レポート

マンガ教材を活用した高校生による授業開発ラボ #2

○1/21(土)10:00〜12:00:第1回授業開発ワークショップ

・坂祝小学校 渡辺和代先生との対話(ご経験やアドバイスを伺う)

■事業内容と結果の検証

大学進学後に教職を志す高校生および地域貢献・社会活動に関心の高い高校生に小学生向けのマンガ教材を活用した授業計画の作成と指導方法の開発を行い、小学校教諭の協力も得ながらより良い授業開発を目指した。それを実際に小学生に教える体験の機会をつくった。その際、小学校教諭も参加し、小学校への授業への採り入れに向け高校生とのディスカッションを行った。

最初は自分たちの意見を伝えること共有することが上手く出来ない子達が多かったが、回を重ねるごとに具体的な意見と積極性が出て、合計6回のワークショップの予定であったがより良い授業を創りたいという高校生の希望により、オンラインミーティング形式で授業計画を詰めていった。先生になりたいという夢を持った高校生の意欲をと主体性を向上させることにつながったと考える。

■対象

加茂高校の教職希望の高校生(2年生) 10名

■協力者

①加茂高校 山中先生   ②坂祝小学校 渡辺和代先生    ③前教育長 日比野安平先生

■目的と効果

①目的:大学進学後に教職志望を持つ高校生の体験の機会と場の創出

効果:教職に興味をもった初期段階でその魅力を体感して意欲を喚起。大学進学後、在学中に志望動機を維持し、将来的な教員の確保を図る。また小学生にとって少し上のお兄さんお姉さんから教わることで小学生の授業に向かう意欲の向上と共に現場先生のサポートに繋げていく。

②目的:地域貢献・社会活動に関心の高い高校生の体験の機会と場の創出

効果:地域資源保全活動を実施した経験と学んだ知識を小学生に教えるためにどうするかを高校生同士が意見を出し合い考えることで進学および就職後の社会で求められる主体的なコミュニケーション能力やコラボレーション能力の向上を図る。同時に生まれ育った地域を題材とすることで郷土愛を育み、将来的な地元での就職や起業へと繋げていく。

■取り組みの詳細

美濃加茂市版マンガ教材(美濃加茂市の里山や地域資源を学ぶためのマンガ教材)を活用し、指導方法とカリキュラムの開発を行う。開発した教材を実践する機会として、小学生の親子を対象に実施する里山体験イベントを企画し、その中で子どもたちに教材を使った授業を行う。

美濃加茂市版マンガ教材
イベント募集チラシ

◆イベントに参加した小学生へのアンケート

<設問1>里山ぐるぐる探検隊として、友達と話し合いや探検をしてみて楽しかったですか?

楽しかったまあまあ楽しかったあまり楽しくなかった楽しくなかった
8000

<設問2>先生の話を聞いて、新しく学んだこと・知ったことはありますか?

棚田が面白かった/ぐるぐる島について知れた/ぐるぐるしているから自然が育つ/人と里山が暮していくには、私たちが自然を壊さないようにしないといけない/初めてみたものをあって、たくさん森のことを知れた/自然を大切にしないといけない/水→雨→家→川→海→雲→雨という循環/残さず食べることが大切/平和の方がとても安心して暮らせるということ/身の回りの水はぐるぐる回り、リサイクルになっている/木や森があると空気がきれい

<設問3>「里山」や「ぐるぐる」を守るために、自分たちに何かできることはありますか?

ごみを捨てない/木を伐りすぎない/野菜のお世話をする/水の節約/里山公園に来てもらい、里山公園の大切さに気付いてもらう/水を大切に使う/植物を大切に育てる/ゴミ拾い/ゴミを潰して捨てる/3RやSDGsを意識する/川にごみを捨てない/植物を植える/ゴミを出さない/

<設問4>探検隊として、やってみたいことがあれば教えてください。

みんなに里山ぐるぐる探検隊を広める/きれいな花を植える/野菜を育てる/今日散策したコース以外のコースを回りたい/里山全体を見て学習したい/もっと広い範囲を探検したい/ゴミ拾い/今回は自然について学んだので、次は昔使っていたものについて学びたい/私も大きくなったら、小学生の子に教えてみたい

◆ワークショップに参加した高校生へのアンケート

<設問1>マンガ授業開発ワークショップに参加しようと思ったきっかけや理由を教えてください。(複数回答可)

<設問2>全5回開催したワークショップの満足度を教えてください。(5段階評価)

<設問3>その理由を教えてください。

・普段経験できないような子供達への授業をすることができたから。みんなで、一から授業計画を立てて意見がぶつかる時も、まとまらない時もあったけど、最終的には上手くいってよかった。また、最初は緊張していた子供達も最後には緊張が解けて自分たちから意見を言ってくれるようにまでなれて、企画が成功したから。

・1から高校生だけで授業内容を考えることができたから。

・最終的に計画がまとまっていって、色々な意見が合わさってとても良かったと思います。参加出来なかった回が何回かあり、意見を聞いていることが多くなってしまったから。

・高校生だけで一から授業計画を立てる機会を得て、実際に授業を行う事が出来てほんとに良かったからです。

・今までに経験したことのないことがたくさんできたから

・なかなか話し合いには参加することが出来なかったけど、みんなと沢山どうやったら里山の良さと循環していることを分かりやすく伝えれるか真剣に考え、最終的には大成功に終わったから。

・小学生の子達もとても意欲的に参加してくれて嬉しかったし、帰りに楽しかったと伝えてくれてやってよかったなって心からおもったから。限られた時間の中で最大限の力で活動を行い、一回一回のミーティングを大切にし、みんなで意見を話し合い小学生が興味持ってもらえるようにさまざま観点で試行錯誤し、最後の授業で『大成功』したと自信をもって言えることができるからです。

・とても楽しかったし大成功だと思うのですが、まだ少し自分の中で「もっとこうできたな」という反省点があるので星4です。

・自分と違う視点で見ていた人の意見が面白くてどこの場面を切り取っても新しい経験で勉強になり本当に楽しかった。

<設問4>ワークショップに参加して、学んだことや印象に残ったことを教えてください。

・子供達への接し方がとても難しいと分かった。最初から緊張せずに話してくれる子もいれば、緊張してうまく話せない子もいるのでそれぞれに合った接し方をするのがとても大変だなと思ったし、簡単ではないなと思った。また、授業計画でも、どうしたら子供たちに楽しいと思ってもらえる授業を作れるか、授業の進め方、時間配分を小学生の目線で考えなければいけないことも難しいと学んだ。

印象に残ったことは、授業が楽しかったことだ。始まる前までは、正直楽しみよりも不安の方が大きかったけど、子供たちと話してみて不安に思わなくてもよかったんだなと思えた。それは、子供たちも楽しそうにしてくれていることがよく分かったし、豆知識なども私よりもたくさん知っててそれを自分から教えてくれることが嬉しかったからだ。

授業を作る中で、授業の組み立ての難しさがわかった。ただ生徒に説明するだけでなく、時間配分、生徒の興味を引くための工夫、教材の使用など授業を作るために考えなければならないことが多数あるとわかり、先生が想像以上に大変だな、と思った。

小学生が理解できるようにどうすればいいか楽しめるように何をやればいいかなどを考えながら私達も里山を学べたと思いました。

・最初は小学生の子は知らない人ばかりがいたから表情が硬かったけど、私たちと話していく中で慣れていって笑顔が見られ、自分から話しかけてくれたことが印象に残っていますし、とても嬉しかったです!中には少し恥ずかしがり屋な子が居て、全体で話す時はなかなか話さなかった子も私と1体1で話した時には話してくれたから、全体では話せない子に対しては1体1で話し、まだ馴染めていなかったら他のことを話してまずは仲良くなっていくことが大切だと思いました。

・小学生でも分かる言葉使いが難しい。なかなか心を開いてくれない子がいたけど、積極的に「例えばここと里山を比べてみたらどうかな??」などと声をかけることで、一生懸命に考えてくれて色んな意見をだすことができた。だから、意見がなかなか出ない時は自分から声をかけることが大切なんだと知った。

・先生方が行っている授業形式のポイントや実際に私が小学生に授業をしたときに教師のやりがいや大変さを生で感じることができました。とくに言葉選びがとても難しく、どうやって言ったら伝わるんだろうと思ったこともありましたが自分の持っている知識で小学生に伝わったときはとても感動しました。

とにかく、私が行った活動はとにかく楽しかったです。

・私は、小学生と関わっていく中で小学生から学んだこともたくさんありました。今回参加してくれた小学生は豆知識が多く、逆に私がいろんなことを教えてもらいました。

「ぐるぐる」の意味について例をあげてわかりやすいように説明したとき、子どもたちが楽しそうな顔で「なるほど!」「おもしろい!」って言ってくれたことにやりがいを感じたし、一番嬉しかったです!!

・先生たちがやっている授業の裏は先生たちのいろんな考えがあることをしれた。どんなつかみにしてどんな授業にしてどんなゴールに持っていくのか一つ一つ工夫されているのが分かった。

<設問5>ワークショップ参加前と後で、自分が成長したと思うことがあれば教えてください。

・参加する前は子供たちの目線でものを考えることは無かったし、将来絶対に先生になりたいと思ってもいなかったけど、参加してみて、子供たちにどのように接するのが大切か、またしっかり話を聞いてあげることが意外と大変だと知ることができ、実行できたこと。また、先生という道があることを今回分かったので、今後の進路で考えることができる幅が広がったのでよかった。一つは人との関わり方で、今まで知らなかった人と授業を作り上げる中で意見を出し合うことが上手くなったと思う。

・参加する前は初対面の人たちと関わるのに凄く抵抗があったし、年齢関係なしにコミュ障だから、とても今回の授業は不安だったし馴染めるか心配でした。しかし、結果的に小学生の子達と仲良くなれて、楽しく帰ってもらうことができ、私自身も初対面の子だったけど、関わることができ、自分から話しかけにいって小学生の子が1人にならないように注意したりして、グループ内の子とは上手に関わることが出来たと思います!

・子供と接する時に難しい言葉を使わないということに苦労したけど、自分の語彙力を駆使してどうにかして伝えようと一生懸命考えることに意味があるとおもってたくさんの工夫をして伝えることが出来た。

・私がこのイベントに参加した理由は、教員志望だからという理由ではなく、『去年マンガ教材の製作作りに関わっていて、山中先生に誘ってもらったから』、という簡単な理由でした。しかし、ワークショップを通して私は、物事を客観的にさまざまな観点からみる力や自分の意見をしっかり持ち、それをみんなの前でたくさん意見を言ったりするコミュニケーション能力の力を身につけてました。具体的には、小学生の立場で考えてみんなの意見を聞いていく中で自分が思いつかなかった考え方を知ることができ、相手を尊重しながら、その観点についてたくさん考えました。また、地域の方と話す機会が多かったり、普段は関わりのない学校の仲間ともたくさん関わることができたりして楽しかったです。

・色々な視点で物事を見れるようになった。自然を見ていたらワークショップのことを思い出したり、自分より10個も下の子は同じものを見たときどう思うのかっていうのを考えるようになった。

<設問6>ワークショップの中で、もっと「学びたいこと」「聞きたいこと」「知りたいこと」「やってみたいこと」があれば教えてください。

・校外研修のような感じで、次は里山に実際に行ってみて、自然に触れ合いたいと思った。そこでしか、気づかないことがたくさんあると思うし、落ちているものを使って作品を作るとか楽しそうなことがたくさん山にはあるなと思ったから。

・今日来てくれた子以外にも里山のすばらしさを伝えたい。

・今回の活動で満足することができました。

・高校生が自分の得意分野(なんでもいい)を1つの授業にしてその授業を高校生が受ける

<設問7>今回は先生の立場に立ち、「里山をテーマにしたマンガ教材」を使って小学生に向けた授業を行ってもらいました。実際にこのマンガを教材にして教えてみて、「良いところ」「悪いところ」「こうやって活用すればよかった」など、思ったことがあれば教えてください。

・良いところは、漫画になっていることで小学生に興味を持ってもらいやすくなると思うし、絵などがあるので少し難しいようなところも分かりやすく伝えられること。また、漫画を持ち帰ることによって今回の記念になるし、親さんと里山について一緒に考えることができるきっかけになっていると思うのでそういう面でメリットだと思う。

悪いところは、私は特に思いつかなかったです。最近はデジタルの時代になっているので、何でもタブレットなどで調べるようになっているけど、漫画で学習することで絵などでしか表現できないことも子供たちへ伝えることができるし、この先もずっと手元に残しておくことができる。

正直漫画を使って学習することは少なかったけど、漫画だけに囚われず自分の考えている意見を次々に出していくことが今回の授業で大切なことだったと思うので、そのような面では少なくてもよかったと思った。それを踏まえて、帰ってから親さんと里山について話し合うきっかけに活用することが大事で、もう少ししっかり親さんとこの漫画を使って考えてみてねということを伝えるべきだったなと思った。

漫画教材を使うと、里山の概念をわかりやすく知れるし、文字や絵で情報も多いので、授業外でも小学生が自分でも読み込めることができてよいとおもう。今日の授業の中では、実際の探検に行った内容を主にぐるぐる島の様子を照らし合わせて進めていき、ぐるぐるを身近なものに感じられた点も良かった。授業内で小学生への質問をその場で考えていたが、漫画教材内の質問を使えばもっとスムーズに授業できたな、と感じるところがあり、漫画教材内の質問を使って、漫画教材内に書き込んでいって授業を進められるようにしたい。

・ぐるぐるの意味を考えたりぐるぐる島と似ている所を探したりすることが出来たので良かったと思います。

テクテク星とぐるぐる島の2つの島を見比べて、絵から環境問題などを見つけさせることが出来て良かったです。それに、棚田などがぐるぐる島にあったから、絵と岐阜清流里山公園の棚田を重ね合わせたりして、実際に見たものと漫画教材を上手く使うことが出来て良かったです。

・漫画は里山の良さを伝えるためのきっかけ作りとしてとても有効だった。その後に実際に里山に言って自然に触れることで里山の良さを肌で感じて貰えたと思う。また、意見交流でも盛んに交流ができたから完璧の授業ができたと思う。

・マンガ教材のぐるぐる島とテクテク星のこの二つを比較して、何が違うんだろうということを小学生の子たちに間違い探しみたいな感じで考えてもらい、『テクテク星みたいになったらどうなるんだろう』ということを問いかけました。そうしたら、小学生は楽しく自分からたくさんの意見を言ってくれました。だから、ぐるぐる島とテクテク星の比較することは有効な方法だなぁと感じました。また、2回目の授業で『ぐるぐる』って何だろうってことも問いかけました。その質問に小学生は自分なりの考えを言ってくれました。マンガ教材のわるいところはないと思います!

・小学生に何も言わなくても漫画の中に書き込んだりしていてそうしたくなる漫画だったのは良いところ。

◆今後に向けての考察

今回の取り組みを通じて進路選択(大学選択)をより考えていくきっかけになればと願う。そして彼らの取り組みを活かしていくために、美濃加茂市の小学校の先生が地域探究型学習を実施する際に、高校生たちが作り上げたマンガ教材を活用した授業計画を採用していくことを期待している。それにより美濃加茂市の小学生が美濃加茂市の地域資源や伝統文化を知り、その子どもたちが高校生になったときに今回の高校生たちと同じように教職を希望しこのマンガ教材を使い授業をするという循環(サスティナブル・エデュケーション)につながることを期待する。

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