積み重ねてきました。
一つひとつは異なるテーマに見えるかもしれませんが、 振り返れば、その根底にはずっと共通するものがあったように思います。
水、土、里山を見つめてきたことも、 子どもや学生たちに原体験を届けてきたことも、 医療やモビリティ、先端技術との接続も、 すべてこの延長線上にあります。
ORIGIN (原点)
地域にあるものを、まず知ることから
ミライクエストが大切にしてきたことの一つに、 実際に地域へ行き、人に会い、その場に触れることがあります。
地域のことは、資料やデータだけでは分からないことがあります。
現場に立って初めて見えることがあります。 人の話を聞いて初めて気づくこともあります。 自分が想像していたものとは、まったく違っていたと感じることもあります。
小さな驚きや違和感が、 「なぜだろう」「もっと知りたい」という問いにつながっていく。
私たちは、これまでの活動の中で、 そんな瞬間を何度も見てきました。
AIによって多くの情報や知識を瞬時に得られるようになった今、 実際の人や場所、仕事、自然に触れる経験は、 むしろこれまで以上に大切になると感じています。
自分の目で見て、自分の身体で感じた経験が、 その人自身の問いや次の行動につながっていく。
私たちが大切にしているこの感覚は、 レイチェル・カーソンが示した 「センス・オブ・ワンダー」 という考え方にも通じるものがあると感じています。
自然や身の回りの世界に触れ、 「不思議だな」「なぜだろう」と心が動くこと。
子どもだけではなく、大人にとっても、 その感覚は新しい問いや発見の出発点になるのではないでしょうか。
AIによって答えを素早く得られる時代だからこそ、 答えを知る前に、自分自身で何かを感じ、 問いを持つことを大切にしたい。
私たちは、そうした経験を「原体験」として大切にしています。
ROOTS (受け継いだもの)
金子照美から教わった、地域を見る眼
この考え方の土台をつくってくれた一人が、 田園社会イニシアティブ株式会社の共同創業者であり、 今は亡き金子照美です。
金子は岐阜県郡上八幡に生まれ、 企業のCIやマーケティング、広報戦略に携わった後、 農林水産省関係の広報活動にも長く関わってきました。
金子が一貫して見つめていたのは、農業だけではありませんでした。
水、土、里山、農地、集落、自然、歴史、人々の営みまで含めて、 日本の国土や地域がどのように形づくられてきたのかを考えていました。
新しい地域戦略を考える前に、 まず、その土地に何があるのかを知ること。 実際にその場所へ行き、触れてみること。
私は、この考え方に大きな影響を受けました。
金子が残した仕事の一つに、 農と国土の成り立ちを伝える「農」シリーズがあります。 現在はWebアーカイブ 「水土の礎」 ↗ として残されています。
今あらためて考えると、金子が見ていた水、土、里山は、 単なる「地域資源」ではありません。
山や里山が水を育み、その水が農地を潤し、 作物が育ち、生き物が暮らし、人が生活する。 自然と人の営みは、本来ばらばらではなく、 長い時間をかけてつながってきました。
水も、土も、里山も、人の命を支える大切な基盤です。
私は、今そう感じています。
金子は、地域にあるものを丁寧に見つめ、 その価値を後世へ残そうとしました。 私にとって、その足跡は今も大切な原点です。
金子亡き後も、取締役副社長の江崎弘明と二人三脚で、 地域の中で何ができるのか、 次の世代に何を残せるのかを考えながら、 一つひとつ活動を続けてきました。
最初から完成した答えがあったわけではありません。
地域に入り、人に会い、まずやってみる。 うまくいかなければ考え直し、また次を試す。
今のミライクエストは、そうした積み重ねの上にあります。

NEXT GENERATION (次世代)
若者たちとの出会いが、私の考えを大きく進めた
大きな転機となったのが、 東大生地方創生コンソーシアムの学生たちとの出会いでした。
代表の田口翔一さんをはじめとする学生たちは、 自分たちで地域へ足を運び、人に会い、 現場で起きていることを知りながら、 「自分たちに何ができるのか」を真剣に考えていました。
誰かから与えられた課題に答えるだけではなく、 自分たちで問いを見つける。 地域の人と話し、関係をつくり、 自分たちなりに考え、動いてみる。
私は、その姿にとても心を動かされました。
こうした若者たちに、もっと社会の本物、 地域の「リアル」に触れる機会をつくりたい。 自分の問いを持ち、地域の人たちと一緒に考え、 挑戦できる場をつくれないか。
そんな思いが強くなっていきました。
この思いは、大学生だけに向けたものではありません。
子どもたちにも、できるだけ早い段階から、 地域の現場や仕事、人、自然、技術に触れる機会をつくりたいと考えています。
病院に入り、医療の仕事を知る。 AEDを実際に使い、目の前の人を助ける方法を学ぶ。 田畑や森に入り、水や土、生き物に触れる。 地域を歩き、交通やまちについて考える。
これまでミライクエストが子どもや学生たちに場や機会をつくってきたのも、 知識を一方的に教えるためではありません。
地域の「リアル」に触れたときに生まれる、 「なぜだろう」「もっと知りたい」 「自分にも何かできるだろうか」という気持ちを大切にしたいからです。
TURNING POINT (転機)
菊池昇さんに教えていただいた、研究と社会のつながり
ミライクエストが、一つひとつの実践から、 より大きな仕組みを考えるようになる中で、 長く背中を押し、伴走してくださったのが トヨタコンポン研究所の菊池昇さんです。
菊池さんは研究者として長いキャリアを持ち、 社会と研究・技術の関係を深く考えてこられた方です。
私たちが地域で続けてきた活動にも大いに共感してくださり、 まだ十分に自信を持てずにいた頃から、 何度も背中を押してくださいました。
菊池さんの後押しもあり、 私たちはトヨタ財団の国内助成プログラムに挑戦しました。
東大生地方創生コンソーシアムとの共創によって見えてきた 「自治型社会を担う次世代を育てたい」という思いと、 菊池さんの存在、数々の助言。
この二つが重なったことが、 トヨタ財団の国内助成プログラムへ挑戦する大きな転機になりました。
菊池さんは、社会にある課題を起点に研究や技術を考えること、 新しい技術や人の力をつなぎながら課題解決へ向かうことの大切さを、 折に触れて私たちに伝えてくださいました。
振り返ると、菊池さんは、 私自身がまだ明確に言葉にできていなかった頃から、 ミライクエストが向かおうとしている 「人の命を支えているものを見つめ、守り、次の世代へつないでいくこと」 という根っこの部分を見てくださっていたのではないかと思います。
技術を追いかけること自体が目的なのではなく、 まず社会にどんな問題があるのかを見る。 課題を解決するために、人や技術をつなぎ、実現していく。
この考え方は、今のミライクエストにとって大切な土台になっています。
REALIZATION (気づき)
「命」という言葉を、あらためて考えるきっかけをくださった伊藤誠一さん
これまで続けてきた活動の意味を、 あらためて深く考えるきっかけをくださったのが、 中部国際医療センターの伊藤誠一さんです。
伊藤さんは、美濃加茂市長を務められた経験もあり、 医療だけではなく、地域全体を大きな視野から見てこられた方です。
現在、ミライクエストでは地域×モビリティラボの中で、 中部国際医療センターと某大手自動車メーカー研究所をつなぎ、 地域の公共交通と医療の接続について、 新しい検証を始めようとしています。
この取り組みについて、伊藤さんから、
という言葉をいただきました。
DXや最先端技術への期待とともに、
になってほしいとも伝えてくださいました。
この言葉は、私にとって、とても大きなものでした。
私たちはこれまで、医療、モビリティ、農業、食、 水、土、里山、防災、次世代育成など、 さまざまなテーマに関わってきました。 これからは、AIやロボティクス、 さらには宇宙などの先端分野とも積極的につながっていきたいと考えています。
一見すると、ずいぶん幅広いことをしているように見えるかもしれません。
しかし、必要なときに病院へ行けることも、 災害時に一人でも多くの人を助けることも、 食べ物をつくり続けられることも、 それを支える水、土、里山を守ることも、 新しい技術によって今までできなかったことを可能にすることも、 すべて人の命につながっています。
伊藤さんからいただいた言葉によって、 これまで続けてきたことの根底にあるものを、 あらためて見つめ直すことができました。
「命を守る」という考え方は、 今になって突然生まれたものではありません。
水、土、里山を見つめてきたことも、 子どもや学生たちに原体験を届けてきたことも、 地域の人たちと一緒に課題を考えてきたことも、 根っこではずっとつながっていたのだと思います。
伊藤さんの「血の通う、温かいもの」という言葉も、 これからのミライクエストで大切にしていきたいと思っています。
最先端の技術であっても、その先にいるのは一人の人間です。
効率が良いだけではなく、本当に困っている人に届くこと。 数字や仕組みだけを見るのではなく、 その先にいる人の顔や暮らしを想像すること。
私たちは、そんな技術や事業を、 さまざまな人たちと一緒につくっていきたいと思っています。
TECHNOLOGY × FIELD (技術 × 地域)
なぜ、AIやロボティクスなどの先端分野とつながるのか
ミライクエストは、 こうした先端分野とも積極的につながっていきたいと考えています。
理由は、「最先端」という言葉そのものに価値を感じているからではありません。
新しい技術には、これまで救えなかった人を救ったり、 解決することが難しかった課題を解決したりする可能性があるからです。
豪雨や地震などの災害現場で要救助者を探すドローン。 人が入ることのできない危険な場所で活動するロボット。 必要な医療へ人をつなぐモビリティ。 農業や食を支えるAIやデータ。 災害や気象、森林などを広い視点から捉える衛星技術。
こうした技術は、研究室や企業の中にあるだけでは、 人の命を守る仕組みにはなりません。
地域の現場と出会い、本当に困っていることとつながり、 実際に使う人と一緒に考えることで、 初めて人の役に立つものになっていくのだと思います。
これも、ミライクエストの大切な役割の一つだと考えています。
EXPERIENCE × KNOWLEDGE (原体験 × 知)
次世代に原体験を。地域には知の資産を。
この言葉には、二つの願いがあります。
一つは、次の世代に、 できるだけ多くの本物に触れる機会を届けることです。
もう一つは、そこで生まれたものを、 一度きりの体験で終わらせないことです。
子どもや学生、地域の人、企業、行政、研究者が現場で感じたこと、 気づいたこと、問い、データ、 うまくいったこと、うまくいかなかったこと。
それらを記録し、整理し、 次の人が使える「知」として 地域に残していきたいと考えています。
AIは、このためにも大きな力を持っていると考えます。
これまで埋もれてしまっていた小さな声や気づきを整理し、 別の人や地域、別のテーマとつなぐことができるようになってきました。
原体験から問いが生まれる。 問いを人と共有し、小さく試してみる。 得られたものを記録し、地域の知として残す。 次の人が、そこからまた考える。
そんな循環をつくっていきたいと思っています。
WHOLE REGION LAB (地域まるごと研究所)
「地域まるごと研究所」とは
こうした実践を続ける中から生まれてきたのが、 「地域まるごと研究所」という考え方です。
研究所は、建物の中だけにある必要はないと思っています。
学校も、病院も、農地も、里山も、道路も、鉄道も、まちなかも、 その地域で起きている課題そのものも、 学び、研究し、試す場所になります。
人の命や暮らしは、一つの分野だけで成り立っているわけではありません。
病院があっても、そこへ行く交通手段がなければ、 必要な医療を受けられない人がいます。
農業を続けるには、農地だけではなく、 水、土、里山、気候など、さまざまなものが関係します。
災害が起きれば、医療、交通、通信、エネルギー、行政、 地域の人のつながりなど、 さまざまなものが同時に必要になります。
本来つながっているものを、 専門分野ごとに切り離して見るのではなく、 一つの地域の中でつないで考える。
「地域まるごと研究所」という考えは、 そんな思いの中から生まれました。
企業、行政、大学、医療機関、研究者、地域の人、次の世代が集まり、 それぞれが持っている知識や技術、経験を持ち寄る。
最初から大きな答えを求めるのではなく、 小さくても、まず試してみる。
結果を記録し、次へつなぐ。
そんな小さな実践を重ねながら、 人の命を支える新しい仕組みや事業を、 地域から生み出していきたいと考えています。
OUR ASSETS (積み重ねてきた資産)
これまで積み重ねてきたもの
「地域まるごと研究所」は、 これからゼロから始める構想ではありません。
ミライクエストには、 これまで地域の中で一つひとつ積み重ねてきた実践があります。
子どもや学生たちと地域へ入り、 企業や行政、大学、医療機関、研究者、地域の方々と一緒に、 さまざまな問いを考え、試してきました。
その歩みの多くは、ミライクエストのWebサイトに 「フィールドノート」 として記録されています。
一つの記事だけを見れば、小さな取り組みに見えるかもしれません。
けれども、長い時間をかけて積み重なった記録を振り返ると、 そこには、地域で起きたこと、人との出会い、 若い世代の気づきや変化、試してきたこと、 その中で得られた経験が残っています。
もう一つ、大きな資産があります。
それは、活動を通じて生まれてきた 人と人、地域と人とのつながりです。
企業、行政、大学、医療機関、研究者、学生、地域の方々。
分野も世代も異なる人たちと、 一緒に考えたり、実際に何かを試したりしてきました。
そこにあるのは、単なる名刺やネットワークではなく、 実践を通じて少しずつ築いてきた関係です。
この実践とつながりがあるからこそ、 医療とモビリティ、地域と先端技術、 企業と若い世代など、 一見すると離れているものの間にも、 新しい接点をつくることができます。
これまで積み重ねてきたものを、 これからもっと生かしていきたい。
地域の中にある問いと、企業や研究機関が持つ技術をつなぐ。 若い世代の気づきと、行政や地域が抱える課題をつなぐ。
それが、これからのミライクエストにとって 大切なことだと考えています。
地域、次世代、企業、行政、医療など、 ミライクエストの現場で生まれてきた実践を記録しています。
GROW TOGETHER (ともに育てる)
これからは、「育てる人」を増やしたい。
「次世代に原体験を」と言っても、 ミライクエストだけで、すべての機会をつくることはできません。
これから増やしていきたいのは、 次の世代に原体験を届ける人、 一緒に問いを考える人、挑戦する機会をつくる人 です。
ここでいう「育てる人」とは、 何かを一方的に教える人だけを意味しているわけではありません。
企業
自分たちの仕事や技術、研究の現場を若い世代に開く。
行政
地域課題やまちづくりの現場を、学びと実践のフィールドとして開く。
医療機関
医療の現場や、そこで働く人たちと出会う機会をつくる。
大学・研究機関
まだ答えのない問いを、地域や若い世代と一緒に考える。
地域
暮らしや仕事、その土地に受け継がれてきた知恵を伝える。
どれも、次の世代にとって大切な原体験になります。
大きなプログラムを新しくつくらなくてもいいと思っています。
そこから始められることは、たくさんあります。
若い世代に自社の現場を見てもらう。 一緒に地域課題を考える。 社員がマイクロラボに参加する。 実証のための技術や場所を提供する。 地域で生まれた問いを、研究や事業のテーマとして一緒に考える。
一つひとつは、小さな関わりかもしれません。
けれども、そんな人や組織が地域の中に増えていけば、 子どもや学生がさまざまな「リアル」に出会えるようになります。
企業や行政にとっても、 これは一方的な社会貢献だけではないと考えています。
若い世代の率直な問いや地域の声に触れることで、 自分たちの仕事や技術を別の角度から見直す。 そこから、新しい事業や研究、政策の種が生まれることもあると思います。
教える側と教えられる側に分かれるのではなく、 次の世代と一緒に考え、お互いに学びながら未来をつくる。
私たちが増やしたい「育てる人」とは、そんな人たちです。
ミライクエストは、その人たちをつなぎ、 出会いをつくり、小さな実践を生み出す役割を担っていきたいと思っています。
CO-CREATE WITH US (ともに育てる)
ミライクエストを、
私たちと一緒に育てていただけませんか。
未来の答えは、まだ私たちにも分かりません。
だからこそ、企業、行政、大学、医療機関、研究者、 地域の方々、次の世代と一緒に問いを持ち寄り、 小さく試しながら育てていきたいと思っています。
場所を開くことでもいい。 技術を持ち寄ることでもいい。 若い世代と一緒に問いを考えることでもいい。
一人ひとり、一つひとつの組織が持っているものを少しずつ重ねることで、 今までになかった仕組みや事業が生まれるかもしれません。
そのための共創を、 地域から一緒に始めていただけましたら嬉しく思います。
次世代に原体験を。
地域には知の資産を。
これまで一緒に歩んでくださった皆さまに、 心より感謝申し上げます。
これから新しく出会う皆さまとも、 一緒に考え、一緒に試しながら、 未来へ向けた小さな一歩を踏み出せましたら嬉しく思います。
田園社会イニシアティブ株式会社
ミライクエスト
代表 楢木 隆彦