レポート

地域の想いを、実装へつなぐ人々に出会う|岩手・花巻フィールドワーク2026

関係人口について語り合い、 商店街と温泉街を歩き、 棚田の地域イベントやブドウ農園、 手仕事を大切にする漬物工場を訪ねる。 東京大学の学生6名が岩手県花巻市を訪れ、 地域への想いを事業や活動として実装する人々に出会いながら、 外部の学生が地域とどう関わることができるのかを考えました。

本記事では、東大生地方創生コンソーシアムの学生たちが主体となって実施した活動を、共創パートナーであるミライクエストの視点から紹介します。

ミライクエスト共創パートナー|伴走支援プロジェクト

プロジェクト概要

事業名
岩手・花巻フィールドワーク2026
実施期間
2026年5月3日~5月5日
実施地域
岩手県花巻市
主な地域
花巻中心市街地、台温泉、東和町、大迫町
参加者
東大生地方創生コンソーシアム所属学生 6名
実施主体
東大生地方創生コンソーシアム
共創パートナー
ミライクエスト
主な協力先
雨風太陽、上町家守舎、ハナレヤベース、 湯屋はな宿、東和棚田のんびりRun実行委員会、 かんたはうす、有限会社押切食品
主なテーマ
関係人口、中心市街地活性化、 リノベーションまちづくり、温泉街再生、 地域イベント、農業、事業継承、 持続可能な地域活動

2026年5月3日から5日まで、 東大生地方創生コンソーシアムの学生6名が、 岩手県花巻市でフィールドワークを実施しました。

今回の目的は、 地域で活動する人々と対話し、 花巻の現状や課題を学ぶことです。

まちづくり、温泉、地域イベント、 農業、食品産業など、 異なる分野で活動する実践者を訪ねました。

学生が地域へ入り、 一時的に何かを手伝うだけではなく、 外部の立場からどのような役割を担い、 地域と継続的な関係を築けるのか。

雨風太陽が運営するHANAMAKI BASEに滞在し、 地域の方々と食事や生活を共にしながら、 「関係人口」のあり方を現場から考える3日間となりました。

地方と都市をつなぐ「関係人口」を考える

最初のプログラムでは、 HANAMAKI BASEで、 雨風太陽の高橋博之さんから話を伺いました。

テーマは、 地方と都市の関係性や、 関係人口が持つ意味です。

地方は、 そこで暮らす人だけのものではありません。

食、自然、文化、産業などを通して、 都市で暮らす人々の生活も、 地方の存在によって支えられています。

一方で、 地方に関心を持つ人が、 移住するか、観光客として訪れるかという 二つの選択肢だけでは、 継続的な関係は広がりません。

何度も訪れ、 地域の人と関係を築き、 自分のできる範囲で活動へ関わる。

そのような多様な関わり方が、 関係人口という考え方の中にあります。

HANAMAKI BASEで雨風太陽の高橋博之さんと意見交換する学生
雨風太陽の高橋博之さんと、地方と都市の関係性や「関係人口」のあり方について意見を交わしました。

移住か観光かではない、地域との関わり方

地域に住まなくても、 繰り返し訪れ、 人や産業と関わり、 自分なりの役割を持つことはできます。 地域との関係に濃淡があることを認めることが、 多様な関係人口を育てる第一歩になります。

花巻中心市街地を歩き、まちの変化を見る

高橋さんとの対話後、 学生たちは花巻の中心市街地を歩きました。

上町商店街、吹張町、花巻駅前を巡りながら、 上町家守舎とハナレヤベースの方々から 話を伺いました。

商店街では、 空き店舗や使われなくなった建物を活用し、 新しい店舗や活動の場へ変える リノベーションまちづくりが進められています。

建物を修繕することだけではなく、 どのような人や事業を呼び込み、 まちに新しい関係を生み出すかが重要です。

一方で、 個々の建物が活用されても、 まち全体の人の流れや経済が 自然に回復するとは限りません。

店舗、公共空間、交通、 観光客や地域住民の動線を どのようにつなぐのかという課題も見えてきました。

花巻中心市街地を歩きながらリノベーションまちづくりを学ぶ学生
上町商店街などを歩き、空き店舗の活用や、中心市街地に人の流れを生み出す取り組みについて学びました。

子どもたちの「第三の居場所」をつくる

ハナレヤベースでは、 カフェと学習塾を併設した 子どもたちの居場所づくりについて 話を伺いました。

家庭や学校とは異なる場所で、 子どもが安心して過ごし、 大人や地域の人と出会える空間です。

地域に必要な場所をつくるだけでなく、 事業としてどのように持続させるかも 考えられていました。

良い活動を、続けられる仕組みにする

地域に必要な活動であっても、 誰かの善意や無償労働だけに頼れば、 長く続けることは難しくなります。 利用者や地域へ価値を生みながら、 運営に必要な収益も確保することが、 持続可能な地域活動には欠かせません。

歴史ある台温泉を、次の時代へつなぐ

続いて訪れたのは、 花巻市内にある台温泉です。

学生たちは、 後継者がいなくなった温泉旅館を引き継ぎ、 リノベーションして再開しようとする現場を 視察しました。

温泉の魅力や歴史があっても、 建物の改修費、 運営人材、 顧客の獲得、 継続的な収益など、 事業として再生するには多くの課題があります。

そのような制約の中でも、 地域の湯への誇りを持ち、 どのような顧客へ何を提供するのかを考えながら、 再開に向けた試行錯誤が続けられていました。

花巻市の台温泉で旅館再生の現場を視察する学生
台温泉を訪れ、後継者のいなくなった旅館を引き継ぎ、再生しようとする現場を視察しました。

残したいという思いと、事業の現実

歴史があるから残すべきだという思いだけでは、 事業を継続することはできません。

誰が利用するのか。

どのような体験を提供するのか。

どの規模で運営し、 どこから収益を得るのか。

地域資源を残すためには、 感情と経営の両方を見つめる必要があります。

継承は、昔の形をそのまま残すことではない

地域の歴史や文化を受け継ぐためには、 現代の利用者や社会に合った形へ 変えることも必要です。 何を守り、 何を変えるかを選びながら、 次の担い手が続けられる事業へつなげていきます。

アートと棚田が、人を集める東和町

2日目には、 東和町で開催された 土澤アートクラフトフェアを訪れました。

会場には全国から出店者が集まり、 多くの来場者でにぎわっていました。

地域の規模にかかわらず、 明確なテーマと魅力のある企画があれば、 外部から人を呼び込むことができます。

その後、 東和棚田のんびりRun実行委員会の皆さんから、 棚田の景観を生かした地域交流イベントについて 話を伺いました。

地域に残る棚田を、 農地としてだけでなく、 人が訪れ、景観を楽しみ、 地域住民と交流する場所として活用しています。

東和町のアートクラフトフェアと棚田地域を視察する学生
東和町でアートクラフトフェアと棚田地域を訪れ、地域資源を生かした交流イベントについて学びました。

地域の団結が、今の活動へつながる

東和町では、 江戸時代の百姓一揆など、 地域住民が団結してきた歴史についても 話を伺いました。

地域の課題に対して、 誰かに任せるのではなく、 自分たちで考え、 協力して行動する文化が、 現在の地域イベントにもつながっています。

新しい活動は、 突然生まれるものではありません。

地域の歴史や人間関係の積み重ねが、 自発的な活動の土台となっています。

イベントの背景にある、地域の文化を見る

にぎわうイベントだけを見ても、 それを支えている地域の力は分かりません。 住民同士の関係や歴史、 長年培われた協力の文化を知ることで、 活動が続く理由が見えてきます。

大迫町で、ブドウ農家の仕事を体験する

東和町の視察後、 学生たちは大迫町へ移動しました。

地域おこし協力隊を経て、 ブドウ農家として定住した かんたはうすの鈴木寛太さんの農園を訪れ、 農作業を手伝いました。

農作業を短時間体験することと、 農業を仕事として毎日続けることには、 大きな違いがあります。

天候や生育状況を見ながら作業し、 収穫まで長い時間をかけ、 販売や経営まで担う必要があります。

学生たちは、 実際に手を動かしながら、 一次産業へ関わる責任と難しさを考えました。

大迫町のブドウ農園で農作業を体験する学生
地域おこし協力隊からブドウ農家として定住した鈴木寛太さんの農園で、農作業を体験しました。

「たまに手伝う」と「生業にする」の違い

学生が農作業を手伝うことは、 人手の支援になるだけでなく、 地域産業を知る入口になります。

しかし、 一時的に作業へ参加することと、 収入や生活を背負って農業を続けることは同じではありません。

外部の学生が地域へ関わる際には、 自分たちの体験だけで満足せず、 生産者が背負う責任や現実を理解することが必要です。

体験を、産業への理解と次の行動へ

農作業体験を一度の思い出で終わらせず、 生産者の課題や年間の仕事を知り、 発信、販売、イベント、研究など、 自分たちにできる継続的な関わりへつなげることが大切です。

漬物の未来と、事業を閉じる選択を考える

最終日には、 有限会社押切食品を訪問しました。

工場では、 手作業を大切にしながら 漬物を製造する現場を見学しました。

長く受け継がれてきた技術や味を守りつつ、 これからの暮らしの中で 漬物がどのような役割を持てるのかを 考えながら商品づくりが行われています。

学生の印象に残ったのは、 事業を拡大し続けることだけを 目標にしていないという話でした。

市場や担い手、 自分たちの状況を冷静に見つめ、 必要であれば事業を縮小し、 前向きに閉じていくことも 一つの経営判断として考えられていました。

有限会社押切食品の漬物工場を見学する学生
有限会社押切食品を訪れ、手作業を大切にする漬物づくりと、未来を見据えた経営について学びました。

続けることだけが、正解ではない

地域産業や店を守るというと、 事業を長く存続させることが 唯一の目標のように捉えられがちです。

しかし、 状況を無視して続ければ、 担い手や家族へ大きな負担が残ることもあります。

何を残すのか。

どの規模で続けるのか。

いつ、どのように終えるのか。

終わり方まで含めて考えることも、 地域産業を誠実に受け継ぐための選択です。

継続と撤退を、同じ経営の選択肢として考える

成長や拡大だけを目指すのではなく、 市場、担い手、地域への影響を見ながら、 続け方や終わり方を選ぶ。 事業の規模を冷静に判断することも、 次の世代へ責任を持つ経営の一部です。

HANAMAKI BASEで、暮らしながら対話する

今回の滞在拠点となったのが、 雨風太陽が運営するHANAMAKI BASEです。

1日目と2日目の夜には、 その日に出会った地域の方々を招き、 一緒に夕食をつくり、 食卓を囲みました。

視察やヒアリングの時間だけでは 聞きにくかったことも、 食事を共にする中で 自然に話すことができました。

地域の方も学生も、 それぞれに悩みや迷いを抱えながら、 より良い方向を模索しています。

外から来た学生が 正解を教えるのではなく、 お互いに関心を持ち、 一緒に悩み、 新しい発見を生み出す。

HANAMAKI BASEでの生活と交流を通して、 関係人口が単なる訪問者ではなく、 地域と問いを共有する存在であることを実感しました。

HANAMAKI BASEで地域関係者と夕食を囲み交流する学生
HANAMAKI BASEで地域の方々と夕食を囲み、その日の活動や地域の未来について語り合いました。

拠点があることで、関係が深まる

地域を訪問して話を聞くだけでなく、 同じ場所で食事をつくり、 暮らしの時間を共有する。 滞在と交流の拠点があることで、 一度の面会を越えた関係が生まれます。

外部の学生だからこそ、できることを考える

花巻では、 地域の方々自身が、 すでに多くの活動へ取り組んでいました。

中心市街地のリノベーション、 子どもの居場所、 温泉旅館の再生、 棚田を生かしたイベント、 農業や食品事業。

外部の学生が短期間訪れ、 簡単に解決できる課題ではありません。

だからこそ、 学生には別の役割があります。

地域の歴史や活動を調べ、 外部の視点から価値を見つけ、 言葉や記録として残すこと。

大学での学びや人とのつながりを生かし、 地域内だけでは届きにくい相手へ 情報を伝えること。

一度で答えを出そうとせず、 小さな活動を重ねながら、 自分なりの関わり方を育てること。

学生たちは、 「お手伝い」から一歩進んだ関係人口として、 地域に何を実装できるのかを考えました。

学生が現場から感じたこと

地域で活動する方々の想いだけでなく、 それを事業や活動として実装する覚悟の強さに圧倒されました。 学生だからこそ、 地域の歴史を調べ、 外部の視点で発信し、 形に残せる役割があると感じました。

HANAMAKI BASEで地域の方と生活を共にしたことで、 地域の人も学生も、 同じように悩みながら行動していることを実感しました。 お互いに興味を持ち、 新しい発見を生み出せる交流が印象に残りました。

事業を続けることだけでなく、 状況を見ながら前向きに閉じていくという選択もあると学びました。 何を残し、 どのように終えるかを考えることも、 地域の未来に必要だと感じました。

花巻では地域の方がすでに多くの活動を進めていました。 外から来た学生が簡単に解決できるものではありませんが、 外部の人を受け入れてくれる雰囲気もあり、 自分たちなりの関わり方を探したいと思いました。

地域の方々が、 一人で活動を完結させず、 意思を起点に周囲と得意なことを分担しながら 試行錯誤していることを学びました。 外部の人と一緒に悩むことも、 関係人口の大切な役割だと感じました。

この活動から生まれたもの

OUTPUT|学生たちが形にした成果

  • 雨風太陽・高橋博之さんとの関係人口に関する意見交換
  • 花巻中心市街地のまち歩き
  • 上町家守舎からリノベーションまちづくりに関するヒアリング
  • ハナレヤベースのカフェ・学習塾・子どもの居場所の見学
  • 台温泉における旅館再生の現場視察
  • 土澤アートクラフトフェアの視察
  • 東和棚田のんびりRun実行委員会へのヒアリング
  • 大迫町のブドウ農園での農作業体験
  • 地域おこし協力隊から農家へ定住した経緯のヒアリング
  • 有限会社押切食品の漬物工場見学
  • 事業継承・商品開発・事業の終わり方に関する意見交換
  • HANAMAKI BASEでの地域関係者との懇親会
  • 3日間の活動を通じた学生の振り返り
  • 学生によるフィールドワーク報告書の作成

OUTCOME|学生と地域に生まれた変化

  • 学生が関係人口を多様な地域参加の形として理解した
  • 中心市街地の建物活用と人の流れの関係を学んだ
  • 子どもの居場所と事業の持続性を同時に考える視点を得た
  • 温泉街再生には地域への思いと経営判断の両方が必要だと理解した
  • 地域イベントを支える歴史と住民同士の関係に気づいた
  • 農作業体験と農業を生業にすることの違いを実感した
  • 地域産業には継続だけでなく、縮小や撤退という選択もあると学んだ
  • 外部の学生が地域を記録・発信する役割を考えた
  • 地域の方と生活時間を共有することで関係が深まった
  • 学生の中に花巻と継続的に関わりたいという意識が生まれた

IMPACT|これから地域に育てていく可能性

  • 花巻と学生が継続的に関わる関係人口プログラムの形成
  • HANAMAKI BASEを活用した学生の滞在・実践機会の拡大
  • 中心市街地の活動や店舗を学生視点で記録・発信する取り組み
  • 観光資源から商店街へ人をつなぐ回遊企画の検討
  • 子どもの居場所と大学生をつなぐ学習・交流プログラム
  • 台温泉の歴史や再生過程を伝えるコンテンツの制作
  • 棚田、アート、ランニングを組み合わせた地域交流の発展
  • ブドウ農園と学生による継続的な農作業・情報発信
  • 地域産品を大学や都市部で紹介する販売・交流企画
  • 地域事業の継承・縮小・撤退を考える調査研究
  • 地域の実践者と学生が共に課題を整理する対話の場づくり
  • 花巻を、関係人口と地域事業の実装を学ぶフィールドへ発展させる可能性

想いを聞くだけでなく、実装の過程に関わる

今回のフィールドワークでは、 花巻のさまざまな場所で活動する人々に出会いました。

それぞれの活動には、 地域を良くしたいという思いがあります。

しかし、 思いがあるだけで、 活動や事業が続くわけではありません。

資金を確保し、 仲間を集め、 地域の人と調整し、 失敗を重ねながら改善する。

地域の想いを社会へ実装するためには、 覚悟と継続的な行動が必要です。

学生が短期間でその役割を すべて担うことはできません。

それでも、 活動を記録し、 外部へ伝え、 自分の専門や関心を生かして 小さな実践を重ねることはできます。

地域の方と同じ問いを持ち、 一緒に悩み、 自分なりの役割を見つけていく。

そのような関係人口の形を、 学生たちは花巻で考えました。

東大生の挑戦に寄り添う、ミライクエストの伴走支援

本活動の企画、訪問、対話、農作業、振り返りを 主体的に担ったのは、 東大生地方創生コンソーシアムの学生たちです。

学生自身が地域の実践者と出会い、 まちを歩き、 農作業を行い、 食卓を囲みながら、 地域との関わり方を考えました。

ミライクエストは、 東大生地方創生コンソーシアムの共創パートナーとして、 学生たちの主体性を尊重しながら、 現場で得た学びが次の調査や実践へつながるよう伴走しています。

大切にしているのは、 ミライクエストが学生に答えを与えることではありません。

学生が自分自身の関心から問いを持ち、 地域の方との対話や体験を通して考えを深め、 自分たちの言葉で次の行動をつくれる環境を整えることです。

一度のフィールドワークを一過性の体験で終わらせず、 次の訪問、記録、研究、実践、 地域との継続的な関係へつなげていくこと。

それが、ミライクエストの伴走支援の役割です。

地域と一緒に、人と事業を創る研究所

ミライクエストは、次世代、企業、行政、大学、地域をつなぎ、 現場で生まれた問いや学びを、 次の調査、実践、研究、事業へつなげていきます。

実施主体: 東大生地方創生コンソーシアム
共創パートナー: ミライクエスト
実施期間: 2026年5月3日~5月5日
実施地域: 岩手県花巻市
参加者: 東大生地方創生コンソーシアム所属学生6名
主な活動地域: 花巻中心市街地、台温泉、東和町、大迫町
滞在拠点: HANAMAKI BASE

東大生地方創生コンソーシアムについて

地域に関心を持つ東京大学の学生がつながり、 全国各地の現場に入りながら、 調査・実践・提案に取り組んでいます。

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